★16★
あれ?ここどこだっけ?
あ~!ユウくん家だ。
ソファーがある。新しいの買ったんだ…
あ、帰ってきた。
ユウくんさ、イケメンなんだけど、陰があるんだよな。もっと笑えばモテそうなのに。
すげ~疲れてるじゃん。
キッチンの冷蔵庫からシャンパンを取り出した。
シャンパン飲むのか…
オリーブとチーズ、シャンパン、イケテル男か?
俺には負けるけどな。
窓の外なんて眺めちゃって。
ロマンチストとは、ユウくんのことだな(笑)
大きな川だなぁ…
って、おい!なんで俺、ここにいるの?
めぇの守護天使のはず。ここ、韓国じゃん。
は?わけわかんねーな。
え?ユウくん関係あるのか?
部屋を見渡しても生活感はほとんどない。
冷蔵庫もシャンパンとチーズしか入ってなかったし…
キッチンもきれいすぎる。
ベッドルームなんて、ここに寝てないんじゃないかってくらい乱れてない…
生きてる人間が住んでるのか、ここ?
クローゼットは開けっ放し。なんで?
レールが壊れてるのか…
あ!見えてしまった。これ、めぇが壊したのか!あいつ!人様のクローゼット壊すなんてまったく!
あ~俺、情けない。そんな奴を助けたのか!!
ベッドの脇のサイドテーブルに薬が無造作に置かれている。
ユウくん、どこか悪いのか…
もしかして…
神様はユウくんをほしがっている。
天使には、わかる。
でも、それはだめ!!
絶対にだめ!!
めぇを今支えてるのはユウくんだから。
俺が堕天使になるまで、むしろ、堕天使になったあと、親友になれるのはユウくんしかいない。
イケメンで、頭が良くて、めぇのことを大事に思ってる。
でも、なぜ、俺はここに来てしまうんだろう?
それにしてもこの部屋、居心地いいな…
まるで俺の部屋みたいだ。
★17★
めぇと違ってユウくんは男だし、ずっと一緒にいなくても泣いたりしないから、この部屋でくつろぐイケメン天使、俺!
このソファーも寝心地いいな!!
ここにいると飢え死にしそうだ。だから、ユウくんのシャンパンをちょっといただく(笑)
この川を眺めて何を考えてるんだろ。。。笑いも泣きもしない。めぇといる時はそんなんじゃないのに、一人になると表情一つ変えない。テレビもつけないし音楽も聴かない。静かな部屋でただシャンパンを飲んで何かを考えている。
ユウくんの帰宅時間はだいたい夜中3時すぎ…
俺は妻か?
<報告書5>
ユウくんの観察
理由はわからない
ユウくんがシャンパンをあけてソファーに座ったら、俺は窓に座って彼を観察する。
「めりぃちゃん、元気?」
電話か…
「ねぇ、めぇ元気?だって」
「俺さ、日本帰ろうかな…」
ふ~ん
「いや、具合は平気だよ。めりぃちゃん、心配だしさ。」
「あ!!めぇは大丈夫ですよ。この俺様が、わざわざ堕天使になるって決まったので!!でも、ユウくんと友達になれそうだから来てもいいですけど…」
「え?仕事は楽しいけど…」
あ~、きっとめぇは『大丈夫』って言ったんだな。
あのバカ、『大丈夫』って言う時はあんまり大丈夫じゃないのに。
でも、ユウくんのことを考えると正しい答えだな。
本当に話したいことは?
自分の体のことなんじゃないかな…
でも、めぇがいっぱいいっぱいだから。
ただ、日本に帰る、その言葉で伝えたのかも。俺はそれに気付いた。ユウくんは、最近、毎日、薬を飲んでいる。
ユウくんは、毎日3時まで仕事してるの?
ふと疑問に思った。明日はついていってみよーかな。
ふ~ん。
ベンツでご出勤とは!!
