ドラマ「招揺」 第39集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
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月・水・金・土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

ドラマ「招揺」

 

第39集

 

 

 

 

 

 

<39>

 

 

 遅天明と雄天が計画に同意したことを、錦繍は姜武に告げた。これで少なくとも望星門と宿南門の門徒たちを千塵閣攻めに使えるということだ。錦繍は姜武に、唐韵の解放を求める。

 新山門に囚われていた唐韵は、しかし正統派が邪派にひざを屈したように感じていて、錦繍のやり方に納得がいかない。

 

 

  万戮門の南山院で治療を受けていた琴千弦は、弟子たちに十日後と言っていたが、招揺の無事が確認できたら千塵閣へ帰るつもりをしていた。それを聞いた芷嫣は、思わず伯父の気持ちを疑う。そばにいた十七も、招揺は厲塵瀾のことが好きなんだから、好きになってはいけないと責めた。もちろん、そんな気持ちを琴千弦が抱いているわけではない。

 

 

 南山院の見晴らしの良い高台に、厲塵瀾と司馬容がいた。琴千弦を待っているのである。江州城にいた司馬容は、空空丸を眺めているうちにある事に気付いた。空空丸は栖止地の産物なので、施されている法術を解くことは難しい。だが様々な術に精通している琴千弦ならば解けるのではないかと思い、月珠に留守番をさせ、万戮門へ駆け付けたのだ。

 小院から降りてきた琴千弦は、やはりその方法について、答えを見つけていた。蔵書閣の書物にあった、六道金剛陣だ。この術は古代の宗師の力で神器の力を引き出し、対象となる者の身体を創りなおす術である。琴千弦は、身体を創りなおす過程で丸薬の副作用が消えるだろうと話す。

 宗師の力は琴千弦が法器の力を借りれば成しえる。神器は六合天一剣がある。しかし問題は陣である。失われて久しい陣だけに、真偽のほどは定かでない。

「試せるものは試したい!

 厲塵瀾は藁にもすがる思いだった。

 

 

 ところで、と司馬容は話題を変えた。昨今、巷で流れている琴千弦の心魔を、どうやって外へ出したのか聞く。司馬容は同じ方法で厲塵瀾の心魔を除くことは出来ないかと考えていたのだ。

「虚宗門の前門主から贈られた薬材のおかげです」

 

 

 路十七は、蔵書閣でやけ食いしていた。琴千弦が十七に別れの挨拶もせずに帰ってしまったからだ。十七のあとを追いかけてきた芷嫣が、数日で戻ってくると言ってなだめる。琴千弦は千塵閣へ法器を取りに帰ったのだ。

「ね、なんで私のこと、姪っ子って呼ぶの?

 最近の十七は、芷嫣のことを姪っ子と呼んでいる。不思議に思った芷嫣は、聞いてみた。

「だって、あたしは厲塵瀾が門番だったころに、すでに東山主だったんだ。その厲塵瀾の弟子だから姪っ子なんだよ」

 ふたりは仲良く焼き鳥を頬張った。

 

 

 西山院に異変が起きた。屋敷に放火されたのだ。知らせを受け、司馬容と厲塵瀾、招揺は暗羅衛とともに急いで江州城へ向かう。

 司馬府は焦げ臭いにおいが立ち込めていた。美しく咲いていた海棠の木も焼け焦げ、幹の根本には身体を焼かれた月珠が横たわっている。車いすから転がり落ちた司馬容は、月珠にすがりついた。

「阿容、修理しなくて大丈夫。痛くないから」

 月珠は知ってしまったのである。彼女は本当の月珠ではなく、月珠を模した傀儡でしかないことを。本当の月珠は、司馬容が語ったお話の豚なのだ。

 

 

 司馬府に火を放ったのは林子豫である。西山院の間者が常に聞き耳を立てていることに気づいた林子豫は、厲塵瀾の目を遮断し、蓄積された情報を灰にするため、司馬府を襲ったのである。

 だが、それよりも目に見える成果をと、遅天明は塵稷山の詳しい地図を要求する。

 実は地図は書きあがっていた。いろいろと言い訳をして引き渡しを延ばしてきたが、限界である。

「私、何してるんだろう」

 ぽつりとつぶやいた林子豫の目から涙がこぼれた。

 

 

 厲塵瀾が六道金剛陣を行おうとしていることは、光の耳にも入っていた。

「棺桶の用意でもしていろ!

