SCMはオペレーションだけでは回るわけではありません。
実はマネジメントが重要な役割を担っています。

予算を承認し、販売目標、在庫目標、目標原価を決めるのはマネジメントです。

販売計画を是認するのはマネジメントです。

在庫計画を是認するのはマネジメントです。

生産能力を是認し、投資を承認したのはマネジメントです。

マネジメントが決めた販売規模、生産編成が収益を決め、
制約になるのです。

こうした事柄が、業務担当者で決められるはずもないのです。
SCMはサプライチェーンマネジメントとあるように
マネジメントなのです。
SCMはやり直しですが、なぜうまくいかないのでしょうか?
今回は組織の壁と評価について述べたいと思います。

そもそも、組織が小さければ、あまり問題はおきません。

たとえば、あなたが八百屋だったとしましょう。
八百屋は、周りのお客さんが見えているし、大体の購入量も見えています。
今なにが旬で、何が売れているかもしっています。

今の店の在庫、売れ行きを見て野菜を仕入れます。
在庫が多くなれば仕入れを抑えたり、安売りをして売り切ったり
あるいは、珍しい京野菜を仕入れて売る込んでみるか、とか
たまねぎ・にんじん・ジャガイモをセットにして売るか、とか
いろいろ工夫します。

売れ行き、在庫、旬の野菜を判断し、売込み方も考えて
仕入れ、店に並べて、実際に店頭で売っています。

さて、ではグローバル企業はどうなっているのでしょうか?

販売組織は、「これを売れ」、といわれて販売します。
今、何が売れているのかという最先端の情報は生産側にはフィードバックされません。
営業マンは売るのが仕事ですから。

特に、海外販社でインセンティヴ型で売って稼いでいる営業マンが
何が売れているか、こういうものを開発すべき、などというはずもありません。
売って、稼ぐのが彼らの仕事なのです。彼らの評価は売り上げであって、
商品企画ではないのです。

販社そのものも売り上げと利益の評価です。
さて、在庫があまっていますが・・・・知ったことではありません。
売るのが仕事なのですから。

一方、工場はどうでしょうか。

決まったものを粛々と、QCDを守って作ります。
指示のあったものは作ります。
販売組織に在庫が山のようにあっても関係ありません。
注文は仮にグループ会社でもキャンセル不可です。
自分の都合で、平準化生産をしたいので、
大ロットで3ヶ月前の注文締め切りです。

工場は工場予算を達成するため、
稼働率を優先して、作ることを求めます。
販売組織に在庫があふれようが、知ったことではありません。
「生産を減らせば、原価が上がる」といって脅迫し、
工場予算を達成してボーナスをもらいます。

財務会計しか評価軸を持っていない場合、
在庫を作るほど、工場は儲かるというかしな姿を見せます。
判断を誤らなければいいのですが・・・

このように、組織の間に壁があって、それぞれ分断された評価軸で
評価されるので、それぞれの組織では目標達成に向けて
合理的に振舞っているつもりでも、全体で見ると、
身勝手な活動になるという矛盾が生じています。

組織の壁、組織に分割され評価指標/制度は
会社をいためるのです。

果たして、この状況で大企業は八百屋に勝てていると
いえるのでしょうか?

SCMはやり直しなのです。
ERPやSCMが紹介され、BRPだ、改革だといわれていますが、実際に製造業の改革に関わる機会があると、

製造業の業務は、おそらく40年前からほとんど変わっていないのだろう、と推察されます。

 自動車産業などは、JITで進んでいるかのように思われているかも知れませんが、それはおそらく錯覚です。

 自動車産業の業務を見ると、40年前に導入された「オーダーバンク」がいまだに使われています。そして、「繰り返し受注生産」という足の長い業務が行われているのです。JITができているのは、サプライヤーとの間だけ、それも、一部を除いて、単にサプライヤーへJIT納品を押し付けているだけなのです。

需要を精査し、需要にあわせ、かつ需要創造しながら、生産と供給を最適化する、「必要なモノを、必要な時に、必要なところに、必要な量だけ届けるための、最終顧客からサプライヤーまでの業務の仕組み」など、影も形もありません。

 結局自動車産業も、流通段階の製品在庫を持った、見込生産でしかないのであって、その業務は他に優れているわけでもなく、どちらかというと、「繰り返し受注生産」という、ひどく遅れた業務を営んでいるのです。

前回見たように、日本の製造業は、年度末に在庫を落としています。これは、生産調整を行っているだけではなく、多くの場合、販売サイドに「押し込み」を行っているのです。  

さて、自動車産業でも、年度末に在庫が落ちています。果たして、日本の自動車産業も「押し込み」をやっているのでしょうか? 

自動車産業に、これ以上詳細に触れるのは避けますが、こうした40年間の業務がそのまま行われているため、リーマンショックでの在庫積み上がりを避けることができなかったわけです。

実は、あらゆる製造業が、販売サイドとの連携を考えたとき、まったくその業務レベルは、管理しているとはいえない、場当たり的で自然発生的な業務になっているのです。うそだと思いますか?

では質問です。

①「営業組織、販売会社、代理店、卸、小売、などの販売サイドの販売計画、販売実績、在庫計画、在庫実績、仕入計画、仕入実績は金額ではなく、数量で見えていますか?」

②「国内だけでなく、海外はどうですか?」

③「営業組織、販売会社、代理店、卸、小売、などの販売サイドの販売計画、在庫計画、仕入計画、は本社から統制されていますか?」

④「営業組織や販売会社が自社だったり、連結対象だたりするのに、引取責任のある発注以外受け付けないという業務になっていたりしませんか?」

どうです?

