買いました。日本刀。
ここ数か月色々と調べて、入手手段別の相場なども見てきた。
ネットオークション、刀匠への注文打ち、刀剣店で購入(通販専門or店舗販売)。
入手手段としてはだいたいこれくらいある。
ネットオークションは、格安で刀が手に入る可能性がある。
10万20万で落札できそうなものは状態も悪く、拵え付で目を引く刀ともなると結局店で買うのと変わらない値段になったりする。
店で買う値段と変わらないなら、オークションで買う利点などほぼない。
オークションの実情を調べてみればみるほど、偽銘に溢れ鑑定証すら偽物だったり、リスクのほうが高い。
刀匠への注文打ちは、長さから何から自分の好みに合わせて注文できるのが強み。
居合向けに打ちおろしている刀匠だと、安く見積もって60万ほどで注文できる。
ただ、せっかくの注文だからと拵えもある程度こだわりだすと、軽く80万から100万ほどはかかる。
結構な額になってしまい、納期も半年から1年かかる。
出来上がったものが多少思っていたものと違っても納得するしかないことも、なかなかに勇気のいることだろう。
通販専門の刀剣店は、店舗売りよりも比較的廉価だ。
だが言うまでもなく、実物を手に取って見ることはできない。
クーリングオフの制度を設けていることがほとんどだが、買ってはクーリングオフを繰り返すなどは現実的には無理があるだろう。
ここまで紹介した刀の買い方3種類に共通すること、それは
「手に持って比較しながら実物を見て購入検討することができない」
ということである。
居合向けの刀はやはり手持のバランスは非常に大事だ。
同じ刀匠の刀ですら、実際に手に持って比べてみればバランスは随分と違う。
やはり、一番いいのは店舗売りの刀剣店に足を運ぶことだ。
(ここからは購入レポートとなるので少し長いです)
ということで、気になっていたお店へ足を運んできた。
正直に言うと、以前にメールで問い合わせた店の返信のように、こちらを小馬鹿にしたような態度をされたらと思うと身構える気持ちはあった。
ネットでも嫌な思いをしたというような内容はよく目にするし、そこは心配ではあったのだが・・・。
いざ入店してみると、店員に気持ちよく挨拶で迎えられ、
「気に入ったものがあれば手に取ってご覧いただけますからまずはぐるりと見て回ってください」
と、ずらりと並んだ刀を眺めて回った。
居合に使う刀を探していることを伝えると、丁寧な説明を交えながら、店員が見繕った刀を色々と持たせてもらった。
手持バランスの違いを見るために参考にどうぞと、およそ居合に使うには高すぎるような刀も持たせてくれる。
何口も持たせてもらって分かったことは、やはり実物を手に持ってみることは非常に大事だということ。
刀身のバランスはもちろんのこと、鍔の重さや柄の長さなどで驚くほどバランスが変わる。
いくつか店のサイトにアップされていた画像も見ていたが、実物を見ると印象もやはりかなり違う。
画像だけで判断して刀を買うことが相当難易度の高いことなのはすぐに分かった。
そうして比べていった結果、最終的には2口が候補として残った。
価格は48万と52万。
40万位内で買いたいと思っていたので、予定より少し高い。
居合向けの刀は30万台近辺で探すのがベストだと思うのだが、この店で扱う刀は居合向けと勧められつつも刀身の状態が非常によいものばかりだ。
ネットで色々見てみると分かるのだが、30万近辺の居合向けの刀というのは結構、疵などが目立つものが多い。
かといって、やはり少し高いなと迷っていると、接客が店主に変わり「別室で振ってみますか?」と。
これには驚いた。まさか振らせてもらえるとは思っていなかった。
そして実際に振ってみると、手持バランスの感覚は似ているのに振り心地となるとこれがまた全く違う(笑)
52万の振り心地と言ったら文句のつけようのない振りやすさだった。
実は48万の方は一か所だけごく小さな刃毀れがあり、ハバキも二重ハバキだったのでそこがひっかかっていた。
二重ハバキは拵えとしては高価で立派なものなのだが、居合に使う場合は抜き差しを繰り返すので一重ハバキのほうが良い。
振ってみたことで、これは買うとしたら52万のほうだなという気持ちに固まった。
さてあとは心を決める作業になるわけだが、ここからはしばらく、店主からいただいたお茶を飲んで一緒にタバコを吸いながら、色々な話をした。
やはり、刀剣店というのは殿様商売の体質がいまだに残っていて、一部の店では初心者や居合をやっている客をかなり下に見る傾向がどうしても強いというのは店主の談。
