あまり、触れてないように思われるかもしれませんが、IUの表情演技、いいと思って視ています。
いつもの如く、ネタバレOKの方のみ、おすすみください。
ホテル・デルーナ호텔 델루나
【Episode 14】(1)
~1000余年前~
城内を見回っていたチョンミョン、家財道具のようなものを焼却処分しているところに出くわす。
チョンミョン「止めろ! お前たち、何をしている?」
兵士「先ほど処刑された者たちの物です。使えるものは残し、あとは燃やせと命じられました」
ちょうど兵士が手に持っていたのは、ヨヌが弾いていた月琴。
チョンミョン「死者のものは燃やしたりするな。これら、全て集めてくれ」
かろうじて残っていたもの、月琴と共に、棺桶に収められる。
目を閉じて、悼むチョンミョン。
チョンミョン「これらの遺品で葬儀が行えるよう、生き残った者どもに与えよ」
蓋をしめようとした兵士に、「ちょっと待て」と中断させるチョンミョン。
懐に持っていたマンウォルへの簪(かんざし)を取り出し、棺の中の月琴の上にそっと置く。
生き残ったマンウォルがずっと、引いていた荷車の上に乗っていた棺に入っていたのが、仲間の遺品だったとは。
最初は、チョンミョンの遺体かと思ってたけど、ガラクタっぽかったので、変だと思ってました。
その簪に宿ったチョンミョンの魂がホタルになったのね。
そのホタル(チョンミョンの魂)が、トンネルに閉じ込められたチャンソンの身体に憑依し、戻ってくることができたチャンソン。
歩いて、トンネルから戻ってきたチャンソンを、「戻ってこれないかと思った・・・」と抱きしめるマンウォル。
うっすらと、口元に笑みを浮かべるチョンミョン。
たとえ、チャンソンの身体であっても、1300年近く経って、マンウォルを抱きしめることが出来た喜びなのかな。
あの別れの日と同じ仕草で、マンウォルの髪に触れるチョンミョン。
その強烈な違和感に後ずさるマンウォル。
マンウォル「お前・・・誰だ?」
その時、後方から、チャンソンを心配したソンビとソフィが駆けつけてくる。
ソフィ「無事でよかったです」
ソンビ「すごく心配したんだぞ。動揺がとまらんぞ」
元に戻ったものの、頭痛に額を押さえるチャンソン。
ソフィ「社長様も、とても驚かれたでしょう」
ソンビ「どうした? どこか変なのか?」
チャンソン「いいえ、大丈夫です」
自分のことを、怒りと恐れのこもった目で見つめているマンウォルに気づく。
チャンソン「僕は大丈夫です。ずいぶん、驚かせてしまったようですね」
確かに、チョンミョンの気配を感じたマンウォル、そのまま、後ずさると、踵をかえして、一人でホテルへ戻ってしまう。
ソフィ「社長様、怒っていらっしゃるようでしたね」
ソンビ「おそらく、ここに駆け付けたことが恥ずかしくなったんだろう。どっちにしろ、ク支配人が道を見失わずに無事でいてくれて、本当によかったよ」
後ろを振り返り、トンネルを見つめるチャンソン。
近くの草むらに、ホタルが停まっている。
~マンウォルの自室~
とにかく、落ち着けようと、急いで、シャンパンを飲み干すマンウォル。
あの感触と、あの時の目つき。。。
チョンミョン≪これが、我々の最期だ≫
チョンミョンそのものにしか思えず、とても信じられないマンウォル。
チャンソン≪あの男性は誰なんですか?≫
マンウォル≪なぜ? 自分かもしれないって思ったの?≫
チャンソン≪その可能性もあるとは思いました。私が見たものは、覚えていない私の前世を垣間見たものかもしれないからです。≫
麻姑神≪ク・チャンソンは、やがて、お前のもとに、あの男を連れてくるであろう≫
マンウォル「ありえない。ク・チャンソンは、あの男なんかじゃない」
シャンパンの瓶を持つマンウォルの手が微かに震えている。
~三途の川駅~
