真剣勝負 | 10月の蝉

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今見てるところなんですけど、「最強のスポーツ男子頂上決戦」
これの、モンスターボックスがすごく好きなんですよ。
「跳び箱を飛ぶ」コンテンツとしてはそれだけのことなんですけど、モンスターというだけあって、飛ぶ高さが尋常じゃない。
17段、18段なんて、1階の高さより高いんですもんね。
かつて池谷直樹さんが22段でしたか、飛んだのを見たときは、総毛立ちました。
何が好きって、飛ぶ前の、助走に入る瞬間の真剣な顔がたまらんです。
滑るような走りから、ロイター板に踏み込み、ふわっと宙に浮く。あの美しさったらないですわ。

一点に集中したときの、男の人の真剣な顔は、不機嫌なときとよく似た顔つきになります。
真剣なときと不機嫌な時が似てるっていうのも面白いですね。
勝負に入った瞬間、みんな顔つきが変わる。
ジャッキー・チェンの映画でも、それまで眠ったようにぼやけた顔をしていたジャッキー・チェンが、きゅっとひきしまった表情になるのがたまらなく好きでした。

男性の本質はやはり闘争状態にあるのかもしれませんねえ。

昨日、「黄金を抱いて翔べ」を観てきました。
決して痛快でも爽快でもない、むしろ哀しさすら漂うような、重苦しい雰囲気の映画でありました。「面白かった~」と脳天気に言い放つことはできないんですが、ずっしりとした見応えのある映画でした。
映画を貫く感性というか理屈は、きわめて男性的だなと思いました。
井筒監督の作品を観るのはこれが初めてだったのですが、非常に男っぽい、男の映画でした。
それは裏を返せば言葉による描写や説明が極端に少ない、ということでもありまして、背景や事情はなんとなく推測するしかない感じ。こういう行動をとっているのだから、たぶんこういうことなんだろうなあ、とぼんやり推測しながら見ていました。
推測の材料はあちこちに転がっているんですけどね。ちょっとした情景や、表情や、雰囲気が、言葉より雄弁に物語る、とでもいいましょうか。
そういうあたりは、私としては若干物足りなくて、「ちゃんと言葉で言えやむかっ」と何度も思っちゃいましたけどね~(笑)
でもまあ、言わないのが男であり、言えないのが男なのかもしれません。

6人の男たちのすべてに共通するのが、不機嫌な表情。もしくは、感情が抜け落ちたような暗い穴蔵のような表情。
幸田を演じた妻夫木くんは、深い深い穴を覗きこんだ時のような、真っ暗で虚無的な目をしてました。非常に魅力的でしたよ。それでいて、他人と関わるときには、ふっと穴をふさぐように易しさのベールをまとうのです。
北川春樹役の溝端淳平くんもまた、見たことがないような暗い顔をしてましたっけ。あれもまたよかったなあ。どういう理由からなのか、映画ではギャンブル依存症でリストカッターという設定になっていて、しかも兄(浅野忠信さん)と二人で育ってきたという設定のせいなのか、ご飯の食べ方がものすごく無残だったんですよ。握り箸で犬のように器に顔をつけてかきこむ、というような。この人物造形がすごかった。精神の不安定な春樹という人物を、そのワンシーンだけで表現していました。
浅野忠信さんは、ただ一人、時折笑顔を見せる役だったんですけど、その笑顔がまた怪しいんですね。どこか破綻しているような、危うい感じがにじみ出ていました。

現実の世界では決してお近づきになりたいような人たちではないんですが、映画の中の人物なら、安全圏からじっくり眺めることができます。そういう意味でとても好ましい男性たちばかりでした。うん、かっこいいといってもいいかもしれない。バカばっかりでしたけどね(笑)

男の人は、自分や同性と戦っている時がもっとも魅力的なのかもしれないなあと、ショットガンタッチを見ながら思う秋の夜でした。