ドラマ「玉奴嬌」 第5集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
9/29より更新予定は…
月・水=短劇「玉奴嬌」
金・土=ドラマ「長楽曲」(前後編)

ドラマ「玉奴嬌」

 

第5集

 

 

 

 

 

 

 

<5>

 

 

 城外に出るまでもなく、謝蘊は捕えられた。

「謝蘊、頑張って逃亡を図ってもこのザマだ。私を騙し、弄んだ気分はどうだ?

 殷稷の前でひざまずく謝蘊は小さく笑った。

「何を笑う?

「あなたを笑ったのよ。あなたこそ、私を裏切って弄んだでしょう!?

 それなのに被害者面していると非難する。

「…私がおまえを殺せないとでも思っているのか?

「じゃあ、殺してよ!

 謝蘊は殷稷に迫った。殷稷は彼女を担ぎあげると文机に乗せ、押さえつけて首や鎖骨、唇に無理やり口づける。

 抵抗できずに謝蘊が自分の口元を手で覆った。

「私を嫌う資格がおまえにあるのか!!

 その瞬間、殷斉に襲われた時の光景が謝蘊の脳裏に蘇った。殷斉も嫌がる謝蘊に同様の台詞を吐いたのだ。

 力いっぱい殷稷を突き放し、膝を抱えてすすり泣く。

「…興覚めだ。涙を拭いて出て来い」

 殷稷は怯える謝蘊を置いて翰墨軒を出た。

 

 

 王惜奴が側夫人となり、白雲閣を与えられた。

 池の上に建つあずま屋に呼び出された謝蘊は、殷稷から王惜奴が側夫人となったことを告げられた。

 その時になって初めて聞いた蕭宝宝が反対するが、殷稷は意に介さない。彼が見ているのは謝蘊の顔色だけだ。

 謝蘊は呟くように祝いの言葉を述べた。

 ところが祁硯があらわれて謝蘊を庇ったことで、場に流れる空気が一変する。

「謝蘊、おまえの救世主が来たが、ここから一緒に出て行くつもりか?

「祁大人は私の件に関係ありません」

「祁硯の関与は無くても、府内でおまえを助ける者がいただろう?

 殷稷は謝蘊の貼身侍女、秀秀のことを言っているのだ。彼は秀秀に百回の杖責を命じた。

 あわてた謝蘊は秀秀を助けてくれるよう祁硯に頼む。

「あら、謝姑娘、日頃あなたは規範にうるさくなかったかしら?

 蕭宝宝が嫌味を言う。すると、謝蘊は自分の頬を叩き始めた。

「私が間違っておりました。終生どこへも嫁がず、城主と城主夫人、そして側夫人にお仕えいたします。ですから、どうか私の家人をお守りください」

 謝蘊は殷稷の衣服の裾を掴み、懇願した。

 殷稷が用意した小箱を謝蘊に見せた。中には千粒の真珠で作られた首飾りが入っている。殷稷は手に取った。

「これは南海から特別に取り寄せた真珠だ。夫人へ、側夫人を迎える償いだ」

 殷稷はこの首飾りを謝蘊から蕭宝宝へ渡せと言う。

 謝蘊が首飾りに手を伸ばした。そのとたん、殷稷は指に力を加えて首飾りの糸を切った。

 千粒の真珠が落ちて散らばる。

「謝蘊、私に嫉妬してるから、こんな意地悪をするのね!

「さっさと拾え! ひと粒も失くすな!

 怒鳴った殷稷がその場から去る。蕭宝宝は屈んで真珠を拾う謝蘊の前に立った。

「謝姑娘、時間は掃いて捨てるほどあるわ。がんばってね」

 蕭宝宝はわざと謝蘊の手を踏んだ。

 謝蘊は涙をこぼしながら、血のにじむ指で真珠を拾い続けた。

 

 

 ふたりにとって、真珠は大切な思い出だった。

 まだ殷稷が蕭姓を名乗っていた頃、彼はひと粒の真珠を腕輪に仕立てて謝蘊に贈ったことがあった。謝蘊は喜んだが、殷稷の顔に痣があることに気づく。どうしたのかと訊くと、口ごもりながら蕭家の兄に殴られたと話した。彼は兄の訓練に付き合った時、一打につき五両で打たせたという。

「今はこのひと粒しか買えないが、いつか必ず千粒の真珠をきみに贈るよ」

 そして今、殷稷はその千粒の真珠を謝蘊に拾わせていた。

 

 

 翌朝、謝蘊の拾った真珠を蔡添喜が翰墨軒へ持ってきた。真珠には謝蘊の血が付着している。

「数は数えたか?

「はい。ですが、何度数えても千一粒あるのです」

 とっさに殷稷は、多いひと粒がかつて謝蘊に贈った真珠だと気付いた。

「増えたひと粒はほかの真珠とは違うはずだ! 捜し出せ!

 真珠の入った箱を床に叩きつけた殷稷は、蔡添喜に無茶な命令を下した。

 

 

 殷稷は、領内の地図を眺めながらぼうっと考え事をしていた。蕭宝宝が来て我に返る。

「稷哥哥」

 蕭宝宝は良い酒が出来たから一緒に飲もうと言い、酒の肴まで作ってきた。

「ね、飲んでみて」

 酒を注いだ杯を渡される。彼女の企みに気付いた殷稷は、すきを見て彼女の杯と交換した。

 強い酒を眉をしかめて飲み干す。それを見ながら蕭宝宝も飲み干した。

「稷哥哥、お酒の味はどう?

「味、と言うか…強すぎる酒だ…」

 殷稷がばったり机に突っ伏した。酔って眠り込んでいる。

 何故か蕭宝宝の体が熱くなってきた。

「えらく強いお酒ね。まあ、いいわ」

 蕭宝宝は力尽くで正体不明の殷稷を寝台に上げた。

 そう、蕭宝宝は侍女の沉光と謀って、酒に催淫剤を盛ったのだ。仕掛けのある酒壺から注いだので、殷稷の杯にだけ毒が入っているはずだった。例え彼が毒を飲んだとしても、眠り込むのはおかしい。

 体が火照る蕭宝宝は深く考えることをせず、殷稷の帯を解き、上着をはだけた。

 殷稷が気づいて目を開ける。彼の目には、彼女がほほ笑む謝蘊に見えた。

 殷稷は体を反転し、謝蘊を組み伏せた。

 

 

 

 

 

 

<6集に続く>