トンネルの前に立つ麻姑神(長女)。
麻姑神「この小さな、緑の光のせいで、マノリがひどく怯えているようだ。そして、お前も、来世から、戻ってこなければならなかったせいで、ひどく弱ってしまったな。。。随分、薄暗くなってるよ」
手を差し出し、ホタルを出迎える麻姑神。
~スカイバー~
ソンビ「これは、この世の酒だ。ク支配人は死後の世界の境界をほとんど越えたから、急いでこの世界のものを何か飲まないといけない」
チャンソン「ありがとうございます」
ソフィ「本当に、戻ってくる道を見失わなくて、良かったです」
チャンソン「おっしゃるとおりです。そこでの時間は、こことは異なる速度で流れ、記憶を失う可能性があると言いますから。」
ソンビ「ある者は、ほんの短い間だけだったと思っていても、実際には、30年ほど経っていたということもある。そういう民話は、冗談ではないのだ」
ソフィ「私も、使者から聞いたことがあります。ある人は、死後の世界からの帰り道に、前世での人生を思い出してしまい、彼の人生を完全に台無しになってしまった、とか」
チャンソン「前世を思い出したんですか?」
ソンビ「ク支配人は、そこにいた時、なにか変なことはなかったかね?」
そういわれて、緑色の光が目の前を飛んでいたことを思い出したチャンソン。
チャンソン「ただ、暗闇の中でなにかが光っていたのを見た記憶があります」
ソンビ「それで?」
チャンソン「あれは何だったんでしょう?」
ソンビ「・・・そこに行ったこともないのに、(私に)わかるわけないだろう。我々、死者でさえ見ていないものを、ク支配人は見たんだな」
ソフィ「ところで、どうやって、何事もなく、戻ってこられたんですか?とても容易なことではないと聞きましたよ」
チャンソン「実をいうと、まったく記憶がないんです。気づいたら、もう外に出ていたんです」
ソンビ「記憶を失ったんだな。さぁ、もう一杯飲みなさい」
そんな話をしているところに、マンウォルが現れる。
ソフィ「社長様・・・」
まだ、様子がおかしいマンウォル。
~スカイラウンジ~
事情を説明するチャンソン。
チャンソン「あの子が来世へのリムジンに乗ってしまったと思ったんです。それを止めようとして、そこに入ることになってしまいました。あの子も僕も無事だったんですから、そんなに怒らないでください」
怒ってるんじゃなくて、恐くてたまらないのよね。。。
チャンソンの胸に手を置き、鼓動を確かめ、ようやく、それがチャンソンだと確信できたマンウォル。
チャンソン「本当に大丈夫ですよ」
マンウォル「あんたは、ただのク・チャンソンだわ。・・・あんた、まだ、夢の中で私を見る?」
チャンソン「いいえ、あの長い夢を見た日から、もう夢の中では、あなたを見ていません。」
マンウォル「それなら、誰か他の人の夢は見たの?」
チャンソン「夢だったのか、私の想像だったのかはっきりしなかったので、あなたには言いませんでしたが、あの男性を見ました。チョンミョンとかいう名前のあの人です。その人はたった一人で湖のほとりで、あなたを待っているようでした。あなたのマークのような月をかたどった飾りのようなものを持ってました。」
はじめて聞く話に、戸惑うマンウォル。
チャンソン「もしかして、そのような贈り物を受け取ったことがありますか?」
マンウォル「ないわ」
チャンソン「もし、あなたの記憶の中を見たのでないのであれば、一体、あの夢はなんだったんでしょうか?」
マンウォル「あんた、はじめに、おそらく、自分が覚えていない前世の記憶を見ているのかもしれないと言ったわよね」
チャンソン「ええ、でも、あなたは、そんなのはありえないと答えた」
マンウォル「ええ・・・。絶対に違う」
チャンソン「ソンファとヨヌが一緒にいることになったことについても、不安なんですか?あの時のようなことが起こるかもしれないと、心配なんですか?」
