弁護士にとって一番困ること | 石橋法律事務所のブログ

弁護士にとって一番困ること

弁護士にとって一番困ること、それは、依頼者の方が自分にとって不利な事情を隠し立てしてしてしまうこと、である。



これをされると本来勝てるはずの訴訟も勝てなくなるし、免責を受けられるはずの破産手続もうまくいかなくなる。



例えば、破産するといっても、身ぐるみを全部剥がれるわけではなく、自由財産といって破産する方が手元に置いてもよい財産の範囲が法律で定められている。



破産の申立てに慣れている弁護士であれば、法律の規定に加えて、各地の裁判所の運用などを踏まえて、依頼者にとってできるだけ(運用上許される範囲内で最大限)、手元に置いておける財産が多くなるように工夫して申立をする。



ところが、依頼者が財産をとられるのではないかと危惧して、持っている財産を依頼している弁護士に明らかにせず、弁護士としても知らないまま申立をした後になって、隠し財産が発覚、となると、その財産はほぼ全額手元には残らないことになる。



今年は、依頼者の方がきちんと伝えるべきことを伝えていなくて、後から困った事情になった、ということが結構あった(最たる案件では、結果として依頼者が数億円の支出を迫られることになった)。



もちろん、そうなった原因として、弁護士が依頼者と信頼関係を築けていなかったからだ、とか、聞き方が甘いからだといった誹りは免れないかもしれない。



ただ、依頼者の方にあまり根掘り葉掘り聞いてしまうと、「こちら側の弁護士なのに、まるで、検察官に取り調べを受けているみたいだ」とか、「私のことを信用していないのか!」なんてお怒りの言葉をいただいてしまうこともある。



そんなわけで、多くの弁護士は、ほとんど職業病的に、依頼者の説明を100%丸呑みすることはできないと思う。



仮に、依頼者のいうことを100%丸呑みして、言われたままに主張や証拠を出す弁護士がいたとすれば、それこそ無能な弁護士だろうし、訴訟に勝つこともできず、依頼者にとって満足のいく結果を得ることができないだろう。