九州の南端に住んでいます。
子どもたちは首都圏に住んでおり、独り暮らしです。
唯一の兄弟も首都圏に住んでいます。
そんな方が病気になってしまいました。
どこの病院に入院して検査・治療を受けようか?
独り暮らしでは地元の病院では不自由なのではないだろうか。
子どもたちや兄弟の住んでいる首都圏の病院がよいのではないだろうか。
東京の大きな病院の方が検査設備も整っているし、
最先端の治療が受けられるのではないだろうか。
迷いに迷い、東京の病院に入院する決心をしました。
2ヶ月前、東京の病院に入院しました。
入院して3日目。
「地元の病院に入院したい。」と思うようになりました。
しかし、検査・治療は始まったばかり。
検査・治療が一通り終わるまでは、東京で入院しているしかない。
検査・治療の時以外は、病院で何もすることがない。
病院の天井を見ていると憂鬱になってしまう。
「とにかく、東京の病院は暗くて冷たい。」
悪性の病気です。
病状が徐々に悪くなってきました。
食欲がない。
身体がだるい。
治療はもう終わりました。
もう治療の必要はありません。
主治医から「移動の途中に危険な状態(死)になるかもしれないが、
今なら地元の病院に転院できる。」と言われ、地元の病院に転院することになりました。
九州の病院です。
病状から飛行機での移動は危険ということです。
まだ、陽も上らない暗い時間に病院を出発です。
始発の新幹線で九州を目指します。
病院ではトイレ以外はベッドに横になっています。
身体がだるい。
両下肢が浮腫んでいる。
病院を出る時、険しい表情です。
口数も少ない。
ただ頻回に「看護師さんは好くしてくれたけど、東京の病院は暗くて冷たかった。」と
仰います。
長時間座っているのは辛い。
でも、九州に行きたい。
新幹線内では背中と両下肢のマッサージをしながら九州を目指します。
やっと、博多に到着です。
まだまだ、予定の半分の時間です。
博多からは車での移動です。
途中、休み休み、マッサージをしながら病院を目指します。
車に乗り6時間、やっと病院のある地域に着きました。
表情がどんどん明るくなってきます。
口数も多くなってきました。
病院に着き、看護師さんから地元の言葉で声をかけられました。
温かみのある、ほっこりとした気持ちにさせられる言葉です。
その言葉を聞いた途端、声を出して泣いてしまいました。
今まで、2ヶ月間、我慢していたものが一気に溢れ出ています。
「11時間かけて、ここまで来て好かった!!」
「東京の病院が暗くて冷たい。」
それは、地元の心温まる方言に慣れていた方にとって、
よそよそしく聞こえる標準語に絶えられなかったのです。
決して新しい病院ではないけれど、病室は、とても明るかった。
そして、目の前には鹿児島のシンボルの桜島が見えました。
「あ~、ここは明るい。11時間かけて、ここに来て本当に好かった!!」
長旅で疲れているにも関わらず、笑顔です。
「今晩はゆっくり眠れそうです。」
愛を感じることのできる在宅看護が私たちの使命です。