「振り落とされないでくださいよ!」
「分かってる!」
ツリシの後ろ
必死に抱きつくけど
アントニオみたいに一回手を
握ってくれることも
振り向いてちょっとバカにしたように
笑ってもくれない
「なぁ!」
「はい!」
「アントニオ、大丈夫やんな!」
「...」
「なぁ!」
「すみません聞こえませんでした!」
「んーん何もないっ!」
きっとツリシは真面目やから
答えられへんのや
大丈夫や、なんて
アントニオみたいに
根拠のないものに無理やり
根拠を作って
事実にすること
できひんから
「くそっ、どこやぁぁぁぁー!」
「グハッ!...ハァハァ」
(滑稽やなぁーアントニオ)
「ハァハァ」
(そんなにもこの子守りたいわけ)
「ペッ!触れんな、そいつは私のや」
(写真にまで嫉妬とか
醜いヤツ
男ならストーカーになってたな)
「悪いけどアイツ幸せにするために
私は離れた
あいつも傷つけた」
(ふーん、あっそ
じゃあこのメール意味無いわけ?)
「メール?」
(そ、アントニオここにおるから
一人でおいでって
余計なん連れてきたら
アントニオ、帰れなくなるよって)
「っ...ハァハァ
ハハッ残念やったな
アイツは私のことを嫌ってる
やって来たりせん」
(チッ、)
バキッ!!
「ガハッ!!ウッ!!!...ハァハァ」
(ったくつまんねー
せっかくヤれるおもたのに)
どうする...
どうやって逃げ出す
きっとアイツらのことや
今頃必死に探してれてる
やけど...この感じでずっとおれば
ショックを起こして
体が危険や
なんとしてでも抜け出さへんと...
せめてこの手首の縄を...
(あーあ活きなくなってきたなぁ)
「...」
体を倒されて
その衝撃で懐から落ちた写真
KYがくれた美優紀の写真
私の血がついてしまってる
ごめんな美優紀...
私、約束守れへんかった
側にいてやられへんかった
でもこれで美優紀が幸せになれるなら
私は何だってええ...
カンカランカーン!
(なんや!
おぉー来たやん)
男どもが嬉しそうに
顔を上げるから
視線の先を見ると
美優紀が立っていた
「アントニオ!」
「お前...何してんねん
こんなとこに...グハッ!」
(黙ってろ
お姉さん可愛いなぁ
なぁ取引しよ)
「取引?」
(一回やらせて?
そしたらコイツ開放したる)
「美優紀っ!やめろ!」
(雑魚は黙れよ)
バキッ!バキッ!!
「や、やめて!!」
(なぁお姉さん
俺ら本気やで?)
「...分かった」
「み、ゆき...頼む
やめろ、にげ、ろ...」
「アントニオ」
「ハァハァ...」
「今、助けてあげるな」
泣きそうな顔で
微笑むお前を
私は地面で這いつくばいながら
眺めるしかできない
そんなの嫌だ
なんとかしないと
考えろ、考えるんや
「あ...」
考えが浮かぶ
でもこんなん
上手くいくかわからへん
失敗したら...
(じゃあ奥行こう)
「...はい」
そんな事言ってられん
仕方ないな...
どーなっても...ええか