マンウォル「私は、彼らとは違う。。彼らは・・・そう、あれは、前世での出来事で、だから、そうなることだってあるって言える・・・。でも、私にとって、これは、この人生で起きてることなの。」
ふっと溜息をつくマンウォル。
マンウォル「ヨヌとあの女が一緒にいるのを見て、ちょっとだけ、変なことを想像しただけよ。。」
そういうと、一人、チャンソンを残し、ラウンジから戻っていくマンウォル。
~病院~
さて、デルーナに紛れ込んだ男の子。
「アッパ・・・」
「ユン! ああ、ユン」
病院まで迎えに駆け付けて来た父親。
ユナとヒョンジュンが対応することになったのね。
ユナ「バス停で眠りこんでしまったみたいです。少し、熱があるようだったので、病院に連れてきました。解熱剤が効いたので、もう下がったみたいです」
父親「本当にありがとうございました」
会釈するユナ。
父親「どこに行こうとしてたんだ?」
男の子「僕、バスに乗って、ホテルに行ったんだよ」
あはは、と笑いながら、「眠っていたときに、夢をみたんですね」と誤魔化すユナ。
男の子「オンマに会いに行ったんだけど、もうオンマはいないんだよって言われちゃった」
男の子をしっかりと抱きしめる父親。
父親「お前がもう少し大きくなったら、オンマがどこにいったのか、どうしていなくならなきゃいけなかったのか、父さんが全部、話してあげるからな、いいね?」
男の子「うん・・・」
父親「ごめんな・・・」
ユナ「あとで知るほうが、悲しみは少ないのかな。もう二度とママに会えないって知ることになるのに・・・」
ソフィ≪ユナは、妹さんが亡くなったら、あなたも一緒に、ここを離れるつもりでいることを知ってるの?≫
ヒョンジュン「ユナ、君が見た・・・」
ユナ「ねぇ、今すぐに戻ったら、社長様は、また、あなたのことを怒鳴るかもしれないから、ちょっと時間つぶしていこうよ?」
ヒョンジュン「でも・・・」
ユナ「少し時間を置けば、怒られずに済むと思う。ちょっと待ってて。トイレに行ってくるから」
ユナを見送りながら、「今日、言うべきだよな・・・」と呟くヒョンジュン。
トイレから出て来たユナ、聞き覚えのある「おじいさんの時計」の曲に足を止める。
付添婦「ここで、少しだけ聞いていてくださいね」
車いすに乗っているヒョンミ(ヒョンジュンの妹)が、携帯から流れ出ている音楽に耳を傾けている。
話しかけるユナ。
ユナ「ピアノの曲がお好きなんですか?」
ヒョンミ「ええ」
ユナ「私の友人の妹・・・ああ、つまり、私の友人のハルモニ(おばあさん)によく似てらっしゃるんです。私の友人に見せるために、あなたが音楽を聴いているところの写真を撮ってもいいでしょうか?」
ヒョンミ「ええ・・」
突然、話しかけられて、少し照れ臭そうなヒョンジュンの妹。
ユナ「ありがとうございます」
一枚だけ撮影するユナ。
ユナ「・・・あの、もしかして、オラボニ(お兄さん)の名前を憶えていらっしゃいますか?」
少しだけ、突っ込んだことを聞き始めるユナ。
ヒョンミ「ええ、覚えてますよ。私のオラボニの名前は、チ・ヒョンジュンっていうんです・・・」
ユナ「ヒョンジュンオラボニを覚えてるんですね?」
自分のことのように、嬉しくて、思わず、声をはるユナ。
ヒョンミ「ええ」
なんども頷くヒョンミ。
その時、いつも、ヒョンミの側にいる、この病院の創始者である老人が、学生さん、なにか御用ですか?と近づいてくる。
ヒョンミ「オラボニ・・・」
老人「どうした、ヒョンミ。音楽を聴いてたのか?」
優しく語り掛ける老人。
ユナ「おじいさんが、この病院の創始者の、チ・ヒョンジュンさんなんですよね?」
老人「ああ、君は確か、ここに入院していた、キム社長さんの娘さんだね。」
