ダイエットには、多くのかたが関心を寄せています。
幾つかの漢方薬が、それに用いると良いとされます。
でも・・・。
ほんとうに、良い(効く)のでしょうか?
どう、効いてくるのでしょうか?
それら漢方薬に関して、医療資格者から内容を説明されたことはあったでしょうか?
この記事は、「漢方薬の真実」を説明するシリーズです。
今回は、ダイエット薬として名前が知られる「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」をとりあげます。
それが持つ本当の薬効を、説明します。
⇒ 薬事日報(2020年9月4日の紙面掲載)/ダイエット薬・防己黄耆湯について
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防己黄耆湯は、どんなクスリなのでしょう。
「服用すれば、すぐに痩せるの?」
そうであるかも、そうでないかも知れません。
有効に使っていただくためには、「どんなかたに用いてもらうのか」というのが問題です。
「便秘を改善させるの?」
便秘を改善する働きは、あまり持っていません。
この質問はもしかすると、名前の似ている漢方薬・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)が持つ薬効と、混同しているということなのではないでしょうか。
「色白のかたや、洋ナシ体形に、良いと言われたのですが?」
色白のかたにしか効かない? そうとばかりは言えないものでしょう
洋ナシ体形というのは、「ふくらはぎなど脚部がむくむ」ということを示しているのなら、正しいと言えます。
漢方薬は、配合される生薬(薬草類)の性質を見れば、その薬効は必ず理解できます。
このクスリ配合生薬から、薬効を考えましょう。
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1、【 防己黄耆湯、薬効を正しく知るために 】
漢方薬は、配合される生薬(薬草類)を見ましょう。
その性質を知っていれば、薬効は理解できます。
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上の自作資料を見ていただけたでしょうか。
防己黄耆湯という漢方薬は、「むくみを改善する」という薬効が主です。
そこに、ニンジンに並ぶ元気薬である、オウギ(黄耆)が添えられています。
2、【 生薬の配合から、漢方薬の性質を知る 】
① 「ボウイ・ビャクジュツ」の配合の意味
これは、ともに、利水薬です。
身体に停滞してしまった、正常な潤いとして利用出来ない「水分(むくみ など)」を、身体に散らして主に尿として排除します。
本当は、水分だけという意味ではなく、利用できない体内停滞する物質という意味です。
それらを動かし、排除します。
「むくみ」に加え、例えば「胃内停滞物(胃もたれ)」もそれに含まれます。
この利水薬ペアが、防己黄耆湯の主薬になっています。
② 「オウギ」の配合の意味
これは、元気薬です。
とくに、体循環を管理する「肺」に元気(エネルギー)をあたえるもの。
それが添えられています。
「身体のどこかが むくむと、元気がなくなるかも知れないから、元気薬をひとつ添えておくか」という、大ざっぱな考え方ではありません。
これが配合される、大きな意味があります。
オウギはつまり、身体下部に落ち込んだ水分を、上へと持ち上げるために、どうしても必要です。
上へと持ち上げることで、尿として排出しやすくしているのです。
(腎は、ふくらはぎよりずっと上にあるので、そこまで持ち上げて尿利によって代謝をする)
(本来体循環が滞らず順調であれば、足のむくみは起こらない)
オウギは補気薬(エネルギー補充薬)なので、体循環そのものを、良くさせる・回復させる働きも持ちます。
このイラストは、女性が階段を登って水を上に運ぶ様子です。
エネルギーを使い水を運ぶ女性の役割をするのが、生薬・オウギです。
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★ 防己黄耆湯は、「ふくらはぎが むくむ」の状況に使います。
「ふくらはぎが むくんだ・むくみやすい」の状況において。
利水薬だけを身体に入れても、なかなか尿は出ません。
むくみは、改善しません。
(漢方の利水薬であっても、化学薬品の利尿薬であっても)
(漢方の利水薬なら、五苓散で良いではないかとおっしゃるかたがありますが、それではほとんど むくみが取れない可能性があります)
そこで最下層(足)に落ちて、そこでたまってしまった水(むくみ)に対し、たまった水分を「持ち上げる(くみあげる)」「水分代謝の身体ループに戻す」ことで、体外排出を行おうとしているのです。
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3、【 防已黄耆湯 使い方のまとめ 】
この漢方薬・防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)を使う状況として、たとえば「ふくらはぎが むくむ・むくみやすい」ということがあります。
「腰から下の、下腿部」に、不調が現れていること(おもに むくみ)が、用いる際のポイントです。
不調が起きる時期は、「(急性なら)疲れたときにそうなる」です。
多くはそれを繰り返します。
「(慢性なら)身体虚弱や老化により、毎日疲れやすさを感じている」ときには、特に疲れるような行動をしなくても、何日もむくみなどの不調が出続けることもあります。
必ずお湯で、(エキス薬なら顆粒・細粒・錠剤のすべて、そして煎薬なら温かくして)服用してください。
身体にエネルギー(温性)を入れる薬が配合されていますので、必ずお湯です。
