◆【お客様の依頼内容】
ハードディスクの空き領域が少なくなってきたので、空き領域を増やしてほしい。また、パソコンの動きも遅いので速くしてほしい。音楽データがたくさん入っているが、それらは仕事で使っているので削除しないで欲しい。
SONY製ノート、Windows Vista Basic、CeleronM_1.7GHz、1GB、100GB、DVDマルチ。
◆【お預かり時の現状】
OSがVistaということもあり、システムフォルダが25GB、プログラム系が10GB、リカバリ領域が10GB、そこに約7500曲の音楽ファイルが35GB、その他のファイルが10GB、空き領域が10GBとなっていました。
◆【最初のお見積りが間違いの発端】
結論を言うと、最初の見積りが失敗しました。目算としては空き領域を20GBまで拡大可能と考え、見積額も7,000円ぐらいとお伝えしました。
◆【まずは物理メモリを1GB→2GBに増設】
タスクマネージャの数字から判断して、メモリ1GBでは足りないことがわかっていました。Vistaは基本的に、メモリ1GBではまともに動作しません。こちらは何の問題も無くスムーズに増設完了、Vista特有の動作のもたつきが解消しました。
◆【思うように作業が進まない】
しかし、Vistaのサービスパックは1で、SONYパソコンにプリインストールされているアプリケーションもバージョンが古く、このあたりをアップデートした時点で空き領域が8GBになってしまいました。空き領域を開けようにも、Vistaのシステムフォルダ(winsxsフォルダ等)を安全に削るノウハウはありませんし、音楽データは消せませんし、リカバリ領域(隠しパーティション)を消したところでCドライブの空きが増えるわけではありません。なんとか元の10GBの空きを確保したものの、「作業しましたが空き領域が増えませんでした」というわけにもいきません。
◆【外付けHDDに音楽を移動したら…】
そこで、160GBの外付けHDDに音楽データを退避することで、Cドライブの空き領域を確保することにしました。これによりCドライブの空き領域は45GBとなり、今後の音楽データの追加の際は、外付けHDDに記録するようにアドバイスすることにしました。
◆【外付けHDDはデカいので無理と言われる】
外付けHDDはポータブルタイプで、手のひらに乗るくらいの大きさであるにも関わらず、「そんな機械を付けたままでは使えない」と断られました。これで料金は17,000円程度になる見積りだったのですが、別の手段を取る必要性に迫られました。
◆【再び空き領域を確保するために…】
音楽データ35GBはiTunesによって管理されていて、よく見ると同じ曲が複数入っていることが多く、数字上は7500曲に見えて実際は4500曲程度、それ以外は全て重複データでした。そこで、意地でも空き領域を確保するために、重複している曲を一つ一つ探し出して削除していくという途方も無い作業を開始しました。アーティスト別にフォルダ分けしてあるので、この作業だけで7時間程度かかりました。
◆【空き領域は確保できたが…】
ようやく空き領域が25GBになりましたが、お客様(カクテルバー経営)のお話によると、「お客さんの持ってきた音楽CDをパソコンに取り込んで店内で再生することで、お客さんが自分の大好きな曲を聴きながらお酒を飲める」ということを思い出しました。ふとiTunesを起動してみると、店の常連客毎に多くのプレイリストが作成されていて、その中の一曲をダブルクリックしたところ「元のファイルが見つからない」というエラーが…。
◆【内蔵HDDを100GB→新品250GBに換装】
いま考えると、最初からこれをやってさえいれば、苦労しなくて済んだものと思います。中のデータ約65GBをイメージとして吸出し、HDDを250GBに換装したのちデータをイメージのまま戻す、これだけで作業完了としても100点満点中の80点はいくでしょう。しかし、お客様のコスト負担削減を考えるあまり、この手段をあえて採用しなかったのがもう一つの失敗でした。この作業ではリカバリ領域を消すことになるので、あらかじめ元のHDDの状態でリカバリDVDを作成する手順も踏みました。
