ドラマ「寵妃凰図」
第11集
<第11集>
女性の姿の南娰は、男装の素衣を伴って南相府に戻ってきた。
南相府で武術の訓練を積んでいる蒼明華が駆け寄る。
「主子、教えて頂いた剣法を習得いたしました。もう、お側で主子をお守りできます!」
自信を漲らせて言う。しかし顔を上げた彼は、南娰の姿を見て固まった。てっきり男性だと思い込んでいた南娰が、女装をしている。
「その顔は何だ? 今後も暗門に留まりたくば、何が起こっても動揺するな」
それだけ言って、南娰は目の前を素通りする。
「り、緑竹哥、主子はもしかして女性…?」
素衣は黙って髪に挿した簪を抜いた。まとまっていた髪が背中に流れる。素衣はにっこり笑った。
蒼明華は腰を抜かさんばかりに驚いた。
頼りない蒼明華を巻き込んで、南娰はある計画を立てていた。素衣が護衛していては難しい案件だ。
蒼寒聿に計画を話せば、きっと止められる。そのため、素衣に寝宮へお菓子を届けさせた。お菓子は蒼寒聿の好みではなかったが、南娰の手作りだというだけで頬張る。
その間に、秦娰に扮した南娰は蒼寒聿をお供に街へ出かけた。
出来るだけ目立つように立ち振る舞う。そして尾行を感じ取ると、ひと気のない裏路地へと入った。
計画を知らされていない蒼明華は、素直に彼女について行く。
突然、仮面を着けた黒い外套の男がふたり、あらわれた。手には紅い傘を持っている。羅生門だ。
「秦小姐、来てもらおう」
瞬間、剣を抜いた蒼明華が飛び出した。善戦するどころか、ともすれば羅生門を圧倒している。彼には天賦の才があったようだ。
南娰は指弾を放った。蒼明華の足に命中し、膝をつく。羅生門が傘の先端を彼に向って突き出した。
「待って! 一緒に行くから、彼を殺さないで!」
羅生門が無抵抗の南娰を人質に取った。蒼明華は動けない。
「帰るべきところへ帰りなさい。私には構わないで」
「秦小姐!!」
同じ頃、蒼寒聿は軽くイビキをかきながら寝入っていた。起きる気配は無い。素衣が持参したお菓子には、眠り薬が仕込まれていたのだ。
容楚修がイライラと寝台の前を歩き回っていたら、皇帝の暗衛が飛び込んできた。秦娰が羅生門に攫われたと報告する。
「何をしている、早く救出に行け!」
「申し訳ないが、暗衛は陛下か南相のご命令しか受け付けません」
皇帝は眠っていて、南相は羅生門に攫われてここにいない。
「どうしろと言うのだ!」
「…お目覚めを待ちましょう」
余計に容楚修の焦燥は募った。
眠り薬を嗅がされ、麻袋に詰められた南娰は、とある部屋へ放り込まれた。
薬が効いているふりをしていた南娰は、ひとの気配がしなくなってから麻袋を裂く。
南娰が放り込まれた部屋は、夢香楼の一室だった。これで太后が羅生門と結託していることがはっきりした。
室内を捜索する。隠し棚から武器庫の地図が見つかった。
武器庫の地図は災いのもとだ。焼き捨てよ。蒼寒聿からの指示通り、南娰は地図を燃やした。
不意に、羅生門の男ふたりが部屋に入ってきた。
「何をしている!」
剣を抜いて襲い掛かってくる。それを短刀ひとつで倒す。
大勢が近づく気配がして、南娰は外へ飛び出した。
<第12集に続く>