たった1館の上映から始まった自主制作映画という肩書きが、ちょっと「カメラを止めるな!」を想起させるわけですが。
あまりの面白さに、一気に全国拡大だそうで、私の住んでるところでも上映してくれるようになりました。ありがたや。で、観てきましたよ。
上映時間が2時間11分だったなんてちょっと信じられないくらい、引き込まれてあっという間に終わった感じがします。とにかく面白かった。
いろいろ考えるネタをくれたので、ちょっと考察しつつ振り返ってみようと思います。これ、DVD出ないかなあ。出たら即買いですな。
幕末のある一人の侍が現代にタイムスリップする。
タイムスリップはよく使われる設定なんですが、この映画の面白いところは、タイムスリップした先が、時代劇の撮影所だった、というところだと思います。
東映京都撮影所、太秦映画村。その時代劇のオープンセットにタイムスリップしてくるわけです。
5月に旅行したときに太秦映画村へ行って、オープンセットも見学してきたのですが、ほんとによくできてる場所なんですよね。建物の高さだとか、路地の感じとか。見学で行ってるのに一瞬時代劇の中に迷い込んだのかと錯覚してしまうのです。
タイムスリップものって、だいたい「場所の違和感」が最初に来るんですよ。なんだここは?ってなる。タイムスリップした人が戸惑ってなかなか現実が受け入れられないというくだりがひとつの見せ場になるわけです。
でも、あそこだとそれがない。
ただひとつ違和感があるとすれば、「人の姿がない」ってことでしょうか。
撮影に使ってない場所には人がいないのです。だからまずそのことに違和感を持つ。でもすぐその後で、撮影しているところを見つけるわけです。同じ江戸時代?の格好の人たちがいる。現代の人たちもいるんですけど、そこには目が行かないんですね。
このあたりの案配がとてもいいなあと思いました。
そしてこの主人公は会津藩の人で、わりと寡黙な人なのです。だから余計なことを喋らない。
撮影所には時代劇の扮装の人はたくさんいるし、周囲もその設定に慣れているから、主人公が幕末からタイムスリップしてきたことに気がつかないわけです。
主人公がジタバタせずに周囲に順応していこうとする姿勢が面白いなと思いました。
順応の仕方も自然で、周囲のリアクションもあっさりしているので、観ていてイライラしなくて済むのがありがたかったです。わりとこの辺でイラッとすることが多いので。
中盤からの展開はぐっとくるものでしたし、納得がいくものでした。そうだよね、そうこなくっちゃって感じ。ラストもああそうかと膝を打つ感じで、とても面白かったのでした。
(明日に続く)