嘘はつきたくありませんでした。

だけど、
それと同じくらい逃げたい気持ちもありました。


頭の中で葛藤しましたが


追い込まれてしまった私は
やってはいけない事をやってしまいました。



検査はせず、
検査薬をトイレの水につけました。



そして、
彼がすぐ近くで待っていると思い、
あたかもトイレをしたかのように
自作自演までしました。


嘘をつくことを選択してしまいました。


トイレの水なので
検査薬は当たり前に陰性でした。



私はその検査薬をその場に置いたまま
トイレを出てすぐに洗面所で手を洗っていました。


すると背後に彼が来ました。


嘘で固め、最低なことをした後だったので
彼の顔が見れませんでした。




結果見てもいい?
まなつちゃんはもう見た?




私は無言で顔を横に振りました。



彼はトイレへと入っていきました。


その間に私はリビングのソファーに座り
待ちました。


トイレから出てきた彼は
検査薬を握りしめたまま
私の隣に座りました。




ふぅー…




彼は大きく深呼吸をしました。




見るよ?




………、




結果がわかっているだけに
何も答えられませんでした。



彼は握りしめた手を開けて
検査薬を見ました。









………陰性か…





心の中で何度も
「ごめんないごめんない」と言っていました。

それと同時に
「どっち道陰性なんだから」


自分に都合よく言い訳する自分を
最低だと思いました。




約束やもんな…
陰性やったら別れるって、、




そう自分に言い聞かせるように言う彼の目からは
今にも涙がこぼれ落ちそうでした。