 こういう質問をされた製造業が、「すべて見えている」、「統制している」、「確定注文ではなく、販売鈍化・在庫過剰時には生産、輸送を止める」などと答えるでしょうか?

 おそらく、「見えていない」、「野放し」、「確定受注なのでどうなろうが作って送る」という答えがほとんどでしょう。

 つまり、こういう仕事の仕方は、工場中心の稼働率優先型の40年前の高度経済成長時代の仕事の仕方です。

 さあ、SCMはやり直しなのです。

 SCMが鳴り物入りで紹介され、外国のSCMパッケージがブームになったときと今を比べて、皆さんは何か変わったと思うでしょうか?


 実は、何も変わっていません。私の知る限り、業務は変わらず、数億円から下手をすると数十億円を使ったSCMシステムもほぼ動かなかったか、廃棄になっています。


当時、このシステムを入れればSCMが完成するという「セールストーク」を信じた会社の幹部は責任がありますよ。(これはERPでもいえます。ERPなどという付加価値のない基幹システムの入れ替えで数十億から数百億使った企業がありますが、なにか変わりましたか?)


今振り返っても、日本企業は間抜けでした。(同じことが「クラウド」という言葉で繰り返されようとしています。久しぶりに見つかった押しの良いセールストークで、まさに、IT業界はこぞって、雲にまかれようとしていますね。)


さて、何も生み出さなかった前回のSCMブーム。(ブームというのは批判的な意味をこめています)私は経験的に、ほとんどの会社で業務が変わらなかったことを知っています。ある業界など、50年前の業務を今でもそのまま行っています。この業界は日本を代表する業界です。SCMなんてやっていないのです。


しかし、業務に関しては、外部からは分かりにくいでしょうから、経産省が発表する在庫率のグラフで見てみましょう。



<全産業の在庫率 出所 経産省+筆者加工>
秋葉で働く社長日記


つまり、在庫は、何の影響も受けなかったのです。さて、多くのSCMプロジェクトは何を目標にしたでしょうか?・・・そう、在庫削減です。このグラフを見る限り見事に失敗だったのです。


もちろん、これは合計の数値ですので、個別の企業では成功した企業もあるかもしれませんので、あくまでマクロな数字と見てください。

<自動車産業の在庫率 出所 経産省+筆者加工>

秋葉で働く社長日記


さて、マクロな数字で恐縮ですが、自動車産業(↑)でみてみましょう。同じグラフですが、これを見た限り、この産業は在庫率は上昇傾向です。さて、進んでいると思われている自動車(私はすごく遅れていると思っていますが)も、結局在庫は減っていません。
さらに言うと、全産業合算値のグラフや自動車のグラフでは、サイクリックに在庫率が増減するポイントがあります。ここは実は、年度末の在庫調整です。ここから、製造業は市場を見たSCMではなく、決算調整しながらプッシュ型で生産していることがわかります。

 

ここから導かれる答えは、日本の製造業は、マクロに見ると結局在庫は減っておらず、SCMなどやっていないということです。



さあ、ここにリーマンショックが襲ってきました。当然、SCMをやっていない日本企業は在庫の山と過剰能力に苦しみました。当然です。相変わらず、供給側の論理でプッシュで作っていたうえに、販売の状況と見通しなど意思決定に使われていないのですから。


リーマンショック後のグラフもありますが、長くなるので割愛します。


リーマンショック後の苦しみで、多くの製造業はSCM再構築に思い至っております。さあ、今年はSCMやり直しです。さあ、頑張って会社を変えましょう。おそらく、最後のチャンスでしょうから。

 これは経産省が発表する在庫率をグラフ化したものです。2002年の在庫率を100とした全製造業の在庫率を合計で示してみました。直線が近似線ですが、この線の傾きを見ると横ばいです。2002年ごろはSCMパッケージやERP導入が最盛期のころですが、導入後も在庫率は変わらず、です
さて、2010年念頭にSCM再構築元年と書いたので、これから5回にわたってこのテーマを書いていきたいと思う。

2000年ごろ流行したSCMというコンセプトはなりを潜め、
今では多くの企業に定着したように思われている。

しかし、SCMコンサルとして10年以上活動していると、
まったくSCMなどできていないことが良く分かる。

はっきり言って、SCMなどほとんどできていないし、
構築した形跡もない。

多くは、システムの入れ替えをSCMと勘違いしていた。
何億もかけた、当時流行の海外SCMパッケージは、
今、どうなっているのかご存知だろうか。
これは、あとで書いていこう。
ただひとつ、いえることは、システム導入でSCMなど
できなかったということだ。

それに、リーマンショック前後の日本の製造業の
振る舞いを見るにつけ、SCMなどできていないことが
よく分かる。
リーマンショックはカタストロフ?
そんなことはない。リーマンショックのずっと前に
サブプライムは問題になっていたし、
個人のおかしなファイナンスが問題になっていた。
販売の質を見ない業務がSCMのはずがなかろう。

とまあ、いろいろあるが、
知っている人は知っているが、
製造業は50年前と仕事をやり方を変えていない。
つまり、SCMなどやれていないのだ。

リーマンショックから今にいたる状況は
日本企業にSCM再構築を迫っている。

実際、2010年度は多くの企業でSCM再構築の
プロジェクトが計画されている。
まさにSCM再構築元年なのだ。
(SCMとあわせて原価管理・収益管理がテーマなのも
同じ原因による。SCM=経営管理そのものなのだ)

さあ、では、なぜ今年はSCM元年なのか、
その点を今回を含め5回にわたって検討しいこう。

次回SCM再構築元年②は
「在庫は減っていない」だ。

それでは