真剣購入の旨を先生にご報告 | 千日の鍛、万日の練

千日の鍛、万日の練

2019年7月より居合の道に入った男。
ろくに運動経験もないにわか初心者が、
無双直伝英信流を学びながらどう成長し居合の道を歩むのか。
誤った知識や戯言も含めて成長を振り返るための一日記。

12月15日、日曜日。

この日の稽古は、買ったばかりの真剣を持って道場へ。

と言ってもいきなり稽古に使う気はない。

先生へ購入報告をするためである。

 

普段通り模擬刀で稽古するが、この日の先生は一向に着替える様子もなくじっと座って無言で稽古を眺めておられた。

体調でも悪くしているのだろうかと心配に思いながら稽古を続けていると、1時間ほど経ってからようやく先生が立ち上がられた。

 

近くに来られたので、満を持して真剣購入の報告をする。

 

すると、今までの元気がない様子が嘘だったかのように明るくなられた。

他の門人も近くに呼び、私の刀をみなさんに見ていただいた。

代わる代わる私の刀を手に取り、手持のバランスがとてもいいと褒めていただけた!

拵えも綺麗だしバランスも良いし、値段に見合ったいい買い物をしたねと言われ内心かなりほっとした。

 

そして驚くことが判明!

私が買った刀は、昔先生の刀を注文打ちした刀匠のお弟子さんの作であることが分かったのだ。

先生が注文打ちを頼んだ刀匠の弟子の刀を、先生の弟子である私が買った。

こんな偶然があるだろうか?

この刀が私の中で一気に、なんとも縁を感じる一口となった。

いずれ別の刀を買うこともあるだろうが、この刀は下取りになど出さずに後生大事にしていきたい。

 

まだまだ未熟者ですが、いずれこれを稽古に使いたいです。

と言うと、先生含め他の門人の方々も口々に、

いやいや、せっかく買ったんだから早くその刀に慣れないと。すぐにでも稽古に使えばいいんだ。

と仰る。

 

流派によっては、真剣での稽古は一定段位を取ったあとしか許されないところもあるだろう。

当流にはそういった決まり事は特になく、

怪我をしたとしても、それは自分の未熟なところを刀が教えてくれてるんだよ。

というような考え方。

 

刀剣店の店主もこんなことを言っていた。

昔の人たちが稽古するときに模擬刀なんてなかったでしょう。

わざわざ刃引きの刀で稽古してたとも思えないし、真剣で稽古するのが一番じゃないですか。

道場のルールで3年間は真剣を持てないというのがあって、3年たってから真剣を買った女性のお客さんがいましたけど、3年におよぶ模擬刀での稽古に慣れすぎていざ真剣を持つと怖くて納刀ができなくてやめてしまった人がいます。

 

言われて目からウロコである。

安全面を考えれば模擬刀で稽古するのがいいに決まっているのだが、確かに江戸以前に模擬刀で稽古していたとは思えない。

十分に模擬刀で慣れてから真剣を持つという考え方は非常に合理的だと私は思うのだが、いざ真剣を持つと怖くて稽古できなくなる人もいるのだと思うと何事も一長一短なのだなと思う。

 

ともあれ、真剣での稽古のお許しも出たので、「それでは年明けの道場開きでおろすことにします」と申し上げた。

「それはいいね!」と先生も仰ってくださり、この日の残りの稽古では私の刀をチラリと見ながら、「これから楽しくなりそうだね」と先生が嬉しそうに言ってくださるので私も嬉しい気持ちになった。

この日は稽古前から頭痛があり体調がよくなかったのだが、他の門人の方々も、「いやー、やる気に溢れてるね!素晴らしい!」と嬉しそうにしてくださって、いい道場に入門したものだと思うといつのまにか頭痛もやんでいた。

 

ちなみに今回買った刀は現代刀だが、それも選択肢として間違っていなかったと思う。

美術価値や骨董価値で刀を愛好する方々は現代刀を低く見るどころか、現代刀など刀ではないなどと過激なことを言う方もいる。

しかし私は現代刀の精悍な趣が大好きだ。

古刀のような味わいがなく見ていて飽きるとも聞く。

私には精悍に見えるが、他人から見れば面白みがないと映る、そんなものは好みだ。

熊本の現代刀匠一門である赤松太郎の地鉄なんかは、私は見ていてため息が出るほど美しいと感じる。

よく詰んだあの地肌を見ていると引き込まれてしまう。

とにかく、刀剣趣味の界隈というのは極論の激しい世界なので、過激な意見を鵜呑みにしないように気を付けたほうがいい。

 

私個人の考えとしては、こと居合に関しては刀身の健全さに対する価格面で見ても現代刀が最適だと思う。

それに古い刀で拵えも古いものを居合に使うとなると、歴史を生きてきた刀や拵えを傷つけてしまう可能性がある以上、勿体ない。

その場合、現代拵えを新調して使った方がいいということになり、またまた10万を超える出費になる。

現代刀や現代拵えなら傷つけてもいいという話ではないのだが、どの時代でも、実際に酷使されてきたのはその時代の現代刀だ。

 

さて、私と同時期に入門したE剣士。

なんと、私が刀を購入した直後に、同じ店に足を運んでいたらしい(笑)

これもこれでなんという偶然だと思ったが、私が購入したことでE剣士もかなり背中を押され様子で、「稽古が終わったらまた行ってみようかな・・・」とつぶやいておられた。

稽古が終わって帰宅後、いい買い物をしたと褒められましたという報告の電話を店に入れ、ついでに探りを入れてみると、E剣士がちょうど来店しているとのこと(笑)

その方は私と同門で、私が買ったことでかなり背中を押されているはずなので、よければ勉強してあげてくださいと電話先の店員に伝えておいた。

来週の稽古にE剣士がニコニコ顔で真剣を持ってくるのが楽しみである。

 

今後も一層、改めて気を引き締めなおして居合の道をいざ歩まん!

 

日々、精進。