ユナ「それで、ハラボジがオラボニなんですか?」
老人「そうだよ、それがどうかしたのかな?」
ユナ「でも、オラボニのチ・ヒョンジュンは何年も前に亡くなった・・・」
老人「ん?・・・・」
ユナの言葉をじっと考えていた老人の手から、持っていた携帯が滑り落ちる。
その音に、目の見えないヒョンミが、心配そうに反応する。
ヒョンミ「オラボニ? オラボニ? どこにいるの?」
老人「・・・ああ、ここにいるよ」
その時、ヒョンジュンがユナの腕を掴み、強引に、無言でその場から連れ出す。
老人が携帯を拾い上げた時、すでに、ユナの姿はなく・・・、不安そうに周囲を見回す老人。
老人「チ・ヒョンジュンが死んでいると知っている者がいるのか・・」
~病院の外~
ユナを連れ出したヒョンジュン。
ヒョンジュン「ヒョンミに兄の話はするなと言っただろ」
ユナ「あの人は、あなたの死になにか関係があるの?あの人が、あなたから全て盗み、今はあなたとして生きているの?」
ヒョンジュン「君には関係ない」
ユナ「それが、あなたが来世に逝かない理由なの?あなたの名前を使って、あの人が良い人生を送るのを我慢できなかったから。」
ヒョンジュン「ほっといてくれ」
ユナ「どうすればいい? あの人はあなたの人生を盗んだのに。」
ヒョンジュン「どうしようもない。俺はもう死んだんだ。君だって、いい暮らしをしてるじゃないか」
ショックを受けるユナ。
ユナ「・・・そうね。私も他人の人生を盗んだのよね。出過ぎた真似をしたわ」
ヒョンジュン「ユナ、そういう意味で言ったんじゃない」
ユナ「私には関係ないことだったわ」
立ち去るユナ。
~支配人室~
チャンソン「サンチェス、特に問題なかったんだよな?」
サンチェス「ああ・・・」
まだ、サンチェスは本調子じゃないみたい。
後ろのほうから、ミラの「食べなさいってば!」という声が聞こえる。
チャンソン「なんだか、うるさいな。家に誰かいるのか?」
サンチェス「昨晩、パク刑事の足が腫れてるって言って、ミラさんが、お前の部屋で眠ったんだ。俺が見るところ、パク刑事は問題ないんだが、ミラさんが、ケガをしてる人はたくさん食べなきゃだめだって言い続けて、今、食事中だ。あ、食事してる時に、非番のパク刑事の同僚もやってきたんだよ。そしたら、いい庭だって話になって、(お見舞いに)持ってきたスイカを食べてるところさ」
↑こんな状態です。。。
チャンソン「ミラが、家に人を連れて来たのか」
サンチェス「チャンソン、ここなら安心だ。マノリが俺に御香をくれたおかげで、霊的な意味でも安心だし。ミラさんがうちに刑事さんを招いても、危険な奴のことなんて心配する必要がなかった。」
チャンソン「ヒョン、電話をミラに代わってくれないか。話したいことがあるんだ」
サンチェス「やめとけよ。俺が一人で落ち込んでるかもしれないと思って、人を呼び込んでるんだろうからさ。ここは、賑やかでいいよ。チャンソン、俺が気にしてるのは、彼らが芝生を台無しにするんじゃないかってことくらいだよ。チャンソン、俺のことは心配いらないよ」
サンチェスはそういうところ、ちゃんと気づける人だよね。
盛り上がっているミラたち。。
サンチェス「ミラさんとパク刑事は、いつも敵同士みたいにケンカしてると思ってたけど、こうして、一緒にいるところを見てると、お似合いだな。お前も心配することないぞ。たぶん、もうすぐ出ていくぞ。俺もみんなとスイカ食うよ。じゃあな」
全部、セリフで説明してくれた(笑)
ミラ「サンチェス、刑事さんたちが持ってきてくれたメロン、一緒に食べようよ」
くちぐちに、誘う刑事さんたち。
サンチェス「ミラさん、それは、うちの冷蔵庫にあったメロンだよ」
ミラ「あ・・・そうだった?」
笑い飛ばす一同。
