演劇とはなにか | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

今日はつかこうへいさんの誕生日なんですってね。奇しくも。

 

昨日から「演劇ってなんなんだろう」ということを考えております。

こないだの公演を観たお客さんからの感想で、「あまり演劇的ではなかった」というお言葉をいただきましたのでね。

さて、「演劇的」とはどういうことなんだろう、と改めてわからなくなったわけです。

 

シナリオの勉強してたときに、ドラマを書くには対立や葛藤が必要だと習いました。

そういうものがあるから、それを解消していく過程がドラマになるのだと。

その途中に裏切りがあったり、勘違いやすれ違いがあったりして、登場人物たちの気持ちや関係性が一筋縄ではいかないようになる。そうすることで興味を持続させる、というわけですね。

 

でもそれは、ドラマの作り方であって、イコール演劇ということではないような気もするのです。

演劇ってなんだ。何をもって「演劇」と定義されるんでしょうね。

 

30分なり1時間なりの中で起承転結を作り、「劇的な変化」を頂点に盛り込む。

確かにそういうお芝居は人間の生理に沿っているから面白いと思えるものです。

でもなあ。私は最近ちょっとそういう構造に飽きてきてるところがあるんですよね。

ある種の恋愛ドラマや勧善懲悪のお話は、もう冒頭から展開がわかりきっています。

しかも私は、「勘違い」とか「すれ違い」っていう技法が嫌いなんですよ。

傍から見てるからもうわかりきっちゃってるじゃないですか、勘違いだのすれ違いだのって。

で、まずこれでもめて、何らかの方法で誤解が解けてめでたしめでたしになるんだよな、と思うとうんざりしてしまうのです。

順当に話が流れていくパターンだっていいじゃないか。どこにも対立や葛藤がなくてもいいじゃないか、とすら思う。葛藤は、対人間にあるのではなく、個人個人の中にあればよくて、それが芝居の展開に影響を与えなくてもいいんじゃないか、とすら思います。

 

とはいいつつも、やっぱり見ていて退屈してしまう芝居もないわけではなく、いったい何が違うんだろうなあと思うわけです。

ずーっとしゃべってるだけで特に何かが起こるわけではない芝居も、面白く感じるものと、眠くなってしまうものとあるんですよね。あれはいったい何が違うのか。

ひとつ思ってるのは、やはり役者の在り方かなと。あたかも自分の言葉のように語れる役者なら聞いていてもそこに嘘はなくて、世界に入り込むことができます。

セリフが乖離してるとちょっと見てるのはしんどいかなあ。段取りに見えちゃったりすると興ざめということはあります。でもこのへんってもしかしたら訓練でなんとかなることなのかもしれません。

 

演出、ということも考えなくてはならないんですよね。どういう演出でその芝居を見せているか。これもまた難しい問題だなあ。奇抜だったり過激だったりすればいいってもんでもないですしね。

 

私が今稽古している一人芝居は「批評」というタイトルのお話です。

おばあさんが3枚の絵について批評してるんですけど、どの絵も「あなたが描いたんですよ」と言われてて、でも本人は覚えてないという設定。なぜ覚えてないのか、ホントに覚えてないのかはわからないようになってます。そこに今苦労してるわけですけども。

それはともかく、このモノローグでは絵について語ってるんですけど、それをそのまま芝居に置き換えても通用しそうな内容なんですね。

たまたま思いついて、「絵」と言ってるところを「芝居」に置き換えて、過去に自分が書いた脚本を思い浮かべながらセリフを言ってみたら、まーぐっさり刺さりました(笑) 出血多量で死んじゃいそうなくらい。

あー、これは覚えてても忘れたって言いたくなるよなあっていう感じでした。

 

 

演劇やってる人はつかこうへいさんが好きな人が多いみたいで、けっこうつか作品は上演されています。でもなー、あんまり大きな声では言えませんが、私はちょっと苦手です。脚本からにじみ出てくる思想というか価値観がどうしても受け入れられない。

熱い芝居なのでやりたがる人が多くて、でもなんだかなーと思っていたんですが、最近ようやくわかりました。私は苦手なんだなって。

でもあれこそ「演劇的」と言われるような芝居なんじゃないかなあと思うと、私には演劇は無理なんだなと思います。

 

まあ、何が演劇的なのかがわからないので、当分は自分が思うような芝居を続けていくしかないんだろうなあと思いつつ、でもまあやらなくても別にいいのか、と思ったりもしています。

単純に、何かの物語を自分の身体を使って語りたい、というだけなのかもしれません。自分のことを語りたいわけじゃない。誰か、私じゃない人の心情や事情を語りたい。それだけのことなんだと思います。

演劇ってなんなんですかね。