ドラマ「寵妃凰図」
第7集
<第7集>
往来の真ん中で南娰を侮辱した蒼明斉が処分された。端王府へ聖旨を届けた太監は、嫡子である蒼明斉の世子の封号をはく奪、次男で庶子の蒼明華を世子に封じる旨を伝える。
端王妃も蒼明斉も納得いかないが、皇帝命令には逆らえない。新たに蒼明華を世子に封じてもらうため、端王は次男を連れて宮中へ上がった。
蒼寒聿は、まず叔父の端王を御書房に通した。
「朕の決定に不服があるか?」
「滅相もございません!」
平伏して従う姿勢を見せる。しかし、これまで武国で庶子が世子に封じられたためしは無い。その点を端王は訊ねてみた。
「端王府が無くなってもよいなら、朕は世子が明斉でも構わんぞ」
心当たりのある端王は冷や汗が噴き出る。
端王を帰し、蒼寒聿は父を待っていた蒼明華を御書房へ呼んだ。
「明華、なぜ朕がおまえを世子に封じたか分かるか?」
「分かりません」
蒼明華は素直に答えた。
「もうひとつ、訊ねたいことがある。将来、権力を握りたいか、それとも端王府の主人になりたいか?」
「私は実権を握りたく存じます。陛下のお計らいに報い、絶対的忠誠を誓います!」
かれこれ丸一日、蒼明華は南相府の庭でひざまずいていた。暗閣に加えてくれるまで帰らないと頑なだ。
南娰は、彼を蒼寒聿の寄越した監視だと推察した。
素衣を従えた男装の南娰は、今にも倒れそうな蒼明華に声を掛けた。
「一日放っておいた私が憎いか?」
蒼明華は青白くくたびれた顔で小さく首を振る。
「皇上の命令とは言え、奸相と陰口を叩かれる私の侍衛になることを、甘んじて受け入れられるか?」
蒼明華はうなだれた。
南娰は、そんな彼の目の前に剣を投げた。悔しければかかってこいと煽る。剣を握った蒼明華は、やあ、と気合を込めて南娰に剣を突き出すも、足を引っかけられて無様に転んだ。
「本当の強者は、他者からの憐憫や施しを必要としない、自らの足で立っている者のことを言う」
「いつか必ず強くなって、父やすべての人に認めてもらうんだ!」
今まで日陰の身で悔しい思いをしてきたのだろう。見返したいと声を絞り出す蒼明華を見て、意欲はありそうだと南娰はほほ笑んだ。
突然、南娰の脳裏に幼い日々の情景が浮かんだ。少年の蒼寒聿を小七と呼び、木剣で負かして師父と呼ばせる光景、太后と少年の蒼雲澤の前でひざまずく彼に、悪くなければ謝る必要はないと諭す光景だ。
南娰の過去にこのような出来事は無かった。一体、どこから蘇った記憶なのだろうか。
<第8集に続く>