伊吹山の夏花 3合目編④ (7月19日の最終回/伊吹山花紀行 2020)

 

 

 

伊吹山 ユウスゲ’(伊吹山花紀行)

 

「ユウスゲ」を中心にした、3合目植物の観察会の報告です。

森 壽郎 先生に、植物たちを説明していただきました。

 

 3合目の植物を守っているのが、『上野区:ユウスゲと貴重植物を守り育てる会』の皆さんです。

 野球場2面分程の面積をネットで囲い、そこを中心に3合目全体の草刈りなど保全作業を行っています。

 

 コロナウイルス感染症がなかった昨年は、春から晩秋まで毎月、3合目での観察会が開催されていました(今年は休止中)。

 

 

 

伊吹山 ユウスゲ(伊吹山花紀行)

3合目風景、18時頃(天候回復)

午前中に訪れていた伊吹山山頂。午後6時頃には、雲が去ってきれいに見えました。

ユウスゲ咲く、3合目の草原。

 

 

 

 

 

 

 ハクサンフウロ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ハクサンフウロ(白山風露/フウロソウ科)

 ハクサンフウロは、東北地方から中部地方の高山帯草地で見られる植物です。

 花の直径2.5cm程で、ピンクの彩りが愛らしいものです。

 

 フウロソウの名を聞けば、『(山)風に揺れ、(朝)露に濡れ』の、花の情景が浮かびます。

 

 ほぼ同じ場所で、似た顔をした花・エゾフウロが咲いています。区別のしかたがあります。

 茎やツボミを見て、毛が生えていないのなら、ハクサンフウロです。

 (まばらに生えるものも、ハクサンフウロと考えて良いのでしょう)

 

 茎やツボミを見て、毛が生えているのなら、エゾフウロです。

 

(※エゾフウロのエゾは、北海道の事。北海道はとても寒くて、温かくなりたいから"毛が生えた“と記憶し、白山は通常それ程寒くならないから"毛が生えない”と記憶すれば、覚えやすいかも知れません。)

 

(※ハクサンフウロは、エゾフウロを母種とするものとされます)

 

 

 

 

 

 

 スズサイコ 伊吹山(伊吹山花紀行)

スズサイコ(鈴柴胡/ガガイモ科)

 これも、ユウスゲと同様、夜に向かって咲く花です。

 3合目で、少数見られます。

 

 薬草としての使用が多い「サイコ(柴胡)」に、その姿が似ていて、ツボミが鈴を思わせる事から、スズサイコと名付けられました。

 

 スズサイコも薬草として知られる植物(日本ではほとんど用いられません)。

 

 根や根のついた全草を、ジョチョウケイ(徐長卿)と呼び、関節痛・神経痛に用います。

 (薬効:袪風湿、止痛、利水消腫、止痒/性味:辛、温)

 

 

 

 

 

 

 ナンバンギセル 伊吹山(伊吹山花紀行)

ナンバンギセル(南蛮煙管/ハマウツボ科)

 ナンバンギセルのつぼみ、花はもうすぐ見られそうです。

 

 不思議な姿です。葉がありせんし、茎も茶色や白色です。

 花姿が、外国から入って来た「タバコを吸う器具・キセル(煙管)」を思わせる事から、この名が付けられました。

 

 葉緑素を持たず栄養を作り出す事が出来ませんが、イネ科植物(ススキ、イネ、サトウキビなど)の根に寄生する事で、栄養分を奪いながら成長します。

 

 

 

 

 

 

ヤマサギソウ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ヤマサギソウ(山鷺草/ラン科)

 初めて目にしました。ひとつひとつの小さな花が、舞い立つ『サギ(鷺)』の姿を思わせる事からの命名です。

 

 画像を拡大し、花姿をご確認ください。想像力の翼を広げ、サギの姿を見つけてください。

 

 

 

 

 

 

マイサギソウ 伊吹山(伊吹山花紀行)  

マイサギソウ(舞鷺草/ラン科)

 これも初めて見ました。『空を舞うサギ(鷺)』を思わせるので、マイサギソウ。

 ヤマサギソウの変種であり、距がさらに上へ跳ね上がる様になっています。

 

 

マイサギソウ 伊吹山(伊吹山花紀行)

マイサギソウの花

 

 

 

 

 

 

ヤブジラミ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ヤブジラミ(藪虱/セリ科)

 小さな、小さな、白い花。ヤブジラミです。

 ヤブに生え、タネが衣服に付きやすいのをシラミに例え、ヤブジラミと呼ばれます。

 

 葉の形が美しいと思い、出会うたびに見つめています。

 

 成熟果実を、日本ではジャショウシ(蛇床子→和蛇床子)と呼び、かゆみ止めに用います。

 中国ではカクシツ(鶴虱)と呼び、寄生虫駆除に用いられます。

 

 

 

 

伊吹山 3合目(伊吹山花紀行)

 

 

伊吹山3合目(伊吹山花紀行)

伊吹山3合目の風景

 

 

ユウスゲ 伊吹山(伊吹山花紀行)

伊吹山3合目に咲くユウスゲの花

 

 

 

伊吹山 7月19日の花の報告 最終回でした。

 

美しい花の姿を、その命を、お楽しみいただけたでしょうか。

 

 

⇒  伊吹山 山頂の花①(7月19日)  に戻る

 

 

 

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◆伊吹山へ行かれる際役立つ、知識ワンポイント

※山頂は、麓から8度程気温が低くなります。3合目も、吹く風が涼やかです。

※真夏も、雨天・荒天時は肌寒く感じる事があります(天候が急変する事があります)。

※登山道では、林下の道はほとんどありません。日差しが当たり続け、帽子は必需品です。水も多くお持ちください。

※今までいなかったヒルを、野生のシカが持ち込みました。いるかも知れませんから、塩を持っていると良いでしょう。

※登山道ルートにあるトイレは、登山口(鳥居前)、1合目、3合目、山頂です。

 ドライブウエイ終点(9合目)にトイレがありますが、麓からの登山者のルートにはありません。

 

◆見られた花

アキノタムラソウ、イブキジャコウソウ、イブキボウフウ、ウツボグサ、エゾフウロ、オオバギボウシ、オカトラノオ、カワラナデシコ、キバナノカワラマツバ、キバナノレンリソウ、キンミズヒキ、クサフジ、クララ、クルマバナ、シモツケソウ、シュロソウ、スズサイコ、テリハノイバラ、ノアザミ、ノダケ(つぼみ)、ハクサンフウロ、マイサギソウ、ヤブジラミ、ユウスゲ(花盛期)、ルリトラノオ など

 

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《3合目へ行く方法》

 

3合目までは登山道を通って、徒歩で1時間~1時間半程で行く事が出来ます。

 

この日参加者は、山麓から3合目まで、林道を通り、自家用車で向かいました。

しかし通常は、林道ゲートにカギがかかっていて、一般の方は車を乗り入れる事が出来ません。例外として、観光タクシーを呼べば、登山口から3合目まで運んでくれます。都タクシー・℡0749―62-3851/2合目まで運んでくれるタクシー会社・℡0749―62-0106)。

 タクシー利用では、料金は2,500円程。走行時間は20~30分程です。