いいご身分で。
なんで、めぇの周りは金持ちだらけなんだ?めぇは普通なのに(笑)
共通点はなんなんだろ?何でもいいか。そのうちわかる。めぇに会ったあとに聞けばいいこと。会えるかわからないけど、めぇは俺を見つける気がするから。
ん?ここは?
ユウくんの職場?
韓国語わからないから何話してるか全然わかんないし!!ユウくんは部屋にとじこもって、パソコンに向かってるし、つまんね~
って、ユウくん、全然ご飯食べない!え?大丈夫か?って、俺、飢え死にする。愛をください。誰かぁ~!!
そんなとき、曲が流れてきた。
ん?何のうた?韓国語だから歌詞はわからないし、メロディも初めて聞いた、なんだか少しだけ空腹がましになった。ユウくんは曲の編集もしてるんだな。この曲を何回も何回も流しては聞いている。なんかすごいな。
それにしても何時までこれやんの?
もうとっくに2時を回ってる。いつも3時すぎに帰ってくるからそろそろ終わり?
あ!終わり?
ベンツベンツ!俺ちゃっかり助手席(笑)
ん?
家と逆…
どこ行くの?
★18★
あ…ここ…
あのカフェだ。
めぇがあのさえない男に会いと来てた店。
まさか?
やっぱりか!!
この二人は、そうか…友達だったんだよな。
え?泣いてるの?
男のくせに。
ユウくんは毎日ここに来てたんだ。こいつのため?
二人の会話は韓国語だから俺にはわからない。俺がわかるのは、めぇの韓国語だけ。
さえない男が1枚の紙をユウくんに渡した。
めぇへの手紙かな…
「ユウくん、日本語で読んでくれ~。」
読まないのはわかってる。
あ~気になる。
なんて書いてあるんだよ。
戻ってこい?それとも、今までありがとう?いや、まだ好きだよ?
ユウくんはその手紙をポケットに入れて、さえない男に挨拶をした。
ユウくんは運転席に座ったまま動かない。
「おい!早く車だしてよ!」
おもむろにポケットから手紙を取り出し読み返した。
突然ハンドルに頭を伏せてつぶやいた。
「めりぃは頑固だ。一度決めたことは絶対だ。」
「ユウくん、でも、めぇは本当は戻りたいのかもしれないよ…」
つい、言ってしまった。でも…
それでも、俺は知っている。神様のそばで何度も見てきたから。前にも言っただろ?人間にはどうしようもないことがある。どんなにがんばったとしても、どんなにお互いを思っていても。でも、それは何かを得るため。今はわからなくていい。未来に必ずつながる。つながるように道を選んで行くの。そのために、人間には必ず守護天使がついている。その天使は一人のときもあるし二人のときもある。そう、めぇには俺だった。ラッキーだよな。イケメン天使だし、持ってる力は最強!一人で何人分?めぇの未来は明るい。今は真っ暗闇で毎日泣いているけどな…
「ユウくんは二人のためにがんばりすぎだと思うよ!」
「なんでだよ…神様って残酷だよな。」
えっと…決められてるからかな。
ユウくんが突然胸を押さえて薬を飲んだ。
心臓が悪いの?ストレス?
家に着いて、ソファーによりかかり、あの手紙をまた読んでる。
一体なんて書いてあるの?それ、めぇに送るの?
なんて、俺の定位置から見ていたら、目が合った。
いや、気のせいか。見えないはずだしな。
え?なに?
突然走って寝室へ行くと、紙とボールペンを持って戻ってきた。何かを書き出した。
俺はもちろん覗くよね?(笑)
『ここの空は思っていた青色とは違って黄色がかって見えるんだ。』
え?詩?
ユウくんがさっきの手紙に目をやった。もしかして、訳してる?なんで?めぇは読めるはずなのに。
なんのため?
俺のため?
