ドラマ「慶余年」 第10集 | 江湖笑 II

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ドラマ「慶余年」

 

第10集

 

 

 

 

 

 

 

<10>

 

 

 公堂内の全員が足を止めた。范閑は李誠虔になにを訊こうというのか。

「澹州で殺されかけたんですが、なにか知ってますかね?

 李承澤がぐっと親指を立てた。

 

 

 司理理がひとりで酔仙居へ帰ったので、范閑は滕梓荆と京都府衙門の外へ出た。

 ふたりの知る限り、死の偽装は鍳査院が指示したものではない。それに、范閑が皇帝に助けられるほどの功を上げたとも考えられない。だが何はともあれ、命は助かった。

 

 

 范閑が郭保坤の書童でないことが、葉霊児にばれた。郭保坤の行きつけである一石居の番頭が証言するのだから間違いない。郭保坤は一度として書童を連れて外出したことはなかった。

 葉霊児は、あわててこの事実を林婉児に知らせた。

「この前は馬車に歌姫を乗せてるし、昨晩は酔仙居の司理理と一緒だったっていうじゃない! ろくなもんじゃないわ!

 自分のことのように憤る葉霊児は、林婉児の婚約破棄を全面的に応援すると鼻息を荒くした。

「書童じゃないなら、あなたは一体だれ?

 林婉児はますます頭の中が混乱した。

 

 

 同じ道でも、夜と昼では印象が違う。滕家を訪ねようとした范閑は方向が分からなくなった。通りがかりにブランコで遊んでいる少年に訊ねてみる。少年は真っ赤な糖葫芦で右を指した。

 歩きかけた范閑は、ふと少年が大事に食べている糖葫芦が気になった。見せてくれと言って取り上げ、匂いを嗅ぎ、頬張る。美味しいが、ごく少量の毒が混入していた。毒に慣れた范閑にはどうということのない量だが、子供がたくさん摂取すると腹痛を起こす。范閑は糖葫芦を奪うと、強引に小銭を握らせた。

 

 

 范閑が滕家を訪れたのは、京都から出る方がいいと忠告するためだった。このまま京都にいると、范閑がらみの事件に巻き込まれる可能性が高い。

 滕梓荆は范閑に妻子を紹介した。滕梓荆の息子はまだかれに懐いていないと言っていたが、父親に作ってもらった木の剣を嬉しそうに振り回す。

 息子と范閑の目が合った。あの糖葫芦の少年だ。

「おじさんに糖葫芦を盗られた!

 

 

 京都府尹の職は、もともと皇室男子が兼任していた。それを皇帝に就いたばかりの慶帝が、前例を無視して閑職に甘んじていた梅執礼へ与えた。慶帝も梅執礼も、若かりし頃の出来事である。

 いま、皇帝の前で梅執礼に差し出されたのは、銀の杯になみなみと注がれた蜂蜜水である。梅執礼の顔はひきつり、手は震えている。

「范閑を裁判にかけたことは謝りでございました!

 梅執礼は床に額をつけて這いつくばる。

 しかし訴状が届いたかぎりは、府尹として裁かねばならない。裁きは太子ではなく、現皇帝に忠実でなくてはならない。将来への布石を打ってはいけないのだ。

 梅執礼は病身ゆえの辞職で、故郷へ帰ることになった。そしてその道中、山賊に殺される。表向きは、である。

 

 

 日が落ちたころ、李雲睿は范閑の件で再び太后の部屋を訪れた。郭家から訴えられたことで、范閑に対する人々の印象は最悪だった。さすがの太后も、林婉児の婿として適当ではないと感じ始めている。

 

 

 酔仙居の司理理にとって、范閑の嘘を守って拷問を受けたことは、京都に身を置くために有益であった。帰ってくる司理理を、何人もの良家の子弟が待っていたのである。

 

 

 わざと酔仙居で泊まったと世間に吹聴した、范閑はそう父から叱られた。名声を落とすのは、林婉児との婚約を破棄に持っていくためだ。

「内庫はおまえの母が創り上げた機関だぞ!

