今日は農林水産委員会で質問に立ちました。今回、委員会審議に付されたのは「株式会社農林漁業成長産業化支援機構法案」(ファンド法案)です。

▼衆議院農林水産委員会(第17委員室)

ファンド法案は、農林漁業者が付加価値の高い商品を開発する、あるいは販路を拡大するような場合に、パートナー企業やファンドから資本を調達するためのスキームをつくるための法案です。

ファンド法案が成立すれば農林水産漁業者が新規ビジネスをどんどん展開して、農林漁業経営は安定・向上するのでしょうか。

そこで今日の質問では、ファンド法案が本当に農林漁業者のためになる法案なのか?実際に農林漁業者が出資金を集めてうまく新規ビジネスを展開できる仕組みとなっているのか?そんな観点で40分の質問に臨みました。

郡司農林水産大臣と佐々木副大臣の答弁を聞いてはっきりしたことは、法案が絵に描いた餅であるということでした。

例えば、牡蠣養殖業のAさんが、新たな牡蠣の加工品を開発・製造・販売するのに総額4千万円の事業を計画するとしましょう。

Aさんには投資に回せる資金として手元に1千万円ありますが、これでは単独で事業を行うことはできません。そこで水産加工会社のBさんを説得し1千万円の出資を持ちかけます。

Bさんが事業の成功を見込み、Aさんの出資要請を承諾すれば2千万円の資本金ができます。2人して残りの2千万円の資本を工面しなくてはなりません。

ファンド法案が成立すれば、AさんとBさんは支援機構と地域ファンドから1千万円ずつ出資を受けることができるとの説明ですが、実はこの仕組みが「地域ファンド」の存在を前提にしているところに農林水産省の見通しの甘さがあります。

農林水産省の説明によると、地域ファンドは地方自治体、農協、漁協、地元の金融機関などが出資するファンドだと言います。

これまで全国の多くの自治体は第三セクター等への出資で痛い経験をしています。農協、漁協、金融機関も事業に出資するよりは、融資の方がいいに決まっています。では一体誰が地域ファンドに出資をするのでしょうか。現在そもそも全国のどこにも地域ファンドなるものは存在していません。

先ほどの牡蠣製品の開発・製造・販売に意欲を燃やすAさんとBさんは、残りの2千万円を調達する際に、支援機構への申請窓口として誰を頼りにすればいいのでしょうか。

わざわざ法律を作って支援機構を設立させて、300億円の予算を計上しても、地域ファンドが全国各地になければ農林漁業者は、いくら新しい事業を計画しても、出資を相談・申請する窓口すらないことになります。
限られた質問時間の中で郡司大臣と佐々木副大臣にこの大事なポイントを何度も何度も問い質しましたが、彼らは農村・漁村の生産者を取り巻くビジネス環境を全く理解していません。

支援機構を作れば、タケノコのように地域ファンドが全国各地に立ち上がり、現在1兆円の6次産業市場が10年後に10兆円になると言っているのは、まさに絵に描いた餅です。

実は、自民党はこの法案が本当に農林漁業者の経営安定化に繋がるスキームなのかどうか、昨年の暮れから何回も何十回も勉強会を開いて調査・研究を行ってきました。

この勉強会では、財務金融が専門の自民党議員も参加した中で、関係団体からヒアリングを行い意見を聞き、政府提出の法案の問題点を徹底的に洗い出した上で、自民党としての修正法案を本日の農林水産委員会で修正法案を提出しました。

結局、自民党が提出した修正法案は農林水産委員会で全会一致で採決され、そのまま午後の衆議院本会議に緊急上程・可決されました。

参議院で可決されれば、ファンド法案は成立しますが、農林水産業者が主体性をもって合弁事業者の経営にたずさわり、自らの経営の安定・向上にファンドを役立てることができるように、法律の運用段階に入ってもしっかりと検証して参りたいと思います。

▼熱心に傍聴していただいた中春別酪農対策協議会の皆様ありがとうございました