いやいや…(笑)それはないか。
人間は時として無意識のうちに自分でも理解できないことをやってしまうことがあるからな。
★19★
『ここの空は思っていた青色とは違って黄色がかって見えるんだ。
ここから引っ越すことを決めたのは1ヶ月前。だから、このカフェにももう来ないよ。
窓から見える川も、マンションの下の小さな公園も、何ひとつ変わっていないはずなのに、空だけが濁って見えるのなんでだと思う?
めりちゃんはもう二度とここには帰ってこない。なんとなくわかる。だから、ここにいる必要はない。
本当は後悔しているんだよね。めりちゃんが何を言ったって、僕から別れを告げてはいけなかったのに……
たった一日で未来は変わってしまう。そんなこと、何度も経験してわかっていたはずなのに。
周りからの重圧と、めりちゃんに会えない寂しさとに耐えられなくなって「別れよう」と告げてしまった。あの日、珍しくめりちゃんから電話がかかってきた、その理由にさえ気付けずに自分勝手に告げてしまった。どれくらい傷ついたのかな?その後、考え直して電話したときにはもう遅かったんだけど。めりちゃんは一人で考えて答えを出してしまった。あれだけ言っていたのに。何かあったら、一人で決めないで、必ず僕に相談しろって。今さらこんなこと言ったってもう遅い。日本に帰っためりちゃんを責めるつもりはない。そんな資格すらない。引き止めなかったんだから。
でも、僕はどうしてもめりちゃんを取り戻したい。そう思うのに…
僕が歌手なら上手に歌にでもできるんだろうけど、僕にはそんな才能はない。才能…そんなものいらない。全部捨てたっていい。そう思う心があるのも本当、それなのに、今すぐ日本に行って連れ戻すことができない。自分が嫌になる。今の自分を捨てられない僕もいる。これが素直な気持ち。めりちゃんはそれもわかってた。だから一人帰った。
めりちゃんは気付いていてくれていたのかな?僕が少しずつ日本語を話せるようになっていたことに。めりちゃんが残していったDVDを毎日見ていたんだ。天使役の俳優が好きだったから。たまに僕の背中を触っては残念そうにしてた。僕はその映画に出てくる天使役の台詞を真似してみたりしてたけど全く気付いていなかったよ。なんで、こんなに鈍感なんだ?ってよく思っていたんだけど。普通の男ならイライラするかもしれない、だけど僕は違った。めりちゃんが気付かないのをいいことに天使の台詞を僕のものにしてしまっていたから。卑怯でしょ?でも、僕は天使にはなれなかった。
最後に、もし、めりちゃんが天使みたいな人を見つけたら、きっと僕はやきもちをやくから絶対に内緒にして。言わないで。どうかお願い。』
はぁ?なんだこの手紙。
これを見てめぇがどう思う?
また傷つく。めぇのこと、わかってない!それにめぇは天使みたいな人を見つけるどころか、天使を見つけるから。堕天使だけど。そしたら、内緒にはさせない。全世界に自慢させてやるからな!なんかむかつく。
ユウくんがトイレに行った。
俺は衝動的にこの日本語の手紙を自分のポケットにしまった。
そして韓国語の方は飛行機を折って窓から飛ばした。
テーブルの上に手紙はもうない。
「あれ?」
俺は知らんぷり。
「なんで最近この部屋のものが消えるんだ?俺、今、手紙訳したよな…いや、絶対書いた。誰かいるのか?手紙自体ない…」
いるんですね~
「だってさ、あの手紙を読んだってめぇは苦しむだけ、それならない方がいい!そう思うだろ?ねぇ、ユウくん!俺はさ、めぇの涙を止めないといけないんだよ!さっきの手紙は涙の原因になる。」
ちょっと熱く言ってしまった。
ユウくんがこっちに来た…え?
あ~窓際に来ただけ。ちょっとびっくりした。
「あの手紙、本当は俺にじゃなくてめりぃに直接話したいことだよな…。それにしてもどこいったんだろ?」
え?あれ、ユウくんあて?
