ドラマ「青雀成凰」
第6集
<第6集> 可我心中早有所愛
無断で秘密部屋に入り込んだ罪で、青雀は鞭を持つ青澄から詰問された。
「何を探っていたの!?」
「刺激を求めただけよ」
のらりくらりとはぐらかす彼女にしびれを切らした青澄は、鞭を振り上げた。その腕を青雀が掴んで阻む。
「慕王殿下も雲将軍も、私の顔がお気に入りなのよ」
青澄は、今度はろうそくの火を青雀の顔に近づける。
もみ合うふたりの間に入って、雲煥がろうそくを取り上げた。彼の手に溶けた蝋がかかる。
「雲将軍までこの女をかばうの!?」
「確かに、この顔は焼き捨てたほうが良いだろう」
そんな残酷なことを言いつつ、雲煥は青澄や侍女たちを退室させた。
ふたりきりになって、ろうそくを手にした雲煥が青雀を尋問する。青雀は、戌の刻の約束が雲煥を嵌めるための罠であり、鍼で慕王に中風の症状を引き起こしたことを認めた。
「だってね、雲将軍にひと目惚れしたんですもの」
かつての雲煥と青雀は、出会った瞬間に恋に落ちた。青雀の上げていた凧が木の枝に引っかかり、偶然通りかかった雲煥が取ってやったのが始まりだ。
「当然、今の私はあなたに嫁げないわ。でも毎日顔を見ていたいのよ」
青雀は慕王の死を望んでいる。けれども雲煥は望んでいない。だから青雀は、慕王の命だけは取らなかったと言う。
衛兵ふたりを連れた青雀は、庭の隅で洗濯をする青澄の侍女を吊るし上げた。慕王府の女主人に逆らった罪だ。
侍女の頬を衛兵に張らせていると、案の定青澄が部屋から出てきた。状況を知って、青雀に手を上げる。
またしても彼女は雲煥に阻止された。
「いいところへ来てくれました。目上の者に逆らった郡主の罪は、何が適当かしら?」
「女主人である鵲夫人がお決めください」
青雀は、ひざまずく侍女の前へ鞭を投げた。この鞭で彼女の主人である青澄を打てというのだ。
躊躇する侍女に、代わりにおまえが打たれるかと青雀が脅す。侍女は仕方なく鞭を振った。
「私がいいと言うまで、打っていなさい」
慕王に目覚める気配はない。青澄は眠り続ける父に、涙ながらに青雀の横暴を訴えた。
すると、控えていた侍女があるたくらみを思いついた。
まず、銷魂散と呼ばれる媚薬を酒に盛る。そしてその酒を運ぶ途中で腹痛を起こした侍女が、偶然通りかかった青雀に酒を運んでくれるように頼む。運ぶ場所は湯殿だ。湯殿では、雲煥がゆったりと湯に浸かっているのだ。
雲煥が酒を飲んだ頃を見計らって、青澄が湯殿に踏み込む。そこで不埒な行為に及んだ青雀を捕まえ、慕王府から追放するのだ。
一方、青澄は媚薬で正気を失った雲煥を寝台に誘う。
一挙両得だ。
湯殿で湯に浸かる雲煥は、青雀が運んできた酒を喉に流し込んだ。
その間に、青雀は彼の脱いだ服を探る。玉佩はない。もしかして、彼は素肌に玉佩を着けているのだろうか。
雲煥が湯から上がった。青雀は顔を背け、服を広げて彼の肩に掛ける。
不意に雲煥は眩暈を感じた。媚薬が効き始めたのだ。意識が朦朧として、湧き上がる情動を押さえきれない。
「銷魂散を盛ったのか…!」
「まさか! …でも、鵲児には将軍を拒否できませんわ」
はっとして雲煥は青雀を突き飛ばす。
「青雀が願わない限り、私は他の女を愛さないと心に決めている…!」
「!!」
突然、湯殿の外から青澄の声が聞こえた。
「将軍、追加のお酒をご用意しましょうか?」
<第7集に続く>