 相変わらずの口調で怒る。いまや顧光の言葉に素直に従うのは琴千弦だけだ。

 顧光の治療を受ける厲塵瀾の背中からは、以前と同じように黒い邪気が立ち上っている。

 そばで治療の様子を見守っていた司馬容は、琴千弦が心魔を除くのに虚宗門の薬材を用いたことを話し、聞いたことがあるかと光に訊ねた。顧光は幼かったころに思いを馳せる。我に返った顧光は、知らない、とそっけなく答えた。

 

 

 江河の父が小さな箱を持って地下へ降り、また戻ってくるのを、子供のころの江河と顧光は木の陰から盗み見ていた。師父が去ってから、ふたりは地下室へと降りる。小箱を見つけ、中に入っている換骨の種を興味半分で見ようとしたとき、師父にばれた。ひどく叱られ、祠堂で仕置きを受ける。夜になっても祠堂でひざまずいていた江河と顧光は、いつしか居眠りをはじめた。一陣の風が、位牌にかかっていた布を顧光の前に落とした。布を位牌に掛けようとした顧光は、その位牌に師父の名が書かれているのに気付いた。となりの位牌の布を取ってみる。そこには江河の名があり、位牌の後ろにはろうそくが点っていた。

 

 

 清音閣では、錦繍が唐韵を説き伏せようとしていた。姜武と手を組むなど、やり方が邪派並みに汚いと言い、なかなか門徒百人を千塵閣攻めに出そうとしない。しかし門徒を出さないなら千塵閣に加担したものと見なすと言われ、また望星門と宿南門からも門徒を出すと聞いて、唐韵は計画の成功を条件に、錦繍の求めに応じた。

 錦繍には、ほかに目算があった。琴千弦の醜聞が広まって以来、宗門のほかの門派に入りなおす千塵閣の弟子たちが多くなった。今回、千塵閣を包囲して攻撃するのは、実質もと千塵閣の弟子たちとすればいい。それなら門派内の騒動だと主張できる。宗門が千塵閣を攻撃したなど、世間からのそしりは受けなくて済むのである。

 

 

 法器である心蓮を取りに戻った琴千弦は、集めた弟子たちに醜聞に関する説明をした。そのあと、千塵閣閣主の座を降りると宣言する。たったひとりを救うためにそこまでしようとする琴千弦を、ずっとそばで支えてきた溯言ですら理解できない。

 

 

 心蓮を使って宗師の力の制御を確かめていた琴千弦の耳に、突然姜武の声が響いた。

「三つ数えるうちに来ねぇと、死人が出るぜ」

 急いで弟子たちの学び舎へ移動する。間に合ったというのに、姜武は門徒をくびり殺した。

 学び舎の外には、宗門門徒を従えた錦繍たちが迫っている。晴れ渡っていた空は、姜武の出現で嵐の様相を呈していた。溯言の号令で千塵閣の弟子たちが陣を作る。錦繍の言葉にあおられた宗門門徒たちが、対抗して陣を敷く。

「琴千弦、覚悟しろ」

 

 

 

 

 

 

<40集に続く>

 

 

路招揺 = 万戮門前門主。厲塵瀾を助けたことで宗門から命を狙われる。

厲塵瀾 = 魔王の子。父によって封魔山の洞窟に封印されていた。万戮門現門主。

琴芷嫣 = 宗門一派の玄玉堂。父を殺され、万戮門に身を寄せる。

袁桀 = 万戮門の北山主。

司馬容 = 万戮門の西山主。

路十七 = 万戮門の東山主。

林子豫 = 万戮門の暗羅衛長。

姜武 = 新山門門主。

李恩、宋毅 = 新山門。姜武を兄貴と慕う。

洛明軒 = 宗門門主。修行により、鋼の体を得た金仙。

柳蘇若 = 宗門一派の鑒心門。長玉聖主。洛明軒の婚約者。

柳滄嶺 = 宗門一派の鑒心門。琴芷嫣の幼なじみにして婚約者。

柳巍 = 宗門一派の鑒心門門主。

琴千弦 = 千塵閣閣主。

遅天明 = 宗門一派の望星門門主。宗門の執事を兼ねる。

錦繍公子 = 宗門一派の天璇門門主。

琴瑜 = 宗門一派の玄玉堂堂主。琴芷嫣の父。

唐韵 = 宗門一派の唐門門主。

雄天 = 宗門一派の宿南門門主。

江河 = 宗門一派の虚宗門門主。医学に長けている。

子游 = 栖止地の空空鋪と陶然軒の店員。