俺が捨てた。もう1枚は持ってるけど。
あ…(笑)
人間だけじゃないらしい。無意識のうちに自分でも理解できないことをやってしまうことがあるのは…もしかして、これは、堕天使になりかけてる合図?
★20★
手紙、持って帰るか…
<報告書6>
手紙を手に入れた。
めぇのとこ、行けないんだよ。
堕天使になるまで…
まぁ、今の俺は天使だけど、もう神様と契約してしまったから。
手続きにこんなに時間かかるとは思ってもいなかった。
めぇの様子は気になるけど、ユウくんが毎日のように電話してるから、まぁ、生きてはいるんだろう。
最近、心配なことがある。
ユウくんの飲む酒の量が確実に増えた。
あの手紙を読んで以来…
わかりたくないのにわかってしまうんだよな。
考えてることや思ってること。
守護する人間以外のことがわかるのは珍しいケースなんだけど、俺は最強天使だからしょうがない。
だけど、掟があるからユウくんの前に現れることはできない。話をしてみたいけど、夢に現れることもできない…俺はめぇの守護天使だから。だから。たった何日かなんだけど、ユウくんを助けたいと思う。
何があっても、神様のところへは連れて行けない。これは恋か?な、わけはないが、イケメンには甘いんだ!なんだか、俺と似てるからかも。
<報告書7>
俺はイケメンには優しい。ただし、俺未満のやつ。
まだ、羽はある。
あれ?
ユウくん帰ってこない…??
遅くない??とっくに4時を過ぎている。
そのとき、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
嫌な予感がした…
窓から飛び降りた。なんか飛ぶのが久しぶりすぎて変な感じするな。
目の前に悲惨な光景があった。
交通事故?
車のボンネットと、フロントガラスには真っ赤な血が。その10メートル先くらいにぐちゃぐちゃの自転車。これ、死んだな。今頃、上では忙しくしてるんだろうな。ん?こいつの担当天使は?もう連れてったのか?天使はどこに…?周りを見ても天使がいない。え?天使?天使?え?ええ?俺?いやいや、俺はめぇの天使。今は違うけど…
そのとき、靴が目に飛び込んだ。背筋が凍った。
ユウくんがはいてた靴と同じ…
まさか…
そんなわけない。ユウくんはベンツで仕事に行くから。地下駐車場に見に行くと、そこにはベンツが止まっていた。固まった。
じゃ、さっき救急車で運ばれたのは…
急いで病院へ行った。
手術台の上にユウくんが寝ていた。意識はない。
体中血だらけ。額を切ったせいか顔も真っ赤。イケメンが…
生きてるのか?
そのとき、声が聞こえた…
「あ~!!これ、俺のソファーじゃん」
え?あ~あ…
ま、この事故じゃな。
って、俺の部屋?俺がユウくんの守護天使?
与えられた使命は?わからない。むしろ、もうここにいない。
<報告書8>
堕天使になりかけてるにもかかわらず使命を与えられた。
その使命がわからない。
とりあえす、ユウくんのとこいこ。
少しだけウキウキしてる俺。やっと話せる。
★21★
お!いるよいるよ。
「あ~あ、来ちゃったのか。」
「誰?」
「俺?天使。いや、半分天使。しかもユウくんの守護天使です。」
「え?そうなの?なんで男?」
「いや~わかんない。」
「ってかさ、なんで俺の名前知ってるの?」
「だって、めぇの友達でしょ?」
「めぇ?」
「あ、めりぃ」
「めりぃの知り合い?」
「めぇの守護天使だったんだ。今は違うけど!」
「あ~!!めりぃが言ってた天使?ってキミ?」
「そうそう。」
なんか、ユウくんは頭良さそうだな…
めぇと違って。理解力ある!!
