字幕 | 10月の蝉

10月の蝉

取り残されても、どこにも届かなくても、最後まで蝉らしく鳴き続けよう

「黄金の馬車」観劇のこぼれ話。

私が座った場所から正面に目をやると、英語の字幕が見えました。
舞台上のセリフにあわせて、次々と英訳の文が表示されていくのです。

途中で私は何度か字幕を読んでいました。
おかしなもんですね。
舞台上で語られている言語は日本語で、聞いていればわかるはずなのに、私には字幕の英語を読んだほうがセリフの内容が理解できたのです。

というのも、舞台上で語られているセリフは、日常で耳にするような会話ではない部分がたくさんあったからです。
特に、旅芸人一座が上演しているという設定の田楽。
題材が古事記ということもあり、出てくる神々の名前が耳慣れない。
さらには、音楽的に処理されているために、ひとつひとつが単語として聞こえてこないときがあるのです。単なる音に分解されてしまっている、というか。
まるで演劇部の発声練習のように聞こえるときもあり、また、古語が使われていたりするので、なんていってるのかわからないときがあったんです。
そんなときに字幕に目をやると、内容を的確に訳した英文が表示されている、と。
なので、私は、耳で日本語を聞き、目で英語を読むという同時進行の作業をしていたのです。
これはなかなか面白い体験でしたね。

日本の英語教育の弊害を一身に背負った(笑)私ですので、会話はまったくできません。中学高校、ヘタしたら大学でも英語の勉強を下にもかかわらず、英語でのコミュニケーション能力はまったくありません。
しかし、読み書きはできる。読むことはできるんですよ(笑)。
ですから、字幕もさっと読めちゃう。ついでに耳からは日本語訳も入ってくる。
不思議でしたねえ。
ふだんなら、字幕は日本語、聞こえてくるのは英語、というのが定番です。映画はそうですよね。
その逆の体験をした、というお話でした。