ドラマ「我才不要当王妃」
第21集
<第21集>
王瑞秋の出自が刑部にバレた。
それよりも、自業自得だとは言え袁利に知られたことが王瑞秋にとって辛かった。
「王爺はご存じないようだが、あなたの王妃は西域の王族を騙る盗賊です。王爺を惑わし、王妃に納まったのです。私が陛下に報告いたしましょう」
言葉は丁寧だが、蕭慕苓の思惑は明確だ。出自を知っていて崇六が王妃に立てたと立証し、最後は欺君の罪で処刑したいのだ。
「王瑞秋は私の王妃である。貴様よりも彼女のことは承知している」
崇六は王瑞秋の手をそっと取り、ほほ笑みかける。そして母に頭を下げて詫び、すぐに解決するから安心してくれと話した。
「王爺、欺君の大罪ですぞ!」
「この時を二十年も待っていたのだろう?」
見透かされた蕭慕苓は呵々大笑した。
刑部直属の詔獄は薄暗く、ジメジメしていた。しかも布団代わりの藁が硬くて、上に寝るとチクチクと肌を突いてくる。
「酷いったらありゃしない!」
「今夜ひと晩の辛抱だ」
崇六は余裕を見せる。
さすが相公、考えがあるんだと王瑞秋が目を輝かせる。崇六は、さっき何やら書いていた紙を彼女に見せた。
待遇改善の要求だ。
当然、改善を求められた蕭慕苓は激怒した。崇六と王瑞秋は大罪人だ。
「自由に歩き回りたいだと!? ここはヤツの屋敷じゃないぞ!」
だが次の瞬間、思い直す。計算高い崇六のことだから、彼を怒らせて何か企んでいるのではないか。
蕭慕苓は、崇六の要求すべてを満たしてやれと獄卒に命じた。
崇六と王瑞秋の牢に次々と上等な家具や調度品が運び込まれた。もちろん衣服もだ。
廊下に面する格子には幕が付けられ、さながら屋敷のひと部屋のようだ。
大きなつづらも運び込まれる。王瑞秋はその中に脱獄の用具が入っているのかと期待した。
「凄い人脈ね。もしかして獄卒頭は相公の部下? あ、ここの獄卒全員を買収したんだ!」
はしゃぐ王瑞秋の前で、崇六はつづらの蓋を開けた。ぎっしりと書物が詰まっている。
「分かるか?」
「…分かるわよ。書物の中に分解した脱獄用具が入っているんでしょ?」
呆れた崇六は、小説の読み過ぎだと言って軽く彼女の頭を叩いた。
崇六は鍋釜や食材まで蕭慕苓に用意させた。
詔獄の前庭で王瑞秋が小豆粥を煮ていると、崇六が牢から出てきた。彼女に四角い陶器の瓶を渡す。
「あ、分かった! 仮死状態になる薬でしょ!」
死んだと思わせて脱獄する計画だろうと訊く。崇六はまた彼女の頭を叩いた。
「だから、小説の読み過ぎだ。これは砂糖だよ」
甘すぎる小豆粥は嫌いだと注文を付けて、崇六は牢へ戻って行った。
王瑞秋は腹いせにドバドバと砂糖を鍋に入れる。
甘すぎる小豆粥は獄卒が食べた。
「で、どうやって脱獄するの?」
脱獄なんてお手のものだけれど足手まといがいるからなあ、と王瑞秋は崇六を見て言う。
「足手まといはおまえだ。…もう数日すれば分かるから」
「実はね、気が付いてるんだ」
何をいうのかと思ったら、助っ人を待っているのだろうと王瑞秋が訊く。
そんなところへ、脱獄だと叫ぶ獄卒の声が聞こえた。
「来た来た!」
王瑞秋はにやりと笑った。
<第22集に続く>