「ねぇ、天使さん、俺死んだの?」
「いや、まだ。神様のところ連れてけばそうなる。」
「今はまだ死ねないのにな…」
「なんで、今日チャリだったの?」
「え?飲み行く約束してたからさ。」
「チャリも飲酒運転だろ?」
「ねぇ、俺のことどれくらい知ってるの?」
「ベンツとか、薬飲んでることとか、自分をかっこいいと思ってるとか。」
「ふ~ん」
なんか、ユウくん不思議だな。死ぬことに対して、あまり躊躇がないってゆうか…
突然、ユウくんがソファーに座って俺をじっと見て、話しだした。
「天使の中では、できれば、いつもNo.1でいたい。実は涙もろい。ダメだしに弱い。すごいへこむ。でもへこんでるのを絶対に気付かせたくない。相当な負けず嫌い。悔し泣く。こっそりと。ほめられるのが好き。嘘をつくのは苦手。顔に出る。しどろもどろ。ここぞというときには強運。いい加減なようで責任感は強い。我慢は短時間。ヒーローを仲間だと思ってる。正義の味方になりたい。自分を話題にされると照れる。でも本当は嬉しい。近い相手にはぶっきらぼう。本当は大事に思ってる。のに言えない。子供に好かれるし、子供が好き。子供相手でも容赦しない!甘えられるのは好き。ヨシヨシ、ナデナデ。大らかでポジティブ。ライバルは有名人か偉人。ハマったら極める。でも飽きるの早い。かわいいもの好き。マリーちゃんとか。不細工なものも愛しちゃう。メリーちゃんとか。カラオケも好き。オシャレ基準は自分流。家から出るのが嫌と言いながら深夜にコンビニとか行っちゃう。ガッツリオフな格好で。感動したらみんなに薦めたい。笑いには厳しい。白黒はっきり曖昧はやだ。相手を振り回しちゃいがち。本当はヤキモチやき。一途。食べ物もらうとなつく。ケバブならなおさら。寝ることは邪魔されたくない。休みは寝ることに専念したい。掃除は苦手。スウェットが似合う。頼まれると嫌と言えない!!ねぇ、めりぃに何を頼まれたの?天使さん」
え?なんで?
「え?なんで?」
「驚いた?」
驚くも何も俺の性格を言い当てた。ユウくん何者?
★22★
「・・・。」
「天使さん。俺さ、そんなに長生きできないのはわかってるんだ。子供の時から心臓弱くて。もう、手術はできない体だから。だから、今日神様のところに行くことは決まってたのかもしれないって思ってる。たださ、少し心配なんだよ。めりぃがね。いま、俺が死んだら、誰もわかってあげられないから。話したくても話せないことばかりで。だから、まだ死ねないなぁって思ってたのに、俺、ほんとバカだよなぁ。事故に遭うなんて。酔っぱらってチャリに乗って、車に突っ込んだんだよ。」
バカだな。類は友を呼ぶとはこのことだ。めりぃと友達の意味が少しだけわかった気がした。でも、憎めない。それに、初めて会った俺にまぁベラベラとよく喋る。俺と似てるんだよな。
「ユウくん、俺さ、めぇを助けちゃったんだよね。だから、天使ではいられないはずなのに、まだ天使なんだ。天使にしかできないこと。人間を神様のところへ連れて行く。あと、もうひとつ、その逆。でもそれは掟違反。天使ってさ、神様から使命を与えられてるの。めぇの時の使命は涙を止めること。で、今の俺の使命がわからなかったんだよ。でも、今わかった。」
「なに?」
「ユウくんを戻す。掟違反だけどな。」
