薬事日報・10月17日の紙面に、漢方薬・安中散(あんちゅうさん)の記事を載せてもらいました。
これは、有名製薬企業の複数が、「〇〇漢方胃腸薬」などの名で製品化している薬です(一般用医薬品)。
長期間TVコマーシャルなどで打たれ、服用されるかたも多い
今回で45回目の紙面掲載、月に1~2回載せてもらっています。。
掲載された紙面を見ると、とてもうれしく思います。
漢方の知識や・漢方薬について、分かりやすく説明することを心掛けています。
漢方・生薬で、皆様が笑顔になっていただく事を願っています。
(以下の文は、修正を加えたため、掲載原稿とは異なります)
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薬事日報紙面に載ったときのイメージ
(実際に掲載された原稿レイアウトではありません/著作権保護のため、紙面イメージを自分で作りました)
【 漢方薬・安中散(あんちゅうさん)の説明 】
食欲が低下しがちな夏が過ぎ、「食欲の秋(食欲増進の秋)」へと変わります。
サンマ・秋鮭・ブドウ・クリ・キノコ類などおいしい秋の味覚を食べすぎて、胃の不調を訴えるかたも増えるでしょう。
今回は、漢方薬・安中散(あんちゅうさん)を取り上げます。
安中散は大手製薬企業からも「漢方胃腸薬」の名で販売される漢方薬、「空腹時に胃が痛む(胸やけする)」の不調を目標に用いてください。
配合生薬7種中、植物性の胃の止痛薬が4種配合されています。
その他、貝殻の「カキ殻(生薬名・ボレイ)」も配合され、含まれるカルシウム成分に胃酸中和の薬効が期待出来ます。
さらに分類すれば、安中散の構成生薬7種中、5種が温性薬、つまり「空腹時の胃痛」の多くは、「胃の冷えから起きる」と漢方では診立てているのです。
過去の医療人の、経験による知恵なのでしょう。
安中散は、胃を温めて痛みを緩和する薬なので、冷水で服用しないでください。
温湯(40℃くらいで良い)を用いれば、不調改善が早くなります。
気候寒冷や冷飲食物の過剰から胃が冷えているかたは、食欲が湧きませんし、嗜好として温かい飲食物を好むようになり、胃の辺りをさする行動もしがちです。
安中散が役立つのは、空腹時に胃痛が起きるかたです。
そのかたが訴えやすい他の不調は「腹痛(特に上腹部痛)・胃液の逆流(呑酸)・腹部膨満」や、「透明な唾液が多く流れる」です。
他の痛みに、悩まされることもあるでしょう(月経痛、下腹痛、脇痛)。
安中散の製品効能は、「体力中等度以下で、腹部は力がなくて、胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、はきけ、嘔吐などを伴うものの次の諸症:神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱」です。
漢方薬の名前に、「中」が使われるものがあります。
安中散や、大建中湯(だいけんちゅうとう)・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などです。
これは、「胃(脾胃)に働く薬効を持つ」という意味だと理解してください。
身体上部には心・肺の2臓があり、下部には肝・腎の2臓がありますが、中部には脾しかないことを理由としています。
夏は食欲が減退しますが、秋になると一転「食欲の秋」となるのはなぜでしょう。
夏は、暑さとともに、湿度の高さが胃(脾胃)の機能低下を起こします。
初夏から夏が終わるまでの多湿時期は、それを原因として食欲が低下しがちです。
秋になると大気の湿度が下がるため、胃(脾胃)の負担が減り、短い期間で食欲増進(食欲の秋)に向かうのです。
日本は四方を海に囲まれているため、長期間、多湿になりがちです。
この事柄が、日本人の多くが、どちらかと言えば「胃弱」という状況を作っています。
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【 薬事日報に掲載された記事 】
第44回 アトピー性皮膚炎で泣くひとをゼロにしたい・温清飲(2022年9月14日)
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