「王国で殺して」観劇 | 10月の蝉

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今日はユニークポイントさんの「王国で殺して」を観劇してきた。

昼の部の山田愛さんバージョンと、夜の部の西山仁実さんバージョン。

初演は愛さんだけだったので、どうしても西山さんのバージョンも見たくて、思い切って1日で両方観た。

観てよかった。

穴の会のメンバーが来ていたので、夜の部を待つ間にお茶会をして考察をいっぱい話した。

なにしろ重たい話で、初演の時は鈍い衝撃が残ってしまい、けっこうしんどかったのだが、今回はそれについて他の人の感想も聞けたのがよかった。

 

とある新興宗教を信じている女性の子ども(小学4年生という設定)が夜遅くに事故にあって病院へ運び込まれた。連絡を受けた女性が病院に駆けつけると、医師から手術の同意書にサインするように求められる。タイミングとしては手術する直前みたいな感じで、もう少し女性が来るのが遅かったら先に手術を始めていたところだった。

医師は当然のようにサインを求めたんだけど、女性はその手術に輸血が必要かどうかを聞く。

かなりの大けがだったのでもちろん輸血は必須だと医師が答えると、なんと女性は輸血を拒否する。輸血しないで手術するように頼むのだ。

ここから、なんとかサインをもらおうとする医師と女性の攻防が始まる。

女性は信仰上の理由で頑として輸血を拒む。それを説得しようとする医師。

手術担当の医師は子どもの命がかかっているのでジリジリしてサインを待っている。

女性の元には、宗教団体のメンターらしき男性がやってきて、サインしないように言う。

 

初演の時はひたすら、イライラモヤモヤしてしまった。母親である女性の頑迷さとか、理屈が通じないもどかしさが場を支配していて、子どもの命と信仰を天秤にかけるやりとりがやりきれなかったのだ。

今回は母親役がダブルだったのだが、役者が違うとこんなにも印象が変わるのかと驚いた。

追い詰められて視野狭窄に陥った母親が宗教にすがるというのは同じなのだが、そのはまり具合に違いがある。愛さんバージョンだとかなり深くはまっていて、心情の揺れも小さい。その分頑迷さが増していて、話が通じない怖さが引き立っているような気がした。

西山さんバージョンはかなり気持ちが揺れている。頭では信じているんだけど、体はまだ信じ切れていない感じ。その分生々しくて、観ててドキドキしちゃった。

 

すごいなと思ったのは母親を取り巻く男性陣。医師の二人とメンターの男性。

同じセリフ、同じ展開なのに、リアクションが全然違うし、その結果お芝居全体の雰囲気すらも違っていた。相手が変われば反応も変わるというのは実生活では当たり前のことなんだけど、お芝居だとそれをきちんと表現するのは難しい。

でも、ユニークポイントの役者さんはいつだって舞台上できちんと生きているので、どこがどうということもなくちゃんと反応が違っているのだ。

だから同じ台本でも全然別の面が立ち現れてきて、観ていると実にさまざまなことを考えてしまう。考察を語り合っているときでも話が尽きなかった。他の人の視点を聞くのがとても新鮮で、それに触発されてさらにいろんなことを考えてしまう。

とても贅沢な観劇だった。