滋養強壮にワヤン | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

嘘です。いきなりタイトルでうそついてごめんなさい。
滋養はともかく、強壮に効くかどうかは定かではありません。

というわけで(どういうわけだ?)ワヤン。

いきなりワヤンってなんやねんって感じですが。
昨日、藤枝市郷土博物館にて上演されたバリ島の影絵人形芝居(ワヤン・クリッ)を見てきたのであります。演目は「天女スプラバ 使者に立つ」

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今年の3月に、静岡のアトリエみるめでも上演されたんですが、そのときはなんとなく行きそびれてしまったのです。でもある人から「絶対観たほうがいいわよ」と勧められたので、この機会を逃してなるものかと。
友人のご子息と二人で出かけてきたのであります。

一時間ちょっとの上演だったのですが、あっという間でした。
もう、面白くて楽しくて、興味津々で、夢中になって観ていました。
いろいろ素晴らしいところがたくさんあったんですが、やはりなんといっても、ダランと呼ばれる人形遣いの梅田さんが素晴らしかったですねえ。
本場で認められたダランなんだそうですが、人形の操り方から、語り方から、次々に変わる声色から、まさに総合芸術の極み。
こんなこと書いたら怒られるかもですけど、ちょっと志村けんさんに似てらっしゃるんですよね、演じているときの風情が。声もちょっと似てたりして。
悪役の声や、神様の声、従者の声、天女の声など、すべて違って聞こえるという。
語りの真髄かもしれません。ついそういう目でも見てしまいました。
影絵に使用される人形もまた、素晴らしいものでした。
下手くそな写真ですが、その魅力のほんの一端だけでもお伝えしておきます。

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真ん中にあるうちわみたいなのが、「宇宙」を表すんだそうです。影絵でみると、繊細な彫刻がくっきり見えるし、スクリーン裏から見るとその美しい色合いに息を呑む思いがします。
どの人形もみな、牛の皮を彫刻して作ってあるそうで、まあこれもまた信じられないほど繊細な出来栄えなのです。

通常、こういった影絵は、スクリーンに写った影を見るものですよね。
ところがこのワヤンでは、「スクリーンの裏側もどんどん見てください」とのことでした。
同じ場所に座りっぱなしじゃなく、どんどん動いて裏を見てくださいと、開演前に言われたのです。
「いやあ、そうは言ってもねえ」なんて思ってたんですが、影絵が始まって20分くらいしたあたりから、もう裏が見たくてたまらなくなりました。
一緒に行ったMくんを誘って、ちょうどスクリーンの真横あたりまで移動。
裏側で演じている様子を見たり、スクリーンの前に回って影絵を見たり。
もうね、どっちも気になってしかたないんですよ。
終演後、梅田さんとちょっとお話させていただいたときに、そう申し上げましたら、「まさにそうやって見て欲しいんですよ」と言ってくださいました。
こういう楽しみ方は初めてだったので、非常に面白かったです。

それから、この一座では、ガムランの生演奏も行われます。
影絵の上演とあわせて演奏されるのが、このグンデルと呼ばれる楽器。
4人編成で演奏されるんですが、この音色が大変神秘的。

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撮影機器の都合上(つまりケイタイなんで)、2台しか写ってませんけど、全部で4台あります。
これもね、終わってから少し触らせてくれたんですよ。変わった形のバチを使うんですけど、持ち方がちょっと特殊で、真似してみたら「よく見てますね」って言われちゃいました(;^_^A

こういう、金属の打楽器って、心が吸い込まれるような響きを奏でますね。
スチールドラムもそうなんですけど、涼やかで、ふんわりしていて、でも一本筋が通っていて、幻想的な響き。
楽譜がなくて、口伝えで教えるそうです。そして即興的。ですから、聞いているとどこか遠い世界に心が連れて行かれるような気持ちになります。



バリ島といえば、亡くなった漫画家の佐藤史生さんがお好きだったんですよねえ。
悪役のニワタカワチャという人形の顔を見たらそんなことも思い出しました。

また機会があれば別の演目も観てみたいですね。
もとがマハーバーラタなので、数えきれないほどの演目があるそうですよ。

いいものを見ると心の滋養になりますね。