NEXT INNOVATION株式会社の日向崇文です。

中小企業の経営者の方に健康経営の話をすると、だいたい同じ反応が返ってきます。

**「立派な取り組みですけど、うちみたいな規模には関係ないですよね」**

福利厚生を充実させる余裕がある会社の話。人事部がある会社の話。そう受け取られることが多い。

私は、まったく逆だと思っています。**規模が小さい会社ほど、この切り口は効きます。**今日はその理由を書いてみます。

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## 健康経営は、福利厚生ではなく採用と定着の話です

まず、言葉の印象を整理させてください。

健康経営と聞くと、健康診断やスポーツジムの補助を思い浮かべる方が多いと思います。社員に優しくする施策、つまりコストの話に見える。

けれど実際に効いてくるのは、**人が集まるかどうか、辞めないかどうか**という部分です。

採用市場を見ていれば分かりますが、給与だけで戦える中小企業はほとんどありません。大手と同じ土俵で条件を並べれば、まず勝てない。それでも人は必要です。

そのときに効くのが、**この会社で働くと日々どうなのか**という部分です。毎日の食事、休憩の環境、無理をさせない働き方。派手ではありませんが、応募する側は驚くほどよく見ています。**健康経営は、採用競争の裏口**なのだと思っています。

## 大企業がやり終えて、中小がまだの領域

もうひとつ、タイミングの話があります。

大手企業では、健康経営はすでに当たり前になりつつあります。制度も整い、専任の担当者もいる。つまり、そこで差別化するのは難しい。

一方、中小企業ではまだ手つかずの会社が大半です。だからこそ、**やっているだけで目立ちます。**

前にこの連載で、新しいアイデアの多くは発明ではなく移動だと書きました。大手で当たり前になっていることを、まだ届いていない場所に持ち込む。健康経営は、いま最も分かりやすくその形が成立する領域だと感じています。

## 小さく始められるところから入る

とはいえ、いきなり制度を整えるのは重い。だから私は、**食から入ること**をおすすめしています。

理由は三つあります。

**ひとつ目は、毎日あること。**制度は年に一度しか意識されませんが、昼食は毎日来ます。社員が実感する回数が、圧倒的に違います。

**ふたつ目は、始めるのも止めるのも軽いこと。**設備投資も、就業規則の変更も要りません。合わなければ、やめられます。前に、決められないときは引き返せる大きさに割ればいいと書きました。健康経営の入り口としては、これ以上に軽い打ち手はないと思います。

**三つ目は、目に見えること。**取り組んでいることが、来客にも求職者にも一目で伝わります。制度は書類の中にありますが、食事は現場にあります。

## 「良いこと」のままでは、社内を通りません

ここからが実務の話です。

健康経営がなかなか進まない最大の理由は、**社内で説明する言葉がないこと**だと思っています。

「社員のために良いことだから」では、稟議は通りません。前に、スポンサー営業の記事で書いたのと同じ構造です。担当者がその話を社内で通せるかどうかが、全てを決めます。

だから、数字に翻訳する必要があります。

- 採用にかかっている費用は、年間いくらか
- 一人辞めると、採用と教育でいくらかかるか
- 体調不良による欠勤や生産性低下は、どれくらい発生しているか

これらと並べたとき、健康経営への支出は「良いこと」ではなく**投資**になります。前に、お金は信用のあとからついてくると書きましたが、社内の稟議においては、順番が逆でも構いません。**まず数字で通して、あとから意味がついてくる。**それでいいと思っています。

## 制度ではなく、毎日が伝わる

もうひとつ、経営者の方にお伝えしていることがあります。

**社員に伝わるのは、制度ではありません。**

どれだけ立派な仕組みを作っても、社員が日々感じているのは、目の前の環境のほうです。逆に言えば、大きな制度がなくても、**毎日のちょっとした配慮は確実に伝わります。**

前に、信用は一度に増えず、地味な積み重ねでしか厚くならないと書きました。社内の信用も同じです。給与という年に一度の話より、毎日の小さな積み重ねのほうが、実は効いている。

そして、社内の信用が厚い会社は、離職率が下がり、採用の紹介が生まれ、結果的にお金の面でも楽になっていきます。

## 「人を大事にしている」を、証明できる形にする

最後に、この切り口のいちばんの価値を書きます。

多くの経営者は、社員を大事にしています。本気で考えている。けれど、**それを外から見える形にできていない**ことがほとんどです。

採用の場面でも、取引先との関係でも、金融機関との対話でも、「うちは人を大事にしています」と言葉で伝えるだけでは、なかなか響きません。

健康経営という枠組みが優れているのは、**その姿勢を、制度や実績として外に示せること**です。すでにやっていることに名前をつけるだけで、伝わり方が変わることも珍しくありません。

もし今、採用に苦戦していたり、定着に悩んでいたりするなら、給与や求人媒体を見直す前に、一度だけ考えてみてください。**この会社で働く毎日は、どんな一日ですか。**

その答えを良くしていくことが、いちばん確実な採用戦略だと私は思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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**日向崇文(ひゅうが たかふみ)**
NEXT INNOVATION株式会社 CEO/Founder
社外CGO(外部事業成長責任者)として、タレント支援・スポーツエンタメ支援・ブランドグロース支援を展開。NewsPicks認定エキスパート、Voicyパーソナリティ、講演家としても活動。
▶︎ 会社HP:https://nexthyuga.com