心に支柱を | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

読み聞かせや「おはなし」の勉強会、シナリオ教室での自作シナリオの読み上げなど、自分のやっていることを披露する場に出るたびに、心が折れそうになります。

なんでこんなに下手なんだろう。なんでまったく評価されないのかな。

もちろん、他人に評価されること(もっとはっきり言えば褒められること)を目的にしてはいけないことは、頭ではわかってるつもりです。
でもなー。やっぱり「頭でわかってるつもり」なだけなんだよな。

その都度、全力を傾けているつもりではあります。
絵本を読む時は、その絵本の世界がなるべく聞き手に伝わるように、楽しんでもらえるように読もうとする。
「おはなし」を語る時は、そのお話を楽しんでもらえるように心がける。
シナリオは……シナリオはがんばって世界をつくりあげようとする。

でも、なんかだめなんですねえしょぼん


今日は、新しいおはなしをサークルの人たちに聞いてもらいました。
新潟の昔話で「風の神と子ども」というおはなし。
私は今回初めて知ったおはなしでしたが、サークルの人たちは絵本で読んだことがあるとのことでした。
なので、その絵本の絵のイメージがすでに頭のなかにあったんだそうです。
私の語りを聞いた後の感想では、全然その絵本とイメージが違ったとのこと。
私は絵本の方を知りませんので、どう違うかはわからないのですが。
でも、感想の雰囲気としては、どうやら悪い方に違っていたみたいです。

東京子ども図書館のおはなしの語り方、というメソッドがありまして、そこでは「語り手は前に出ないで、お話をそっと聞き手に差し出すように語る」ことになっています。
私はまだまだ初心者ですので、ここがよくわかりません。
言葉のイメージはわからなくもないんですが、具体的にどう語ればいいのかがつかめないのです。

私がいつも言われるのは、「語り手が前に出過ぎてる」とか「セリフが粒だってしまっている」というような感想。
セリフが粒立つのは、ずっとそういう世界に親しんできたからなのかなあ。
地の文とセリフがつながるような語り方は私にはできないのです。

私の語り方は、演劇や、落語に近いスタイルなのかもしれません。



なんにしても、なかなか評価されないので、毎回心が折れそうになります。


昨日はR-1の放送がありました。やまもとまさみさんが優勝されて、私と息子はやまもとさんを推していたので大変嬉しかったんですが。
私は、こういった「なかなか芽が出ない人が認められる」ストーリーに惹かれます。
芸人さんとか、ものを創る人とか、そういった人たちの中で、長い間評価されずにいて、でも頑張ってる人の話に感情移入する傾向があります。
いったん評価されてしまえば、それまでの苦労は「成功までの道のり」に変わります。
でも、その地点に到達するまでの、道の途中にいるときはきっと、ずいぶん苦しかったんじゃないかと思うんですよ。
「芸人日記」に涙したのも同じ理由で。
きっぱり断念できるならいいんです。でもどうしても諦めきれない。だからといってうまくもなれないし、評価もされないという日々は、身悶えするような苦しさだと思うのです。


そんなとき、どうやって心に支柱を立てるか。
何を支えにすればいいのか。何を杖にすればいいのか。
「それでも好きだから」
それしかないのかもしれません。念仏のようにそう唱えて、それを杖にしてすがりつき、よろよろとでも歩いていくしかないんでしょうね。
明日は今日より少しは上達していたい。明後日はもっと上達していたい。
そう願ってやり続けるしかないのでしょう。

評価は。
その評価している人が必ずしも自分に合ってるとは限らないし、正しいとも限らない、と思うしかありません。
だって、唯一無二の正解がある世界ではないのですから。
評価する人に合わせて自分を曲げることこそが間違いだと、とても怖いけれどもそう思うしかありません。

ああでも、こんなふうに書きながらも、自分が決定的に間違っていたらどうしようという不安がつきまといます。
そういうことだってありうるから。
「自分の道を、やり方を信じて貫き通す」ことと、「自分勝手な思い込みで視野狭窄に陥る」ことの違いがわかりません。


それとも、こうやって、「正解だけを追い求めること」そのものが間違ってるのかなあ。
失敗してもいいじゃないか、なんてことをよく聞きますけど、それってホントなんでしょうか。
したくて失敗するわけじゃないし、できれば失敗や誤りは無い方がいいと思ってしまうんですけどね。


「おはなし」の語り方については、まだまだ勉強の余地はたくさんあります。
自分の思いと、聞き手の受け取り方の間に差ができるようなら、自分のやり方がまずいわけだし。何度も語っていると、少しずつ語り方も変わってきます。
ただ、「どこを目指せばいいか」がわからないので困っているのであります。