ドラマ「欽天異聞録」
第19集
<第19集>
すでに日は落ちている。童肦秋と蘇建翊は急いで天牢へ向かった。白洛書が密かに結界を解き、奥へ進む。
牢内の岐天意に面会した童肦秋は、宙玄の成虫に関して判明した事象を話し、成虫の寄生から生還した蘇建翊を紹介した。
「現在、宙玄の成虫は李思霖に寄生していると思われます。抹殺する方法を伝授いただきたい!」
「世の中には”相生相克”という理がある。先日、きみが持ってきたあの天外奇石の欠片だが、あれは虫族に属するものではないと感じる」
天外奇石の欠片は宙玄の巣の一部ではない。”相生”ではなく、”相克”だというのだ。
「我々人族は天地の力を借り、万物を己の物としてきたから繁栄できた」
岐天意は宙玄の成虫の情報を”異聞録”に加筆するよう、童肦秋に頼んだ。
あと僅かな時間で皇帝が安楽侯府へ到着する。
天牢を出た童肦秋と蘇建翊は白洛書、孫淼淼と合流して安楽侯府に乗り込んだ。
蘇建翊は武術で兵士を蹴散らし、白洛書は体を張って宿星衛を阻止するも踏みつけられ、孫淼淼は頭脳作戦で翻弄する。三人は力の限り、童肦秋を援護した。
李思霖を見つけた童肦秋が、広間へと追いつめる。
「童爺、山魈なんかを聖都城内に持ち込んだのは私の間違いだ。でも、いま侯府に殴り込んで来なくても…」
その時、広間の外から皇帝の到着を知らせる声がした。入り口に驚き眼の皇帝と余瓊が立っている。周囲の禁衛兵は緊張した面持ちで皇帝を守っている。
騒動の証拠を示すため、童肦秋は李思霖に向かって八門金鎖をかざした。
柄頭に変化がない。かれは宙玄に寄生されていないのか?
「童肦秋、いったい何をやっとるんだ!!」
余瓊の怒号が飛んだ。
童肦秋の前に捕らえられた蘇建翊、白洛書、孫淼淼が連行されてきた。
「陛下、四年前の天外奇石事件について、事実が判明いたしました! 異客の宙玄が安楽侯のお体に寄生しております!」
童肦秋は、宙玄とは相克の関係にある天外奇石の欠片を李思霖の頬に押し当てた。
「どうだ!?」
「…ちょっと冷たくて、気持ちいいな」
興味を持った李思霖が言い値で欠片を買うと言い出す。
本当に宙玄がいないのか。
「もうよい!!」
「不敬である! 捕らえろ!!」
とっさに、童肦秋は李思霖の胸ぐらをつかんで引き寄せた。
「寄生されてないなら、私を手伝え!」
ささやいて皇帝の前へ押し出す。
「ええと、私と童爺と小白は幼なじみで、兄弟みたいなもので… そうそう! 陛下が来られるから刺激的な出し物をと思って…」
しどろもどろになりながら、言い訳をでっち上げる。
「巡天按察使に百草廬の弟子、欽天監大司命の息子、それに…」
「天策府玄武衛窮奇営執戟中郎将、蘇建翊と申します!」
「…豪華だな。まあいい、下がりなさい」
李思霖のとぼけぶりが功を奏したのか、おとがめなしとなった。
皇帝が通るため、童肦秋たちは道を譲る。
禁衛兵、宿星衛に護衛され、皇帝が広間に入って来た。かれに続き、余瓊も入ってくる。
すれ違った瞬間、童肦秋が声を上げた。
「お待ちください!!」
<第20集 大結局に続く>