電動化によって、エネルギー問題が根本的に解決するわけではないと、前に書きました。それでは、電動車のエネルギー効率が向上しないのかというとそうではありません。電動化によって、一般的な内燃機関エンジン車に比較してエネルギー効率は向上します。

 

道路を走る自動車は、信号や交差点でブレーキを踏んで減速を余儀なくされます。このとき自動車の運動エネルギーは熱として捨てられます。電動車であれば、これを化学的エネルギーに変換して次に加速するときのモーターの電力として使えます。これを回生といいます。

 

回生できるがゆえに、電動車は加減速機会の多い市街地走行において同じ距離を走行する内燃機関エンジンをもつ一般的な自動車より効率が向上します。

 

この理屈は、重量が1tの小型乗用車から25tの大型トラックまで通用しますが、効果の大きさは異なります。一般的に乗用車は市街地を走ることがほとんどですが、長距離を走ることが多いトラックは高速道路や夜間国道を走る割合が多いので減速機械が少なく、上に書いた電動車のメリットが燃費メリットになりにくいのです。

 

大型商用車の電動化が進まないもう一つの理由は、電動車に必要な電池の重量です。長距離を走行する大型カーゴトラックの燃料タンク容量は1000L近くあります。タンクを含めて約900㎏の重さで、約4000km無給油で走行可能です。仮にこの距離をリチウムイオンバッテリーの電動車で実現するために必要なバッテリー重量を試算してみます。

 

イーロンマスク率いる電動車メーカーのテスラが現在使っているパナソニック製のリチウムイオン電池のエネルギー密度は、約250wh/kgだといわれています。大型商用車が1km走行するためには1kwhの電力が必要です。4000km走行するためには、4000kwh必要で、この電池でこれを賄うためには16000kgの重量が必要になります。つまり、同じ無給油走行距離を達成するためには16倍の重量が必要になり、これでは荷物を積めなくなるので、もし今電動大型商用車を実現しようとしたら、無給電走行距離を400km程度として1600㎏程度の電池を積むことにせざるを得ません。

 

社会インフラの進展で、給電設備が全国に隈なく設置され、かつ短時間給電が実現するまでは、電池の低コスト化がすすんだとしても、大型商用車の電動化は実現しないとおもいます。

 

一方、商用トラックのなかでも小型トラックは、市街地の宅配便等の集配に使われることが多いので、燃費メリットが大きく、長い無給電走行距離も必要なく、すでに給電設備が整いつつある都市部での使用を前提に、商用車のなかで最も早く電動化が進む可能性が高いです。