「たぶん…母上はおれの幸せを願ってるんじゃないかな」

 

 

 皇家の別院に李雲睿の侍女があらわれた。葉霊児が帰ってすぐのことだ。侍女は范閑との婚姻が嫌なら、相手を変えてもいいと李雲睿の言葉を伝える。いいと思う人物なら身分を問わないと言われた林婉児は、つい書童は、と訊いてしまった。

 

 

 まさか書童が相手だとは、李雲睿は思いもしなかった。病気がちの林婉児の交友範囲は狭い。しかも良家の令嬢ばかりのはずである。どこでどう書童と出会う機会があったのか。とりあえずは相手を調べてからだ。

 

 

 京都へ来て、まだ四日目だ。それなのに范閑の身には様々な災いが降りかかってきた。はたしてこの四日間の判断が妥当なのかどうか、范閑には分からない。

 夜更けの范府に滕梓荆が姿を見せた。京都に残って護衛を勤めるので、月五十両と二反の田畑、牛を一頭くれと言う。そして、わざわざ毒入りの糖葫芦を味見し、太子と敵対した范閑を馬鹿だと罵る。その実、范閑を案じているのだ。

 そんな滕梓荆は、糖葫芦に毒を入れたのは自分だという。糖葫芦ばかりを食べたがる息子の虫歯が心配で、たくさん食べれば腹痛を起こすくらいの微弱な毒を仕込んだらしい。

 ほかにも、滕梓荆は子育てに関してずれている部分がある。木馬を作るにしても、長鉾がいると言い出す。滕梓荆は、子供を育てるのは初めてだから、と言い訳した。

 

 

 朝早く太子府を訪れたのは、李雲睿の侍女であった。李雲睿も范閑は李承澤側についたと見ていた。だが范閑は慶帝が放った餌であると気づいている李誠虔は、次の一手でしくじれば身を滅ぼしかねないと感じていた。

 

 

 范閑の立ち位置が決まった、たいがいの人はそう思っていたが、慶帝はまだ舞台は続いていると侯公公に言う。

 林婉児との婚約に変更はない、それが慶帝の決定であった。朝っぱらから父の書房に呼ばれた范閑は、慶帝の思考を疑った。

 父から焼き鳥の彼女を忘れろと命令された范閑は、書房を飛び出した。滕梓荆が御者を務める馬車に范若若と范思轍を乗せ、靖王府へ急ぐ。詩会の日に会った焼き鳥の彼女は、靖王府の侍女かと訊くと頷いていたからだ。見つけたら馬車に乗せ、そのまま駆け落ちするつもりでいた。

 ところが、靖王府の侍女のなかに焼き鳥の彼女はいなかった。

「こうなったら、京都中にある家全部を訪ね歩いてやる!

 

 

 

 

 

 

<11集に続く>

 

 

 

<登場人物>

 

范閑=范家の長男だが庶子。記憶と知識を前世から引き継いでいる。

范建=南慶戸部侍郎。司南伯。范閑の父。

范若若=范閑の妹。范閑ファンクラブ会長。

范思轍=范閑の弟。商売の才に長けている。

滕梓荆=もと鍳査院第四処構成員。范閑の護衛となる。

慶帝=南慶国皇帝。

李誠虔=南慶国太子。第三皇子。

李承澤=南慶国第二皇子。

李雲睿=南慶国長公主。慶帝の妹。内庫の管理者。

李弘成=南慶国靖王世子。

侯公公=慶帝の貼身太監。

林婉児=林若甫と李雲睿の娘。

葉霊児=南慶国京都守備葉重の娘。林婉児の親友。

郭保坤=南慶国礼部尚書郭攸之の息子。

司理理=酔仙居の花魁。