店主も若かりし頃、刀剣店に入ると奥からギロリと睨まれ、ろくな接客もなく奥に通されることもなかったというような体験があるらしく、当時たしかに金もあまりなかったが、悔しかったので入り口近くで一番安い22万の脇差を見てすぐに金をおろして戻り、どうせ買わない客と見下してなめてんじゃねーぞという気持ちを込めてその場で現金で買ったことがあるそうだ。
今にして思えばなんの意味のないことをしたと思うとも言っていたが、そういう経験もあって、この店では初心者でもどんどん刀を手に取ってみてもらって、目を肥やしていってもらいたいという気持ちがあるのだそうだ。
斜に構える癖のある私としては、上手なセールストークだなぁとも思いもしたが、ここまでの接客で嫌な思いは全くないし、実際、居合向けを探しに来た初心者の私に懇切丁寧に接客をしてくれているうえに刀を振らせてくれさえした。
ここからは本格的にセールストーク。
今は既存客の持ってくるハガキで5%割り引いている特別期間だが、あなたも特別に5%ひきましょう。
カードではなく、手付1万だけ今日出していただいて、後日残りを現金で支払うか振り込みしてもらえるならクレジット手数料分も割り引けるのでそれも割り引きましょう。
そうすると税込み48万、更に手入れ道具一式と刀袋、下げ緒も新品をサービスしましょう。
これは今日だけの特別サービスです!
今日だけというが、さすがにこのへんは既定路線のトークだなと思いつつ、値引きとサービスを引き出せはしたのでこのへんで手打ちだろうということで購入を決意。
今後の付き合いも考えて気前のいいところを見せておこうと思い、すぐに現金48万を近くでおろしてキャッシュ一括で購入した。
支払いが終わったあとは、手入れ方法を丁寧に実演で見せてくれた。
3か月に1回くらいは展示即売をやっているので、次は買わなくていいので勉強のために色々見に来てくださいとのこと。
入店前は身構えていたが、思いのほか気持ちのいい接客で満足な買い物ができた。
若干想定した予算よりは高くついたが、散々ネットで見てきた刀はどうしても傷など気になったり拵えに気に入らない部分があったり、どこかしらに惜しい部分があった。
今回買った刀は砥ぎも鑑賞砥ぎが施されており、刃紋は互の目、地鉄は詰んだ小板目で十分鑑賞にも耐えうるレベルで美しい。
初めての刀としては、ずいぶんと満足のいくものが買えたのではないかと思う。
さて、実際に店に行って大事だと思ったこと。
それは、最低限の勉強はしていったほうがいいということ。
刀の部分名称や用語、鑑賞の仕方、ある程度の相場知識。
特に刀の鑑賞の仕方は大事だと思う。
はっきり言って私は刀の見方などまだ何も分かっていない。
だが、じっくりと地鉄を見て、光にかざして刃紋を見て、砥ぎ痩せがないか棟を見て。
見たからと言って何も分からなくてもいい。
む、このお客さん、よく刀を見ようとしてるな、刀が好きだな。
はったりでも、そう思わせることが大事に思った。
初心者らしい控えめな態度はとりつつも、知識だけはそこそこあることを見せる。
下手な知識をひけらかしにかかるのではなく、それなりに勉強はしてますよというところだけうまく見せる。
そうすると、店側のトークの節々にその効果が見えるのだ。
刀の見方を見ていると、刀が好きなんだなということがよく分かります、とか
よく勉強されているようなので、本音を言うとこれは~とか。
店員と購入手続きしているときなどは、店主が他の常連客と思われる客に向かって、
こちらの方なんかは初めてのお客さんで初心者ってことだけど、相場もよく知ってるしそういう時代だから下手な値段で商売はできないよ~
なんてことも言っていた。
とりあえず、店に入ってみて店員の態度が気にくわないようならもうそこへは行かなくていいと思う。
気持ちのいい店はちゃんとある。
刀と太刀というのは何が違うんですかなんていう質問をしている客もいたが、それにも丁寧に答えていたし、全くの無知識でもちゃんと接客してくれる店はしてくれる。
店舗売りの店は、店舗コストや人件費も当然刀の値段に乗るため若干割高にはなりがちだが、話を聞きつつ実際に目で見て手に取ってたくさんの中から比較検討ができるので、こと居合向けの刀を買う点では店舗買い一択だという考えになった。
さあ、この刀を稽古におろすのはいつにするかというところだが、そのへんは先生に購入報告をしてじっくり考えていこうと思う。
日々、精進。