慢心 | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

なんかねえ。そのうちに何かやらかすんじゃないかと、心のどこかでうっすら思っていたような気がするんですよ。

あれもこれも、と手を出して、一人前の顔して偉そうなこと言って、たまに持ち上げられて「いやいや」なんて謙遜してみたり、「なんだか忙しくて充実してるわ」なんてにんまりしてたり。

そんな日々を送りながら、たまに、すーっと胸の端っこのように、うすら寒い風が吹いてるような気がしてたんです。
いつか、ばーんとちゃぶ台返しみたいなことになるんじゃないだろうか。
足元の氷が、バリンと割れて、ズボッと冷たい水の中に落ちるんじゃないだろうか。
そんな、すうすうとした不安が、たなびく霞のように、胸の中を漂っていました。


でもまあ、考えすぎだよな。
うん。ちゃんと気を付けて、謙虚に、思い上がらずに、粛々と進んでいけば大丈夫だ、きっと。

そんなふうにも思っていたのです。



でも、それはやっぱり、慢心でした。


中二病のように大げさな書き方をしてしまいましたが、なんのことはない、車で事故ってしまったのです。今日のお昼に。ガーンと。

私が一時停止のある脇道から出てきて左折しようとしていたとき。
対向車線を一台の車が走ってきました。
私から見て、左から右へ走っていたのです。
通常なら、接触するはずのない2台。
あっと思ったときには、その車は、私の車の右前部分を張り飛ばすようにして通り過ぎました。

事故の瞬間、時間がびよ~んと伸びます。
私にはその車が、ぶわっと膨らんでこちらへ向かってくるように見えました。
止まって見えたんですね。
で、次の瞬間、ガツーーンと張り飛ばされました。


あーあ。やっちまった。
ついにやっちまった。
たまりたまった「ヒヤリハット」がついに決壊した。
そんなふうに思いました。

さいわい、双方ともけがもなく無事でした。それだけは不幸中の幸いでしたが。

車はな~。たぶんだめだろうなあ、と思います。
けっこうなスピードで張り飛ばされたので、無残な様相を呈しております。

動揺すると頭の中が真っ白になるんだなと痛感しました。
保険会社の連絡先がどうしてもわからなくて、あたふたしてしまったし、アドレナリン出まくってたのか、やたら元気よくしゃべっちゃったし(笑)。
でも、ひざはずっとガクガク震えてたし、手もわなわなしてました。



はあ。

いつの間にか慢心してたんですね。ほんと、いかんです。
十分気を付けなくては。

そんな、パニックな夜。