:甲田 学人  挿絵:三日月 かける

「断章のグリム 幸せな王子・下」





葬儀屋・瀧修司とその助手である戸塚可南子の元から、浅井安奈の蘇生体を連れ出し、逃亡を続ける田代亮介。



病院で自殺を計った少女の残した手紙は、自分たちがいじめていた浅井安奈の復讐を匂わせる内容だった。

その被害は、同じように安奈をいじめていたクラスメイトにまで広がっていく。



一方で、雪乃は満身創痍の蒼衣と、可南子に対する不信感が募る中、安奈のクラスメイトに接触を図る。

しかし、可南子はすでに動き出していた。

葬儀屋の〈断章〉によって生まれた安奈。

それは不完全な蘇生であり、元の人格が失われている。

それでは作品として不完全であり、何よりも瀧修司の作品として永遠で有るのは自分だけで良いと言う、独占欲を超えた執着心。

つまり、戸塚可南子は作品で有るという事。

瀧修司と戸塚可南子の過去に有るのは、正しく幸せな王子。



この泡禍の元凶は果たしてどこに有るのだろうか。

そしてまた、物語は残酷な結末を迎える―――。







はい、今回も救われないです。

瀧修司が葬儀屋へと至る過程が明らかとなり、戸塚可南子もまたその一端を握ることが記されました。

田代亮介もまた、蘇生体である浅井安奈と関わり、変わっていきます。

浅井安奈をいじめていたクラスメイトに、彼女を与えた果てに、彼は病院一つを巻き込んでしまいました。

どちらの根底に有るのも、愛情。

ですが、ソレは本当に愛情なのでしょうか。

答えは出ないのかもしれません。

しかし、この件に関わった人たちが失った物は、決して小さいものではないでしょう。

受けた傷もまた、同様に・・・。






断章のグリム 13 (電撃文庫 こ 6-27)/甲田 学人

¥578

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:鎌池 和馬  挿絵:灰村 キヨタカ

「とある魔術の禁書目録 22





ローマ正教の暗部「神の右席」。

その最後の一人、右方のフィアンマによる「計画」が、ついに発動する。

第三次世界大戦下のロシア上空に浮遊した巨大要塞「ベツレヘムの星」。

十字教信者のみならず、全世界の人間を救うと言うそれは、しかし人類史上において未曾有の大災害を起こす事を意味していた。



フィアンマが「浄化」と呼ぶ謀略が蠢き、形を成そうとする中、三人の少年は戦い続ける。



浜面仕上は、体晶に侵された滝壺理后の治療を終え、ロシア軍によるクレムリン・レポートを防ぐために動き出す。

その前に立つのは、かつての美しさを失った麦野沈利。

無能力者に二度負けた超能力者は、禁断の切り札に手をつける。



一方通行は、大天使ミーシャをかろうじて退け、科学の天使から得た助言から「ある解法」を導きだす。

推論に推論を重ね削り出したその答えとは、禁断の一手―――。

学園都市第一位の化物は覚醒する、己の中で眠るモノを得て。



そして、フィアンマとの一騎打ちに臨む上条当麻。

「ベツレヘムの星」計画を止めるため、インデックスを守るため、フィアンマが見る幻想を打ち砕くため、異能の消去のみならず、受け流し、圧倒的不利な状況を修正していく。

けれどかの敵には、己の力と禁書目録の遠隔操作に加え、「天使の力」をも操る術がある。

そして戦いの最中、上条の右腕に起きた異変―――。



戦局は終盤を迎えようとしている・・・。










な、長かった。

著者もあとがきで触れている通り、ヴェント編から数えて十冊近くを費やしたようです。

その結果があのラストかと思うと、少しいたたまれないです。

まだまだ、物語そのものの終幕は遠いようですが、しかしながらまさかの主人公〇〇・・・。

いや、この後の話がぜんぜん想像できないんですよ。

浜面も、一方通行も、大きく成長したのも確かですが。

上条さんは相手が違うだけで、やってることは大小有れども、同じですから。


さてさて、次巻は救った後の世界とのことですが、その場にはあの人が居るのでしょうか?


消息を絶つあの人は、果たして復活するのか?

あぁ、ネタばらししたい・・・。





とある魔術の禁書目録(インデックス)〈22〉 (電撃文庫)/鎌池 和馬

¥599

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:兎月 竜之介  挿絵:BUNBUN

「ニーナとうさぎと魔法の戦車」





戦災によって放浪の身となったニーナ。

ある日、結婚式の会場から食事をくすねようとした所を見つかってしまう。

警察に突き出されるどころか、私刑にかけられても仕方ない時代、ニーナは覚悟を決める。

だが、魔動戦車に乗った少女たちに赦された。



彼女たちは、私立戦車隊ラビッツを構成するメンバーだった。

戦車隊は、世界大戦の残した災厄の一つである、自立稼動する魔動戦車・・・通称:野良戦車から、町の人々を守る自衛団の役割を果たしている。

しかし、土地・場所によっては、戦車の力を嵩に虐げる者もいる。

ニーナが使われていたのも、そんな戦車隊の一つだったのだ。

だから彼女は戦車に乗る者を嫌っていた。



だが、野良戦車の出現が、ニーナを再び戦車に乗せることになる。

砲手が引退して居ないラビッツ。

かつて戦車に乗っていたニーナ。

ラビッツの戦車長・ドロシーがメンバーに言い放った、

「新しい砲手が見つかった!」



本当の幸せを掴むため、戦いが起きない世界を迎えるため、ニーナは再び戦車に乗る!










SD小説新人賞の大賞受賞作の一つです。

とても面白かったですよ。

本当に面白いと、言葉が出なくなります。

百の言葉を重ねるよりも、ただ一言で「面白かった」と言える作品って少ないと思うんですよ。


舞台となる世界は中世の様な雰囲気ながら、第二次世界大戦以降の技術と、魔法が混在する感じでしょうか。

魔力によって車を動かしたり、大砲を撃ったりしていた世界大戦の末期に、魔力爆弾が落とされ、魔道兵器の大半が使用不可能になった時代。

戦争の継続が不可能となり、曖昧な勝者と敗者が決定してしばらくすると、放棄された戦車が無人のまま稼動を始め、近隣の町や村を襲いはじめる。


こんな世界を背景に、逃亡を続けるニーナが、幸せを掴むために戦うことを決意するお話になるんですが、安易な復讐に囚われないように、彼女を導く大人たち・・・と、言うよりは仲間になる、ラビッツ小隊のメンバー。

彼女たちにも、戦争の傷跡はもちろん有りますが、ニーナが間違った方向へ行かないように、見守る立場にある気がします。

そんなメンバーたちと、同じ視点にニーナが立つ時、彼女の幸せが始まったのかもしれません。


単巻で終わってしまいそうなラストでしたが、続くかな?とも思わせるので、この作者の次の作品も楽しみです。

新人賞を受賞されるだけあって、とても力強い作品だったと思います。





ニーナとうさぎと魔法の戦車 (スーパーダッシュ文庫)/兎月 竜之介

¥580

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