◆【空き領域の確保に成功】
HDDを250GBに換装したことで、問題の空き領域は一気に185GBにまで増えました。残る問題はiTunesのプレイリストの不整合のみとなりました。
◆【音楽データが重複していた原因】
バーに訪れるお客さんが持ってくるCDがかぶったり、ファイル形式の変換などの際に、音楽データが重複してしまいます。さらに、複数のお客さんがパソコン内の音楽データを好き勝手に自分のプレイリストに登録していくため、データが重複した上にプレイリストの複雑なリンクが張り巡らされていた状態となっていました。
◆【iTunesライブラリの総チェック】
良かれと思って重複データを削除したのが大失敗となり、プレイリスト内の約60%の曲が「元のファイルが見つからない」状態になってしまいました。Windowsのショートカットに例えると、ショートカットだけあって、リンク先が無い状態、この約3000個のショートカットを手動でリンクしていく作業を想像すると、頭から血の気が引きました…。
◆【約束の時間に間に合わない】
2日ほど時間をいただいたのですが、約束したお渡しの時間に間に合わず、かといって「まだ作業が終わりません」と言うわけにもいかず…約束の時間にお客様が来店されたのですが、まだ作業が終わっていないことをお伝えすると、「それなら連絡してくれれば来なくて済んだのに…」と。ごもっともな意見で、私の優柔不断が原因で、クレームになってしまいました。正直に現状をお話し、作業が完了し次第ご連絡するということでなんとかご容赦いただきました。
◆【翌日の夕方に作業完了】
ようやく作業がひととおり完了した段階でお客様からお電話があり、「中間報告の一つも無いのか」ということで、またもやクレームになってしまいました。中間報告は必須ではないと考えますが、あったほうがお客様も安心できるのは確かです。「当店が20時で閉店するので、その後にお届けに上がります」とお伝えしたところ、「パソコンが無くて困っているから、できるだけ早く持ってきてください」と言われてしまいました。
◆【請求額をどうするか?】
全ての作業を合計すると20時間以上かかっていて、その中で私の過失による作業時間を差し引いても8時間程度はかかっています。部品代としては1GBメモリ(4,600円)、および250GBハードディスク(7,800円)の代金もあります。妥当な請求額は25,000円あたりになりますが、これをあえて12,400円(部品代のみ)と設定しました。手間や技術料を考えると当然ながら大赤字ですが、残念ながらこのお客様の修理依頼を今後受け付けないという意味での値段設定です。
◆【納品】
見積り時の「え、7,000円ぐらいだったのでは?」というのを指摘されましたが、「修理というのは何が起こるかわかりません。当店は初期の見積額以上の請求がくることはほとんど無いですが、今回は特殊なケースです。この金額(12,400円)は部品代のみで、作業にかかった手間賃や技術料は一円も請求していません。」とお伝えしました。「人間いろいろ行き違いはあるとは思うけどね、申し訳ないけど、もう二度とおたくに修理を頼むことはありません。」と言われてしまいましたので、こちらとしても「私も依頼を受け付けることはできません。」とお応えしました。
今回の件は、当店のクレーム対応の中でも、最もダークな部類に入る件です。たいていのクレームには誠心誠意対応し信頼回復に全力を尽くしますが、それでもお客様と歯車が噛み合わない場合のみ、同じように誠心誠意努力した上で、その後のお取引をご遠慮いただくことがございます。見苦しい日記で申し訳ありませんが、当店にもクレームというものがあることと、それに対して可能な限り努力していること、このあたりをご理解いただければと思いまして日記といたしました。
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実作業時間...約22時間。料金...12,400円。(物理メモリ代:4,600円、ハードディスク代:7,800円、メモリ及びハードディスクの換装工賃:0円、データ救出及びデータ復元の技術料:0円、リカバリDVD作成料:0円、各種メンテナンス料:0円)