月に二回長唄と長唄三味線の稽古が同一日になる。要は稽古のダブルヘッダーだ。長唄や小唄では、唄と三味線は言うなれば「孤掌鳴り難し」というもので、どちらが欠けても成り立たない。

 
 まず11時からは長唄三味線の稽古だ。相対(あいたい)稽古といって、師匠とは一対一で向かい合う。
 今回稽古したのは「鞍馬山」、天狗と牛若丸の剣術稽古の曲だ。
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長唄 鞍馬山の譜、三味線の手は唄の左側の数字
 
 とにかく荒っぽい(粗っぽいではない)曲だ。剣術稽古だから無理もないが。
 
〽︎いでや琢磨の修行をなさん!
〽︎しや 小賢しと 牛若丸!
 
などとノリノリの歌詞では、三味線を弾いていても、つい力こぶが入る。演奏時間は約16〜17分なので長唄としてはさほどの長さではないが、とにかく手が細かくまた緩急や強弱の差が大きい。加えて獨弾(ひとりびき)が多いので、油断は禁物だ。ソロはごまかしがきかない。
 
 師匠は容赦なくスピードを上げて弾いてくる。夢中で弾いていたらあっという間に40分経過。
 あぁ、楽しかった!
 
 午後は唄の稽古だ。
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長唄 秋色種(あきのいろくさ)
 
 今度は一転、行儀良いきれいな唄だ。
 それもそのはず、盛岡藩南部家の殿様かその縁者が作詞したという。
 牛若丸!だとか、天狗つぶての!などと荒っぽい気分でいたのをすっかりモードチェンジする必要がある。だが私は小唄上がりなので、こういう「はんなり系」はむしろ望むところである。
 秋色種は初めての稽古だが、妙にしっくりきてたちまち気に入った。夢中で唄っていると、気づけば40分経過。
 またもや!
 
 稽古の合間には会社でミーティングやら指示出し、報告を受けたりと仕事っぽいことが詰まっている。しかし稽古が近づくと、もうダメだ、ソワソワしてしまう。
 
 会社では今日も私のことを
 
〽︎姿を くらまし 失せにけり
 
と、言っているのだろうな。