すてきな店に巡り会った。

 高輪のフレンチでラロマネという。

 店主は日本で40番目のマスターソムリエ・三宅俊彦さんだ。

 

ランチョンマットの花は全て店主手製の押し花。細やかなこだわりが光る。
 
 店は一日二組限定で予約の客のみ。都営浅草線の高輪台駅からすぐのビルの二階にあるが、看板は出ていない。ここだろうか?と思いながら階段を上り、おとないを入れようとするやいなや三宅さんと鉢合わせした。
 
「いらっしゃいませ、ようこそ」
 
 わざわざ到着を店の外で待ってくれていたのだった。
 うれしい…。親切が心にしみるとはこのことだ。
 
 案内された店内は、しつらえから料理・ワインにいたるまで三宅さんのこだわりに満ちており、「もてなし」とはかくあるものかとの感動を呼ぶ。

 
始めて貴腐ワインを飲む。  右の皿には卵の黄身、望月のような美しさだ。
 
 全てのサーブ、配膳は三宅さん自身がおこなう。それもまた提供する料理と酒の魅力を余さず伝えたい、客に感じてほしいとのこだわりだ。三宅さんの話を聞けば、料理も酒も一層倍うまく感じられる。
 生まれて初めて貴腐ワインを飲んだ。なんという旨さだろう。これが天が降らせるという甘露だろうか、とさえ思った。日本酒飲みの私にとって、「妙なる甘さ」は頭がクラクラするほどうれしい。その代わりフルボディの赤ワインはちょっと苦手だ。
 土砂降りの雨の中、ずぶ濡れになりながら三宅さんは私たちを送って下さった。
 
 私もサービス業を経営する身として、もてなしとはなんだろうかと日々問うている。
 三宅さんは愛するワインをこだわりの空間で披露し、感動を注ぎ、非日常感で客を包む。この「三宅スタイル」を真似しようとしてもなかなかできるものではない。しかし、猿真似でも形をいただくことはできるだろう。
 
 「もてなしとは何か」
 私は相手の期待を上回るよう、心配りにつとめること。と思う。
 
 我が社は年間来場が延べ約7万人。私の個人プレーだけでさばける人数ではない。だからこそ、組織を組んで空間作りに意を凝らし、楽しい時間の提供をおこなおう。そして最後のひと味は、社長である「私」の思い次第だ。
 
 私が愛してやまない唄、三味線、茶の湯…こういったものを通して人と人が巡り会う楽しい時間と空間を編み出せたら本望だ。
 
 三宅さん、大切な気づきをいただきました。ありがとうございます。