伊吹山の夏花、峰流るウグイスの歌 山頂編①

山頂編①《7月19日 伊吹山花紀行2020》

 

 

ウグイス 伊吹山西遊歩道(伊吹山花紀行)

ウグイスの声に、峰渡る涼風

近くの木立で、ウグイスが歌います(山頂・西遊歩道)。

訪れたひとは驚き顔で立ち止まり、笑顔の波が生まれます。

小さな鳥の声。

しかしそれは、世界に響く歌声。

 

 

 

 伊吹山ドライブウエイを通り(有料自動車専用道路/普通車通行料3,140円)、9合目まで自家用車で登ります。

 

 そこからは徒歩です。

 花観察に良い西遊歩道を選びました。晴れていれば琵琶湖を眺めながら散策出来ます。

 

 35分程歩けば、山頂に着きます。

(中央道もあります。階段状の整備された道ですが、終始急坂です。20分で山頂に着きます。)

 

 

伊吹山 西遊歩道(伊吹山花紀行) 

西遊歩道の様子(山頂近く)   

 

 

 伊吹山 西遊歩道西遊歩道の様子(山頂近く) (伊吹山花紀行)

西遊歩道の様子(駐車場近く)

 

 

伊吹山 中央遊歩道(伊吹山花紀行)

 中央道の様子(階段状です/2018年撮影)

 

 

 

 

【花の状態】

 雨が続き、陽が届かなかったために、植物の成長が「1週間程遅れている」状況です。

 

 本来咲き終わり頃であるはずのミヤマコアザミ(赤色花)・ヤマアジサイ(白色花・青色花)が、まだ花が見られます。

 

 複数の山小屋がある山頂部では、イブキジャコウソウ(淡赤花)・トウキ(白花)・キンバイソウ(濃黄花)たちが満開です。

 

 花盛期に入るはずの、クガイソウ(青紫花)・シモツケソウ(赤花)は、つぼみ~咲き始めの状況です。

 

 ツボミの様子を見ると、秋花の代表格サラシナショウマ(白花/本来の花期は8月20日頃~9月15日頃)の訪れが早くなりそうです。

 

 山頂全体で、シカの食害で植物が被害を受けている状況は変わりません。

 

(シモツケソウが広がって周囲を赤く染めているお花畑の看板が、ドライブウエイの入口に飾られています。しかし今は、その風景は見られません。しかし、7月・8月は、花の種類の最も多い時期です。多種の花との出会いを楽しみに・風景との出会いを楽しみに、伊吹山頂を訪れてください。)

 

 

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伊吹山 9合目駐車場(伊吹山花紀行)

9合目駐車場からの風景

琵琶湖(画面左)、浅井氏の城があった小谷山(画面中央)が見えています。

これは、帰路で目にした風景。

訪れたばかりの時は朝霧のため、遠くは見えない状況でした。

 

 

 

 

ヤマアジサイ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ヤマアジサイ(山紫陽花/アジサイ科)

 梅雨空を美しく変える花、ヤマアジサイです。

花は終わりに向かう時期なのですが、今年はまだ元気な花に出会う事が出来ました。

 花の色は、白色あり、青色あり、色調が様々に異なっています。株ごとの個性があります。

 

 葉を発酵させて、アマチャ(甘茶)にします。それを煎じると、甘いお茶になります。

 お釈迦様の誕生を祝う灌仏会(かんうつえ/花祭り)では、アマチャのお茶として飲んで、その年の健康を祈ります。

 

 

ヤマアジサイ 伊吹山(伊吹山花紀行)

 

 

 

 

 

 

カワラナデシコ 伊吹山(伊吹山花紀行)

カワラナデシコ(河原撫子/ナデシコ科)

 山頂駐車場で、山側壁面で咲いていたカワラナデシコの花。

 可憐で美しい花(花の直径3cm程)、花言葉は「純愛、才能」です。

 これから山頂の各部で咲き始め、8月末頃までは花姿を楽しむ事が出来そうです。

 

 古くから日本に見られる植物で、ヤマトナデシコとも呼ばれています。

 ヤマトナデシコは、日本女性の例えとして用いられる言葉で、サッカー女子日本代表は「ナデシコ ジャパン」と呼ばれています。(“カワラ”という言葉は。文字通り、川の原っぱで見るものという意味であり、また、どこにでもあるものの意味を兼ねる表現です)

 

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 薬草としても用います。利尿を促す薬草になり、クバク(瞿麦)と呼びます。中国では全草を用いますが(生薬名・クバク)、日本では種子を求められる事が多いです(生薬名・クバクシ)。

