ドラマ「我的危険夫君」
第1集
<第1集>
大周国の辺境にある暮雲城は、敵対する西凉国との最前線都市だ。ただでさえ火種を抱える大周国は、しかし朝廷にも大きな問題を抱えていた。
大周国の現皇帝はまだ少年である。政権は若き靖北侯が握っていて、横暴の限りを尽くしているという噂が国内に流れていた。
少年皇帝の補佐をする靖北侯には、良い噂はひとつとして無かった。いつしか人々は彼を恐ろしい怪物として認識するようになった。
今日も、都の瓦版である大周熱時榜に靖北侯こと衛商枝の記事が載った。六番目の新婦がくびり殺され、七人目の相手に監察御史である白鼎の娘、白芷が決まったのだ。朝廷に出仕した際、白鼎が衛商枝ともめたことが原因ではないかと人々はささやく。
その噂を肯定するように、白鼎は嫁ぐ白芷に謝った。彼のそばでは、白夫人の柳挽意と白芷の侍女だった素秋が大泣きしている。まるで娘を人身御供に差し出すかのようだ。
婚礼衣装に身を包んだ白芷は両親に頭を下げ、長兄の白軒に背負われて花駕籠に乗り込んだ。
だが、白芷は殺されるのをただ待っている女性ではなかった。彼女は密かに毒薬と匕首を用意していたのである。
新郎の衛商枝を待つあいだ、居室でひとり待つ白芷は菓子で腹ごしらえし、衛商枝と交わす杯に毒を盛る。
殺人だけど、大奸臣を誅殺するのだから、八世のちまでの徳になるはず。
とうとう、居室に衛商枝が入ってきた。花嫁が顔を隠すための団扇を払いのけ、顔をのぞき込む。
姿は普通の青年だが、眼光が鋭い。
「私が怖いか?」
「こ、こわくなんか…」
そう答えたものの、頬を撫でられて震えが走る。
「怖がっているじゃないか。泣くんじゃないよ」
「そうだ、合卺酒…!」
さっさと毒を飲ませてしまおう。
しかし、立ち上がった白芷は寝台に押し倒された。衛商枝は、別に用意した杯を彼女に差し出した。
「卓の上の杯に替えようか?」
ばれている。
仕方なく、白芷は差し出された酒を飲み干した。それを見てから、衛商枝も酒を一気に飲む。
上向いた衛商枝の胸元が無防備だ。その瞬間、白芷は後ろ手に握っていた匕首で彼の胸元を突いた。
突いた、つもりだった。が、匕首は鞘に収まったままだ。
白芷を引き寄せた衛商枝は匕首を奪い、鞘から抜く。
「匕首はこうやって使うものだ」
衛商枝は切っ先を白芷の首に押し当てた。
<第2集に続く>