一番昼が長い日、夏至が暴風に包まれた。
これはライブ中止かと危ぶんだが、幸い夕方から雨がやみ、夕やけも現れた。
今日は弊社のキャンドルナイト。メインはフロントにつとめる伊藤君のライブだ。
明かりを落とし、ろうそくの火で照らされたクラブハウスでライブが始まった。スタンダードナンバーや伊藤君のオリジナル曲がキーボードに乗って流れる。なかでも彼が亡きおじいさんへ作ったという曲は、なんとはなしに皆をシンとさせた。
伊藤君は酒が好きだという、特に日本酒が好みとか。そのためかどうかわからないが、彼の「酒と泪と男と女」はジンとくる。単に私が日本酒をあおりすぎただけかもしれないが。
今日は暴風の中、恩師の見舞いに赴いた。
吹き降りの愛宕山が霧に煙り、濡れた緑が見事に都会のグレーと向かい合っている。
私の経営の師は飯塚保人といい、出会って二十年。野武士のような人で、坊ちゃん育ちの私にとっては逆立ちしてもまねできない。そんな師が倒れたなどとは信じられず、思わず病室への足が急ぐ。
エレベーターを降りた瞬間…ちょっと不自由に歩いている師の姿を見て、不覚にも涙がにじんだ。しかし、そんなこちらの心配をよそに、師匠はいたって元気に吼える。なんだ、心配して損した。
「いいか、バランスなんかとるな。バランスは崩してこそ、とる意味がある」
ぐっときた。
伊藤君のライブを聴きながら、バランスをくずせという言葉が頭の中を反響する。
あさっての社員食事会はチームの打ち上げ会にしようと、河島英五を聴きながら、ふと思った。弊社の理念は「地域の庭」だ。まず、私たちの場を庭にしよう。
社員という狭い枠で縛るのではなく、「地域の庭」を支えるメンバーの集まる会にしたい。私も三味線を弾こう。初披露で失敗するかもしれないが、いいのだ。
「庭」だから。