冷たい水で飲んではいけません。
薬物の身体吸収が、遅れます(効果があらわれるのが遅くなります)。
この場合、エネルギー不足のため むくみが起きているので、それは食欲も低下しがちなかたでしょう。
服薬は、食間(食事と食事の間/たとえば、朝食と昼食の間で空腹時という意味)にしてください。
薬物の身体吸収が、よくなります(早く改善します)。
服用し3日もすれば、むくみは改善していることでしょう。
はやく結果を示し、みなさんをほっとさせるものでしょう。
1週間~1か月ほど服用し、服用するのをやめてください。
ここからが、本当の問題になります。
不調を起こしたそのかたの、今後の人生を考えるうえで。
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4、【 本当に大切なこと 】
足のむくみを、反復して起こすかたについて。
たぶんこのかたが、防己黄耆湯を、繰り返し服用されるかたなのでしょう。
元気がない傾向(気虚)にあるかたでは、ないでしょうか。
気虚であれば、他者から見たら、外見で分かります。
いかにも「元気がない」、ように見えるのです。
その他、「疲れやすい」「声が小さい」「食欲不振(食欲がわかない、多く食べられない)」の傾向のいくつかが、あるはずです。
その疲れやすさが、あなたの人生の積極性を奪っているとも言えるのです。
補気薬の基本・四君子湯(しくんしとう/配合:ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ)を服用し、元気が湧いて来るように感じるかどうかお試しください。
服用すれば3日ほどで、身体が楽に感じるでしょう。
軽く感じるでしょう。
すぐやめてしまわず、3か月ほどは継続服用していただきたいものです。
ひとは、スマホのように急速充電出来ません。元気の補充には、最低1か月はかかるものですから。
この治療をすれば、あれほど困っていらっしゃった「足のむくみ」は、もう起きなくなるでしょう。
(非常に疲れたときだけは再発するでしょうけれど、何度も繰り返すことはなくなるでしょう。)
そして、体循環がよく保たれるということは、基礎代謝が高いまま保たれるということ。
カロリー代謝も高く保ってくれるでしょう。
(太りにくい身体になる)
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5、【 どうして太るのでしょうか… 】
ひとにより、状況が異なるので、何とも言えません。
しかし、「水を飲むだけでも太る」とおっしゃるかたもいらっしゃいます。
水だけ飲んでも、たぶん太ることはないでしょう。
生活を分析しましょう。
その日食べているものを、すべてメモしてください。
食べているように思っていなくても、結構多くを口にしていませんか?
そうであったら、「間食を半部以下に減らす」「間食をしない」の意識を持ってください。
食欲が止められない状況なら、黄連解毒湯(胃熱を抑え食欲を緩和)に加味逍遙散(食欲増進を助長するストレス状態を緩和)などを併用し、まずは食欲を止めることをしてください。
歩くことを心がけてください。
それは、体循環をよくすることで、心身を健康に向かわせます。
カロリーも適量消費し、肥満を避ける行動にもなります。
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10月、ズーム漢方講演会(無料)のお知らせ
昨年夏から、毎月1~2テーマを取り上げ、ズーム漢方講演会(無料)を行っています。
今回は、「その漢方の常識、本当に正しいですか?(ホンマでっか?)」をテーマにしました。
漢方薬の常識として現在伝えられている情報は、本当に正しいのでしょうか?
いいかげんな情報が、混じってはいないでしょうか?
もし、説明されるかたが、薬の本質をつかみ損なっているのなら、あなたの笑顔を戻す助けにはなりません。
漢方薬を使い、みなさんに健康になってもらいたいのです。
笑顔になってもらいたいのです。
漢方(中医学)に興味を持たれる皆様のご参加を、心よりお待ちしています。
(知識との出会い・講師との出会いも、一期一会です。この機会をのがさず、ご活用ください。)
※この時間では参加出来ない状況のかたは、録画視聴希望として、連絡ください(講演終了後、録画案内させていただきます)。
※1つのテーマ(2日の講演)で、約80名のかたに参加いただいています(直近8月の講演会時/録画視聴を含む)。
※一般のかたにも、多く参加いただいております。
※医療の専門家(医薬品企業勤務者、登録販売者・薬剤師・医師)のかたにも、参加いただいています。
※応募いただいたかたに、製品販売をすすめるメールを送ることは、ありません。
※連絡いただくメールアドレス
h-kato(この間に、アットマークを入れてください/アットマークは、@です)matsuura-gp.co.jp
「こむら返り治療薬・芍薬甘草湯は、すぐに筋ケイレンが治まりますが。毎日服用しないでください(頓服)」
※毎日飲んで、こむら返りが起きないようになる薬はないか?
「葛根湯は、カゼ治療薬として優秀ですが、毎日飲まないでください(頓服)」
※そして、葛根湯の温暖力は、そんなに強くはありません。
「免疫力を高めるからとニンジン配合薬を勧められたかたに、ひとこと注意を」
「認知症に良いとされる抑肝散、その性質と、どんな場合に使うと良いかを説明します」
※抑肝散は、その名からすると「強い抗ストレス薬」と捉えられそうですが、そうではありません。
※もともとは、小児の引きつけの緊急対応薬です。
「イライラしているとき、温性が強い食品(ニンニクショウガ・トウガラシ・コショウ・サンショウなど)は、基本的に食べてはいけません」
など