アケビの雌花(めばな/4~5月に花咲きます)

 

 

薬草の文学館①/アケビの巻

 

 

 大きな都市の、やや郊外で暮らしています。

 きょう、線路沿いの緑地で、アケビの果実を見ました。

 (近付けませんので、遠目から眺めました)

 

 野でも山でも見られ、果実が見つかると、うれしくなります。

 手にし、食べることもあります。

 

 アケビは、街でも多く見られます。

 線路沿いの緑地帯、空地や河原などで、相当数見ることが出来ます。

 (木通、通草/アケビ科 アケビ属 つる性落葉低木)

 

 

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アケビの果実(かじつ)

 

 

 アケビの果実は、果実の外皮がぱっくり縦に割れて、果肉の白い部分が見えます。

 「だから、開け実(アケミから、アケビへの転化)と言うのだ」との、命名説があります。

 

 野で、アケビの実を見つけ、手に取ります。

 白い果肉を口に入れれば、甘くとろけます。

 「おいしい!」

 けれど、黒い種の多さには困ってしまいます。

 

 タネを辺りに吹き出すと、アケビたちは「やった、子どもたちが増えてくれるよ」と、笑顔になっているのでしょう。

 

 

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【薬として、どう用いるか】

 

◆アケビの熟した果実(生薬名:ハチガツサツ・八月札)

 抗ストレス(中医効能:疏肝、理気、止痛)」に働きます。果皮は苦味を持ちます。

 ※用いることは、あまりありません。

 

◆アケビの茎(生薬名:モクツウ・木通)

  利水薬・利尿薬になります(中医効能:清熱、利水、通淋、通経、通乳)。

  利尿とともにクールダウン(炎症対応)の薬効を持つため、膀胱炎の治療にも良いものです。

  ※膀胱炎治療(排尿時の痛み)に用いる、漢方薬・五淋散(ごりんさん)。

  そこに、アケビの茎が配合されています。

  効果があらわれるのが早い薬で、服用当日から、改善に向かいます。

  ※皮膚のかゆみに用いる漢方薬・消風散(しょうふうさん)にも、配合されています。

   これは、かゆみ(血虚血熱)を抑える目的です。

     

  つる植物は、幹をしっかり作りません。

  そこで節約した生命力を、「上昇力」に変えます。

  他樹・電信柱などに巻きつき、陽の光を求め上へ上へと伸びるのです。

  他者に寄りかかり、利用し、生きて行く方法を選びました。

 

  

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 アケビの雄花(薬草文学館)加藤久幸

アケビの雄花(おばな)

 

 

【アケビの 文学館】

 

アケビ

(随筆 牧野富太郎/花の名随筆10 十月の花 より)

 

野山へ行くとあけびというものに出会う。

秋の景物の一つでそれが秋になって一番目につくのは、食われる果実がその時期に熟するからである。

田舎の子供は栗の笑うこの時分によく山に行き、かつて見覚えおいた藪でこれを採り嬉々として喜び食っている。

東京付近で言えば、かの筑波山とか高尾山とかへ行けば、その季節には必ず山路でその地の人が山採りのその実を売っている。

実の形が太く色が人眼をひく紫なものであるから、通る人にはだれにも気が付く。

都会の人々には珍しいのでおみやげに買っていく。
紫の皮の中に軟らかい白い果肉があって甘く佳い味である。

だが肉中にたくさんな黒い種子があって、食う時それがすこぶる煩わしい。
中の果肉を食ったあとの果皮、それは厚ぼったい柔らかな皮、この皮を捨てるのは勿体ないとでも思ったのか、ところによればこれを油でいため、それへ味をつけて食膳に供する。

昨年の秋箱根芦の湯の旅館紀伊の国屋でそうして味わわせてくれた。

すこぶる風流な感じがした。
今日でもそうかも知らんが、今からおよそ百年ほど前にはその実の皮を薬材として薬屋で売っていた。

それは肉袋子という面白い名で。

 

ふつうのあけびの芽だちの茎と嫩き葉とを採り、ゆでてひたし物とし食用にする。

これを蒸し乾かしお茶にして飲用する。

山城の鞍馬山の名物なる木の芽漬はこの嫩葉を忍冬の葉とまぜて漬けたものである。
従来わが邦の学者は、わがあけびを支那の通草一名木通に当てていた。

ゆえにあけびが薬用植物の一つになっていた。

しかるに近頃の研究では、右の通草すなわち木通はあけびではないということになったので、そこであけびが果して薬になるかどうかということが分からなくなってしまった。


ここに面白いことは、このあけびの学問上の属名をあけびあ、すなわち Akebia ということである。

これは無論日本名のあけびを基として作られた世界共通の属名である。

そしてその中のあけびをば Akebia quinata と称し、みつばあけびをば Akebia lobata と称する。

これは学問上の通称で、この名であれば世界中の学者にはだれにでも通ずる。

学問上にはどの植物にもこんな公称があって学者はこれを使用しているのである。

あまり長くなるのであけびの件これで打ち止め。