ドラマ「我才不要当王妃」
第2集
<第2集>
目覚めた王瑞秋は、崇王府の地下牢で磔にされていた。目の前には不遜な態度で彼女を見下ろす崇六が立っている。
「常遠公子、化けたにもかかわらず、なぜ女のにおいを変えなかった?」
「知ってたんなら、なんで式を挙げたのよ」
「おまえと話してみたかったのだ」
「なーにが話してみたかった、よ!」
瞬間、控えていた孟義が剣を抜いた。しかし切っ先を向けた先に王瑞秋の姿は無い。縄抜けの術だ。
「誰の依頼で私を殺しに来た?」
「私は殺し屋じゃないわ!」
殺し屋でないことを証明するため、王瑞秋は賊に襲われた部屋に戻った。
衣装を脱がした花嫁の死体も、賊の死体も消えている。これでは証明できない。
崇六は、茶色く泡立った”紅糖水”を彼女に勧めた。毒を恐れた王瑞秋はひざまずき、彼女の死が崇王府に不都合を招くと訴える。
「迎えた花嫁が一日もたたずに死んじゃったら、老太太が悲しむわ!」
老太太とは崇六の母、袁利のことだ。
「あとの始末は私がする。安心しろ」
「でも、崇王府の六王爺がコソ泥なんかと婚礼を挙げたと世間に知られたら、ご先祖様が笑われてしまいますよ」
いや、待て。あの死体の存在を崇六が知らないとしたら…
王瑞秋は賭けに出た。孟義が突きつける剣の切っ先に首を近づける。
「孟義!!」
孟義がさっと剣を引く。しかし彼女の首には浅い切り傷が出来てしまった。
これで崇六に殺意が無いことが判明した。安堵した王瑞秋は、崇六にひとつ提案をする。
王瑞秋が生きている限り、暗殺団は彼女と連絡を取ろうとするだろう。あらわれた連絡係を捕え、そこから暗殺団を一網打尽にするのだ。そして、それまで彼女は上手く崇六の”娘子”を演じる。
王瑞秋の提案に合意した崇六は、契約を祝って紅糖水を杯に注ぎ、飲み干す。毒は入っていないらしい。ええい、ままよと王瑞秋も飲み干した。
「これからおまえは六王妃、文汶雯だ。王妃らしく振る舞え」
ウェン・ウェンウェン? 変な名前だ。
崇王は、遠路はるばる西域の藩国から嫁いだ、いや嫁ぐはずだった文汶雯に関して記した書物をあとで渡すので覚えろと言う。
心の中で王瑞秋が舌を出す。すると見抜かれたのか、彼女は太い鎖の付いた枷を手首に嵌められた。
そんなところへ、管家の郭包佑を伴った老太太こと袁利がやってきた。
袁利は、なぜ新婚夫婦の部屋に孟義がいるのか、なぜ花嫁の手首に枷を嵌めるのかと厳しく息子に問いただした。
崇王も孟義も、袁利には頭が上がらないらしい。まるで借りてきた猫のように大人しい。
袁利は祝いのために持ってきた西域の酒を置き、孟義の耳を引っ張って部屋から出て行った。
ふたりきりとなって、王瑞秋はさっさと枷を外した。
「相公は頭脳明晰だって噂だけど、風が吹いたら倒れそうなくらい弱っちいのね。あ、これは慰謝料としてもらって行くね」
王瑞秋はかき集めた財宝を脱いだ上着で包んだ。それを崇六は黙って見ている。
「じゃあね、相公!」
王瑞秋が部屋から出て行く。
けれども崇六は落ち着いている。王瑞秋はどこへも行けない。彼女は紅糖水に盛られた”珠骨檪”を飲んだのだから。
<第3集に続く>