俺は2度目の掟違反を起こそうとしている。どうせ天使やめるんだから、いいだろう。それに、ユウくんが今いなくなったらめぇはまた泣くから。涙を止める使命を与えられたのに、俺が泣かしてどうすんだって話だからな。
「天使さんさ、なんで俺が天使さんのことわかったと思う。」
「なんで?」
「見えたの。カラーで。こういうことか…」
「何が見えた?どういうこと?」
「めりぃには、小さい頃から不思議な力があるの知ってる?」
「知らない。この前、守護天使になったばっかだから。」
「めりぃがよく言ってたんだよ。めりぃね、人の後ろに景色とか色んなものが見えたりするの。それが白黒だとその人の過去で、カラーだと未来。今まで行った場所とか、これから行く場所が見えたりするの。みんなに見えてると思ってたんだけど、違うんだね。って」
「で、何が見えたの?」
「天使さんとめりぃが一緒にいた。めりぃが言ってたんだよ、さっきのを。俺、声まで聞こえたよ!」
「え?そーなの?ってことは、俺たち、会えるんだ?」
「え?」
「俺さ、天使やめて、人間になる約束をしたんだよ。めぇと。めぇの涙を止めるっていう使命を果たす前にめぇがここに来ちゃったの。天使をやめて人間になるのって、結局、堕天使なんだけど、天使だった時の記憶を消されてしまうんだよね。めぇも、俺の顔も覚えてないはずなんだ。めぇにも話したけど、会える保証はないの。」
「会えるから大丈夫だよ。めりぃさ、そんなことお願いしたの?相変わらずだな。あのこはさ、他人の人生を変えてしまうようなことを簡単に言うの。でも、めりぃの言う通りにして後悔したことは1度もないから大丈夫なんだよ。」
「そっか。なんか自信がついた。」
すると、ユウくんがいきなり手紙の話をしだした。
「もしかしてだけどさ、友達にもらった手紙知ってる?」
「飛行機にして飛ばした。」
「やっぱりな。天使さんの仕業だったか。」
「だってさ、あれ、めぇあてだと思ったんだ。あんなの見たらめぇが傷つく。また泣くだろ?この前も言ったけど…ま、聞こえてないのは知ってたけど。」
「俺さ、ずっと、めりぃには幸せになってもらいたいって思ってるんだよ。あの手紙を訳したのは、渡そうと思ったから。俺の字で。でもさ、俺、天使さんに会って、あの手紙はなくなってよかったと思った。めりぃの未来を見たから。」
どうしよう…言うかな…
「あ、ユウくん、これ、訳したやつ…」
「え?持ってきたの?あ、でもこれ、ここに置いておいて。」
「なんで?」
「なんででもだよ。」
ん?俺、いらないんだけどな。
「天使さん、お願いできる?」
「何を?」
「もし、めりぃがどんなにバカでも一緒にいてあげて、俺の変わりに。見守るだけでもいいから。」
「まかせて!俺、最強だから!」
「ありがとう。」
「そろそろ戻る?」
「そうだね。俺も、天使さんのこと忘れるの?」
「たぶん、普通はね。」
もし、堕天使になって同じ世界に行ったら、この人には絶対会いたい!
「ねぇ、いつか、また会えるかな?」
ユウくんは答えなかった。ただ、ニコッと笑っただけ。
笑うんだ?はじめてみたな、笑ったところ。やっぱりイケメンだよな。
★23★
俺、そろそろか…
ふ~
ひと仕事終えてソファーに座った。
この手紙どうしようかな…?
ん?
これは?
え?