 

【全草の薬効:利尿、清熱、破血通経  ※種子もそれに準じて用います】。

 

 クバクを配合した漢方薬は、日本ではほとんど用いません。

 クバクは配合されませんが、膀胱炎に良い速効漢方薬があります。

 猪苓湯(ちょれいとう)や五淋散(ごりんさん)です。2つとも、同じようによく効きます。早期に痛みを去ってくれます。

 

 

 

 

 

 

ミヤマコアザミ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ミヤマコアザミ(深山小薊/キク科)

 鮮やかな花色から、伊吹山頂で目立っている花です。

 茎にはトゲが多く、誤って触れた時は、とても痛いものです。

 日本では広く分布する「ノアザミ」が、石灰岩地で変化したもの。伊吹山山頂部で多く見られます。

 

 花の時期は通常6月中旬~7月下旬ですが、今年は天候不順のためか、訪れた7月19日はまだ、「花盛期」の状況でした。

 

 伊吹山固有種とされて来ましたが、他の一部地域でも見る事が出来る様です(北アルプス北部・白山など)。

 

 ノアザミの根は、漢方では止血薬とされるもの。生薬名は、タイケイ(大薊)で、鮮紅色の大量出血に用います。

 

 

ミヤマコアザミ 伊吹山(伊吹山花紀行)

ミヤマコアザミの花

 

 

 

 

 

 

イブキジャコウソウ 伊吹山(伊吹山花紀行)

イブキジャコウソウ(伊吹麝香草/シソ科)

 イブキジャコウソウが、花の盛りを迎えていました。

 5mm程の小花が、群れ集うチョウのように咲いています。

 8月上旬までは、山頂で花を楽しめそうです。

 

 和性ハーブであり、葉にも花にも、シソとハッカを混ぜた様に思われる香りがあります(ハーブのタイムに似た香り)。

 現地に行かれた方は、葉をやさしく指先で揉んだあと、指のにおいをかいでみてください。花は視覚で捉え、また嗅覚で捉え、訪れた命との一瞬の出会いを楽しんでください。

《イブキジャコソウは別名・百里香と呼ばれます。これは「百里先にも、香りが届く」という意味でしょうが、そう表現されるれほど香りの強いものではありません」

 

 ジャコウとは、高級な香水に用いられる「ムスク」の事です(ジャコウジカのフェロモン物質です)。

 原料用のムスクの香りをかぎましたが、おしっこの香りがあるものでした。かなり薄めると、良い香り・独特の香りになるのでしょう。

 

 

イブキジャコウソウ白花 伊吹山(伊吹山花紀行)

イブキジャコウソウの白花

山頂の山小屋・えびすやのご主人、松井純典(じゅんすけ)さんに教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

オオバギボウシ 伊吹山(伊吹山花紀行)

オオバギボウシ(大葉疑宝珠/ユリ科)

 白~薄青色のユリ形の花。

 従来山頂の西遊歩道に多くありましたが、シカが食べ荒らしてしまい、昨年はほとんど見られませんでした。今年は狭い範囲に、少数見られました。

 ギボウシ(疑宝珠)とは、橋のランカン(欄干/橋の両端にある柱)の上につく、小さなタマネギの様なものです。ツボミの形がそれに似ているので、この名がつけられました。

 

 まだ若く柔らかい葉は、(山菜として)食べる事が出来ます。東アジア特産種で、半日陰を好む生命力の強い植物。海外の園芸課にも好まれています。

 

 

オオバギボウシ 伊吹山(伊吹山花紀行)

オオバギボウシの花

 

 

 

 

 

 

メタカラコウ 伊吹山(伊吹山花紀行)

メタカラコウ(雌宝香/キク科)

 草丈60cm~1mほど、背高ノッポの黄色花。山頂部ではまだほとんど花が見られず、咲き始めの状況です。

 かっては7月末~8月中旬を代表する花のひとつで、山頂ではどのコースでも見られましたが、やはりシカの食害で株数を大きく減らしています。また8月初旬に訪れた時、見る事が出来れば良いと思います。

 根に良い香りがあり、宝香(たからこう/ボルネオール)に似ているからと、この名がつけられました。

 

 

 

 

 

 

イブキトラノオ 伊吹山(伊吹山花紀行)

イブキトラノオ(伊吹虎の尾/タデ科)

 本来7月中旬に、山頂に花の群落が広範囲で見られましたが、近年「群落」というには程遠い状況。

 やはり、シカの食害のせいです。しかし、山頂各所で見る事は出来ます。

 

