ドラマ「寵妃凰図」 第9集 | 江湖笑 II

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※「幻鏡閣」は4/26にて大結局です。

ドラマ「寵妃凰図」

 

第9集

 

 

 

 

 

 

 

<9>

 

 

 南娰が帰ってくるのと同時に、素衣が出かけようとしていた。こんな夜中にどこへ行くのかと訊ねたら、容楚修のところだと答える。けがを負った容楚修に薬を届けるのだと言って、彼女は籠に入るだけの薬を詰め込んでいた。

「南相府がカラになりそうだな」

「えへへ、行ってきます。…あ、さっき端木大人が主子を呼びに来ましたよ」

 また蒼寒聿が断食を始めたらしい。

 

 

 知らせたはずなのに、南娰が寝宮に来ない。昨夜から食事を抜いている蒼寒聿は、椅子の背にもたれてぼんやりと空を見つめていた。

 そこへ端木鋒がやってくる。先制を期して、腹は減っていないと蒼寒聿は強がった。

「陛下、南相が紫宸殿に向かっていますよ」

 急に目に生気を取り戻した蒼寒聿は、勢いよく御書房を飛び出した。

 

 

 粉雪が舞い始めた。

 紫宸殿から駆けだしてきた蒼寒聿は、長大な階段の途中で南娰をつかまえた。満面の笑みで、彼女が差している傘を取る。

 この男、また何かやらかしたのか?

「お食事が進まないようですが、政務に忙殺されて寝食をお忘れですか?

「いいや、胃の調子が良くないだけだ」

「今日はいかがですか?

「調子いいよ」

「では、食事を取って下さい」

 皇帝が欠食してしまうほど国庫が困窮していると誤解される。南娰は事務的にそう言って、さっさと紫宸殿へ入っていく。

「じゃあ、きみが食事を作ってくれよぅ!

 蒼寒聿は嬉々として南娰のあとを追った。

 

 

 食事を作ってくれ、とは言った。まさかの残念な出来栄えに、蒼寒聿は料理に箸をのばせなかった。

「どうぞ」

 笑顔で勧められ、仕方なくトウモロコシひと粒を口に運ぶ。想像した以上の味に、蒼寒聿は目を白黒させた。

「美味しい?

「お、美味しいよ!

 覚悟を決めて飲み込む。

「…容楚修がけがを負ったと聞きました」

「ああ、そのことについて話そうと思っていたのだ」

「食べながら、話して下さい」

 箸を置こうとしたら言われてしまった。蒼寒聿は箸と器を手にしたまま、話し始めた。

「太后一派が前朝の隠した武器のありかを発見したらしい」

 武器を手に入れたら、彼らは間違いなく反乱を起こすだろう。容楚修はそれを捜査中に重傷を負ったのだ。

「私が捜査を引き継ぎます」

「いかん! 容楚修によれば、相手は野獣が如き亡霊らしい」

 それに、今の南娰は官職にない。危険に関わる必要は無いのだ。

「この件については、また今度話そう」

 話題を変えた蒼寒聿は、今夜開かれる上元節のランタン祭りに行こうと誘った。

「子供の頃、陳家のランタンが好きだったろう?

「上元節はまた今度」

 すくっと立って、南娰は寝宮を出て行く。蒼寒聿はその背に叫んだ。

「娰児、いつまでも待ってるぞ!

 

 

 聞いてしまった限りは、南娰は皇帝に反対されようとも捜査に動くつもりだ。

 南相府で暗器の手入れをしていたら、諜報に出ていた素衣が戻ってきた。

「容相に手傷を負わせたのは江湖の一派、羅生門です」

 羅生門は、金銭のためには人の命を何とも思わない一派だ。残酷無比であり、彼らはいつも黒い装束に紅い傘を持っている。

 素衣が奪ってきた傘を手にして、南娰はかつて対峙したことのある敵を思い出した。

 

 

 上元節の夜に遊びに出る民は多い。賑わう通りを、女性姿の南娰と素衣は約束の橋へと向かった。

 約束を断ったはずだが、あれは冗談だ。

 通りの向こうに黒い外套の男が見えた。紅い傘を差している。仮面を着けた男は、妓楼の夢香楼へ入って行った。

「素衣、先に橋まで行って。紅い傘を見つけた」

 素衣と別れた南娰は、男のあとを追って夢香楼に入った。

 

 

 端木鋒が、橋の上で待つ蒼寒聿と容楚修に近づいた。

「夢香楼で離王が散財しております」

 南娰との逢引きを楽しみにしている蒼寒聿は、橋の上を離れたくない。しかし酔った離王は、蒼寒聿以外の注意を聞いたためしが無かった。

 その場に容楚修を残し、端木鋒を従えて仕方なく夢香楼へ向かう。

 しばらくして、橋に素衣がやってきた。

「主子は? ああ、人を追って…」

 ふたりは同時に質問し、同時に答えた。

 

 

 酒と女性に弱い離王は、なんと尚書省と財務司を管理する職に就いていた。国の財政を管理する立場にあるのだ。

 これは太后一派の意見を一部通し、黙らせるための措置だった。

 国の金を握る離王は夢香楼の妓女五人を独占し、酔った勢いで賭けを始めた。女将におだてられ、今夜の客の酒代と夢香楼の身代を賭け草にする。

 酒のせいで気が大きくなった離王は、勝って夢香楼をもらうつもりでいた。

 

 

 この夢香楼の経営者は女将だが、持ち主は太后だった。夢香楼を介して羅生門と連絡を取り、情報を得ていたのである。

 離王が階下で騒いでいる頃、秦家の大小姐、秦静姝は二階の個室で羅生門からの連絡を待っていた。

 音もなく黒い外套の男が部屋に入ってくる。紅い傘を持っているので、彼が羅生門の連絡員と分かる。

 男は太后への書簡を秦静姝に託した。

「尾行された」

 男が言うので、秦静姝は扉の隙間から外を覗いた。向かいの回廊を歩く南娰の姿が見える。

「なぜ秦娰がここに?

 とりあえず男を窓から逃がす。秦静姝は一計を案じ、南娰を個室に呼び寄せるよう侍女に命じた。

 

 

 

 

 

 

<10集に続く>