『天使さん、俺を生かすという使命お疲れさまでした。さっき話さなかったことを言っておきたくて。未来が見えた話。あの話には続きがあるんだ。二人を見てる俺、羽が生えてたよ。すぐにわかった。きっと、そのとき俺は、もう二人のそばにはいない。だから天使さんに頼んだんだ。天使さんといるめりぃはちゃんと笑ってたから。天使さんは、この記憶がなくなってしまうかもしれないけど、俺にはその記憶は残る。今は忘れても、今日ここで話したことを間違いなく思い出す。何故なら、天使になることが決まっているから。俺こそ最強天使(笑)そして、この部屋は俺の部屋になる。このソファーも。もともと俺のソファーだけどね。だから、あの手紙は俺が持っておこうと思うんだ。この俺の部屋で。そして、天使さんとめりぃが出会ってちゃんと話をできるようになったら俺はここにくる。そう決められている。あとさ、よく聞かれることがある。天使さんにだけ教えてあげようか。めりぃを好きだったんじゃないかってこと。好きだったかはわからないけど、一度だけめりぃに結婚しようかって言ったことがあるんだよね、めりぃが大失恋したとき。俺、優しいからかな。勝手に、めりぃには俺しかいないって思ったんだよね。でも俺には未来はないのにね。めりぃは笑ってNOと答えた。そして、ユウくんは間違いなく後悔するからって。でも本当はめりぃには見えてたんじゃないかな。未来が。そこに俺はいなかった。ただそれだけ。めりぃがバカすぎて天使さんの手に負えない日が来るかもしれない、そんな時はこっそりエンジェルパワーを使うよ。間違いなく俺が二人の守護天使だから。あと6ヶ月を俺にくれてありがとう。その間にめりぃの周りはめまぐるしく変わる。俺は残りの6ヶ月を精一杯生きる。約束するよ。』
<報告書9>
ユウくんへの使命、あと半年を与えること
ユウくんは未来を知っている
そうか…
俺が堕天使になって、ユウくんは天使になる。
これって偶然なのかな?
あ…俺、もうユウくんに会えないのか…
(6ヶ月後)
「おい!めぇ!」
「なに?ご主人様?」
この二人、おもしろい!マンガみたいなやりとりばっかなんだよな。
え?俺?
天使だよ!しかもイケメンの!しかも頭もいい!そう、無事天使になったの。
俺はね、あのあと、意識を取り戻した。驚いたのは1週間も眠り続けたまま。手術に耐えられない心臓と言われながらもなんとか乗り越えた。いや、あいつに助けてもらった。掟破りばっかしてるあいつに。そう、俺が俺にそっくりな天使と会ったこと、全部覚えたまま。
と、同時に自分の残された期限も知った。何も後悔はない。
なぜかって?自分がいなくなったあと、めりぃのそばにはちゃんといるから。元天使が。
俺より少しだけ口は悪いけど、俺の何倍も優しい。だって、頼まれたからって、天使やめるか?俺は絶対にやめられない。めりぃに頼まれて出来ることと言えばせいぜい職場の部署替えくらいだな。
それに比べてあの元天使、天使やめて、人間になることを選んだんだからな…無謀だな!生きていくことより難しいことはない。その上めりぃがいる。無理無理!!今だから言えるけど、ほんと、大変だから、めりぃという生き物は。地球外生物じゃないかと思ったことも何度か…あ~!だからか。あの元天使と気が合うんだな。なんか俺、肩の荷がおりた(笑)
ねぇ、みてみて、ほら、バカみたいに遊んでるあの二人、そう、めりぃと元天使(笑)人間、いや堕天使になってもイケメンのまま。しかも、俺に似てる。若干、彼の方がイケメンかもしれないな。そこは素直に認めよう。
天使は天使らしくクリスマスにめりぃの元へ姿を現した。天国の門が開いた瞬間、彼は記憶を全て消され、ほら、あの姿になって。少しくらい覚えているのかな?俺はね、その1ヶ月後にこっちにくることが決まっていたんだ。クリスマスはめりぃの誕生日。少し遅れて、電話をすると、めりぃがね
「ねぇ、ユウくん、めりぃ、すごい人に出会ったの」
なんだか嬉しそうに話しだした。
「天使?」
「え?違うよ~!」
「誰?」
★24★
「あのね、ホスト…」
「ホスト?」
「うん、すごいの!!」
「めりさ…夜、毎日泣いてたでしょ?」
「うん、何言っても、何しても、次の日も結局泣いてた…」
「でしょ?でもね、その人がめりに言ったの!!『めぇ、泣くな!』って」
「え?あ~」
その瞬間、気付いた。
『めぇ』めりぃのことをそう呼ぶのは、世界中探してもどこにもいない。ただひとりだけ。
俺は、半年前に彼にあった。そう、そのホストこそ人間になった元天使。堕天使だ。
「ねぇ、めりぃ!その人、イケメンでしょ?」
「え?でも、めりぃのタイプじゃない。かっこいいから(笑)なんでわかるの?」
「秘密(笑)その人誰かに似てない?」
「え?誰だろ?芸能人?」
「いや?」
「わかんない」
めりぃは気付いてないんだ…
俺にそっくりなことに。きっと、神様がそうしてるのかもしれないな…
でも、今は何も言わない。
それにしても、あっという間に使命を果たしたみたいだな。無意識のうちに。
堕天使とは…
高慢や嫉妬がために神に反逆し、罰せられて天界を追放された天使、または、自由意志を持って堕落し、神から離反した天使のこと。
彼の場合、間違いなく後者だろう。
ん?めりぃが彼の背中をじっと見て聞いた。
「ねぇ、ご主人様って天使なの?」
「そうだよ!」
え?なにこの会話。
まさか二人とも覚えてる?いや、まさかな。
偶然か。
それから、この二人の呼び方、少し変でしょ?
