絶対って言葉 | さやみる推しのNMB妄想小説 別館
「あれ?先生は?」

(あぁ…ちょっと)

「え?」

部屋を出て
外のベンチに行くと
先生がコーヒーを持って
座っていた
その姿は
明らかに元気がなかった

「せんせ?」

「あ、朱里ちゃんか」

「隣いい?」

「ええよ…」

隣に座っても
いつもみたいな笑顔は
なかった

「どうしたん??」

「…ん、まぁね」

「…」

「はぁ…実は
担当してた患者さんが
亡くなってさ
俺、初めてやから
全然…アカンけど」

「…そっか」

「…ごめんな、一人にして」

「…やだ」

「朱里ちゃん…」

「朱里さずっと
入院してるから
しってるねん
仲いい子もいなくなる
どれだけ好きでも
いなくなる
いつか自分がって
その恐怖と戦ってる」

「…」

「でもな考え方変えてん
誰かがいなくなった分
その分皆が生きたい気持ち
背負って行くって
その分強くなれる」

「…」

「だから先生は…」

ギュッ

「え…」

「ごめん…」

朱里の服の裾を掴んで
肩に頭を寄せてくる先生
いつもより小さく見える

「…大丈夫やで先生
先生が助けようっていう気持ちで
接してくれるのが
私達は幸せやから
大丈夫、報われてるで」

「そう、かな」

「うん、朱里は満足
もし、これで死んでも
大丈夫やで!」

「っ…」

「な?だから大丈夫
先生も元気だし…」

「俺、朱里ちゃんの気持ち
背負われへんよ」

「え?」

「朱里ちゃんがいなくなるなんて
考えたくない
助けたいんや
絶対に…」

「知ってた先生
絶対って言葉
患者さんに使うのNGやねんで」

「知ってる
けど俺は助けたい
俺は、朱里ちゃんのことがっ…」

「言ったらアカンよ…」

「…」

「未練なくなっちゃうやん」

「朱里ちゃん…」

「うん、これでまた
未練ができた
死んでられへんなっ!」

「朱里ちゃんは
何でそんなに強いん?」

「強くないよ
ホンマは怖くて辛い
寂しくもなる
でも、大丈夫
先生がおるから」

「…っ」

「助けてくれるんやろ?
そんな感じでうじうじして
助けられる?」

「…なめんなよ
絶対に助けたる」

「期待してるな?」