 花穂は5cmほど、細い茎は30cm~1mほど。峰渡る風に揺られて、ゆらゆら揺れます。

 「虎の尾のように揺れる」と例え、イブキトラノオの名になりました。

 ただ、伊吹山だけに見られる植物と言う訳ではなく、他の地域・北半球の広い範囲で見る事が出来ます。

 

 この植物の根茎を、生薬・ケンジン(拳参)と呼び、『抗ウイルスに役立つもの』として用います(清熱解毒薬)。

 中国ではバンランコン(板藍根/アブラナ科植物)が、ウイルス類を防ぐとして、今回の新型コロナウイルスにも大量に用いられました。バンランコンは、このイブキトラノオと同じ、薬効分類です(清熱解毒/ただし、日本では両者とも医薬品には指定されていません)。

 他には、スミレ・タンポポなども、同じ区分に含まれています。

 

 

 

 

 

 

 伊吹山 ヤマトタケルノミコト像(伊吹山花紀行)

伊吹山頂・ヤマトタケルノミコト像

記念写真撮影スポットです。

 

 ヤマトタケルノミコトは、大和朝廷の英雄。武勇のひと。

 名古屋・熱田神宮から、地神・伊吹山の神を征伐しようと、この地を訪れました。

 

 しかし、強力な武器であるクサナギノツルギ(草薙剣/天叢雲剣)を持って来なかったため、伊吹山3合目で、伊吹の神の攻撃に倒されます。

 

 

 

 

 

 

 

伊吹山 山頂とトンボ(伊吹山花紀行)

伊吹山頂(朝霧が晴れ、快晴になりました)

トンボが多い日でした。画面には、多くのトンボが写っています。

暑い山麓から、避暑のため涼しい山頂へ移動しています。

 

 

伊吹山 えびすや(伊吹山花紀行)

伊吹山頂・えびすや

いつもここで昼食をとります。皆様、いつか伊吹山でお会いしましょう。

 

 

⇒ 伊吹山 峰渡る風② に つづく

 

 

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◆行 程

自宅スタート(自家用車)8:30 → 関ケ原IC降りる9:10 → 伊吹山ドライブウエイ入口9:20 → 9合目駐車場9:40 → (トイレ、散策準備) → 西遊歩道散策スタート10:00 → 山頂到達11:00(ウグイスの歌を聞いていて10分程、花の撮影のため15分程 余分にかかる/通常は30~40分) →  山小屋・えびすや11:10 → (昼食、休憩) → 12:30山頂部散策スタート(山頂部と、中央遊歩道の一部) → 東遊歩道散策スタート13:05 → 9合目駐車場に戻る13:45 → 車で下山13:50 → 《下山後、3合目観察会の集合場所へ向かう》 → 山麓ゲート通過14:12 → 伊吹牛乳直売所でアイスクリームを食べる14;22~14:35 → 移動 → 伊吹山登山口(みことやさんにあいさつ)14:40~14:45 → 山麓のゴンドラ駅(観察会の待ち合せ場所)14:50到着

 

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※山頂は、麓から8度程気温が低くなります。

※7月でも、雨天・荒天時は肌寒く感じる事があります(天候が急変する事があります)。

※登山道では、林下の道はほとんどありません。日差しが当たり続け、帽子は必需品です。水も多くお持ちください。

※今までいなかったヒルを、野生のシカが持ち込みました。いるかも知れませんから、塩を持っていると良いでしょう。

※登山道ルートにあるトイレは、登山口(鳥居前)、1合目、3合目、山頂です。

 ドライブウエイ終点(9合目)にトイレがありますが、麓からの登山者のルートにはありません。

 

 

◆見られた花(山頂、西遊歩道)

イブキジャコウソウ(花盛期)、イブキトラノオ、オオバギボウシ(咲き始め)、カワラナデシコ、キオン(咲き始め)、キンバイソウ(花盛期)、クガイソウ(つぼみ)、コオニユリ(つぼみ)、コナスビ、サラシナショウマ(つぼみ)、シモツケ、シモツケソウ(つぼみ)、トウキ(花盛期)、トモエソウ、ハナヒリノキ(盛期過ぎ)、ヒメフウロ、ヒヨクソウ、マムシグサ(緑色の果実)、ミヤマコアザミ(花盛期)、メタカラコウ(咲き始め)、ヤマアジサイ(盛期過ぎ)、ヤマホタルブクロ、ルリトラノオ(つぼみ) など