どうやらめりぃがペットらしいんだ!なんでそうなったかは俺にはわからない。でも、二人にピッタリなんだよね。一緒にいると心が落ち着くらしい。
俺が天使になって1ヶ月してから、めりぃからメールが届いた。バカでしょ?携帯解約されてると思わない?普通。もちろん、めりぃは送信できなかった。でも俺には届いたんだ。いや、のぞきみしただけ。
『ユウくん、ユウくんがいなくなって気付いたことがあるの。ご主人様がね、ユウくんにそっくりなの。もしかして、ユウくん会ったことあるの?答えは夢の中で教えてください』
ははは。
教えてあげません!(笑)
それから、もう1通、これは、あの彼が書き残した俺宛への手紙。
『ユウくん、知ってる?天使って、ご飯食べなくても生きていけるの。でも、愛を感じないと満腹にはなれない。めぇの守護天使になった時、めぇは泣いてたの。それなのに、一緒にいるとおなかがいっぱいになった。それは、その涙の理由が愛でしかないから。でも、どうしてもその溢れ出る愛を止めたくなった。と、いうより欲しくなった。どんな形でもね。きっと俺にしかできないと思う。ユウくんがめりぃには俺にしかいないって思ったように、たぶんめぇには俺しかいないって思ったから堕天使になろうって決めたんだ。ユウくんに未来がなかったんじゃない。俺がわざわざ天使っていうラクな仕事を譲ってあげることにしたの。でも、最強な俺でも手に負えなくなる時がくるかもしれない。その時は、どうか少しだけ手伝って。めぇの大変さを一番わかってるのはユウくんだから。それから、めぇがユウくんのことを忘れることは決してないよ。俺がそばにいる限り。そういう風にできてんの。それから、俺は、天使だった記憶を消されて堕天使になっても、天使になってると思う。めぇにとったらだけどね。』
俺、幸せだな。
めりぃは、堕天使、めりぃにとっての天使が現れるまで、本当に毎日泣き続けていた。
それが、天使さんがめりぃを見つけるための合図だから。めりぃは無意識だったけどね。
あ、ほら!二人がまた話してる。俺はもう、疲れたからソファーで休むことにする。
あとは勝手にどうぞ。
「めぇ、なんで、俺をご主人様に選んだの?」
「声が好きだから。」
「それだけ?」
「約束したから。めぇって呼ぶのは、少し口の悪い天使だけ。その天使が現れたら、めりぃの涙は止まる。そう決まってたから。」
「え?めぇ!覚えてんの?」
「え?記憶消されてないの?」
「ほら、涙止めただろ?これからはご主人様の前だけで泣け!」
「なんで?」
「なんででも。」
そう、神様にもできないことがある。俺は最強天使だから、神様よりも強かったという事実。
俺にはどんな掟も通用しない。掟なんてはじめからあってないようなもの。
俺は、この世界を楽しむ。
そして、毎日、おなかはいっぱい。そう決まっている。
☆MeRRy☆