「めりぃね、もし、記憶喪失になってもご主人様のことは忘れないからね。」
2ヶ月前くらいにめぇが突然言った。あの、服屋で…
俺はいつものめぇの突拍子もない発言と思って、何も気にしていなかった。
めぇはだいたいそう。話していることとまったく違う話をしだしたりするから。
めぇの病気のこと話したっけ?
めぇが話してたかな?
そう、めぇは脳の病気がある。『そんなに重くないの』と笑っているけど。一緒にいて確かに元気だし、倒れたりもしないから気にしたことはないけど。『何かをするときに少しだけ時間がかかったりするの』なんて汐らしく言ってみたりしてるけど、普通だぜ!気になったことないもん。
具合の悪いめぇはみたことないな…風邪で寝込んだことはあるけど…
それに脳の病気なんて少しこわくてつっこめない!ビビってるわけじゃないんだ、めぇは話したくないから話さないのかもしれないし。きっと話したくなったら話すよ、めぇのことだから。
めぇにはいつだって驚かされる。
これはもう今に始まったことじゃない。
めぇがついこないだ突然話しだした。
「今日まで隠しててごめんね。めりぃね、飲んでた薬が効かなくなっちゃって新しい薬に変わったの。もしその薬が効かなかったら、手術って言われてて…その手術をしたら今までの記憶を失う可能性が高いって言われてたの。めりぃの脳の悪いところが記憶を司るところだから。今でも、一瞬意識を失ったりすると、その直前のことを忘れてたりってあるんだけどね。今日、その薬が効いてるかどうかの検査だったの。ばっちり!!だから大丈夫。手術もしないよ。ご主人様のことも忘れない!」
どうして…
めぇは、大切なことをすぐ言わないの?
その事実を知ったときにご主人様がどんな気分になるか…
めぇはずっと一人で記憶がなくなったら…って考えながらこの2ヶ月を過ごしていたのか…
確かに、薬の副作用で調子が悪そうな時はあったかもしれない…
めぇのことだから、今日が最後かもしれないと思いながら過ごしてたのかな?
俺の誕生日。手術をしたら記憶がなくなるって宣告されたのがまさにその日だったらしい。めぇはどんな気持ちだったんだろう。きっと、こう思ったのかもしれない。
『来年のご主人様のお誕生日に今のめぇはいないかも…』
泣いたかな?泣いたよな。泣き虫だから…でもめぇは違った。
自分に出来る精一杯のことを考えた。なぜなら、ご主人様とペットで迎える最初で最後の誕生日だと思ったから。そう考えると色んなことのつじつまが合う。俺にプレゼントしたノート。あれはもし記憶がなくなった時、『めりぃに渡してね。』ってことだったのかも…とか。
『ご主人様のお誕生日に宣告されるなんてドラマチック人生!』って強がってんだろうけど(笑)
でも、強がりでしかなくて、きっと本当に怖かったから俺にも言えなかったんだろうな。
でも、考えて!!よ~く考えて!!いきなり、めぇが手術します。俺を忘れました。さぁ、どうする?
めぇがなんと言おうと、
「おまえは、俺のペットなんだから、ご主人様と呼びなさい!!」
「え~!!だれ?やだ!!」
はい、デコピン!!
「あ!!ご主人様」
「忘れないって嘘じゃん!」
「ごめん、1%だけ自信あったの」
「ばかだからね」
ほら、もとどおり(笑)
思いっきりデコピンしてやる。めぇの顔がブサイクすぎて見れないくらい(笑)
めぇの1%は、100%を軽く超えていることを知ってるのは俺だけだけど…
つづく…