悲しみで、心も足も、止めていても、こうして、周囲にいる人たちのおかげで、日常は動いていくんだね。
切れた電話を見つめているチャンソン。
ノックをして、ソフィが入ってくる。
ソフィ「少し前に、社長様が、うちのホテルに招待した女性のことを覚えておられますか?うかがったところでは、彼女は、ク支配人様のお友達だとか?」
チャンソン「そのとおりです」
ソフィ「あの方は、過去に、社長様となにか関係があったのですか?」
チャンソンの無言を肯定と受け取ったソフィ。
ソフィ「どうも、悪縁のように感じました。私たちは、決して、社長様がご自身の恨みを晴らすことなく、来世に逝くことなどないと思っていたので、社長様の事情については、あまり理解しようとしてきませんでした。ですが、ここで、社長様を縛りつけていた木が変化しました。私には、その変化が、ク支配人様とク支配人様がもたらした縁によって、起きたものではないかと思えるんです」
チャンソン「あなたの仮定は・・・そのとおりです」
ソフィ「あの女性以外にも、もっと別の過去からの悪縁に直面されているんですか?」
チャンソン「一人はすでにここに来ていて、もう一人にも、じきに会うことになるでしょう。おそらく、私が他の人間と同じように、あの人のもとに、もたらすことになるでしょう」
ソフィ「それが、麻姑神が、うちのホテルに、ク支配人様を連れて来た理由なんですね・・・。それでは、ク支配人様と社長様の間にも、過去に縁があったということになると思いますが」
チャンソン「いえ、それはありません」
ソフィ「そうなんですか?変ですね。もし、前世で、社長様に会ったことがないのであれば、なぜ、麻姑神は大勢の中からあなたを選んだのでしょう?」
さすが客室長様、鋭い疑問です。
まだ、麻姑神の真意は、誰にも示されてないけどね~♪
ソフィ「私は、麻姑神が、社長様の元に、支配人様をもたらしたのには、絶対に何らかの理由があるんだと思います。どちらにせよ、愛をもたらしました」
チャンソン「私は、(彼女と)一緒にい続けます」
頷くソフィ。
ソフィ「社長様のことが気がかりです。もうすぐ、最も苦痛を与えるであろう誰かに会わなければならないでしょう。」
~巨木の庭~
月の木を眺めている麻姑神(長女)。
後ろから近づくマンウォル。
聞きたいことはたくさんあるのに、立ち去ろうとする。
麻姑神「チャン・マンウォル・・・。なぜ、戻ろうとするんだね」
マンウォル「会いたくないからよ。そうやって、好きなだけ、花を見てから、帰るといいわ」
麻姑神「それなら、お前は、あの男をそのまま、逝かせる気か?何も知らないふりをする気か?すでに、あの者に会ったであろう」
振り返るマンウォル。
麻姑神「逃げてはだめだ。あの者は既に、お前の側にいる。ついに、これをお前に渡すときが来たな」
そういって、差し出されたのは、チョンミョンの血がついた簪。
麻姑神「お前のものだ」
恐る恐るその簪を受け取るマンウォル。
チャンソン≪でも、あの男性を見ました。チョンミョンとかいう名前のあの人です。その人はたった一人で湖のほとりで、あなたを待っているようでした。≫
マンウォル「ク・チャンソンなのか?」
麻姑神「もし、ク・チャンソンであれば、お前はそれを受け取れるのか?」
マンウォル「ク・チャンソンが、あの男なのか?!」
激高するマンウォル。
麻姑神「お前が1000年以上も待っていた男がついに現れたというのに、それほど嬉しそうではないようだな」
マンウォルの問いに、否定しない麻姑神。
麻姑神「お前自身も、もし、あの者がこの世に現れたら、彼を殺し、この世を去ろうと思っていたのであろう。今となっては、考え直すかい?」
すでに、流れ落ちている涙をなんとか止めようとするマンウォル。
マンウォル「だから、あの者はク・チャンソンなのかと聞いてるじゃないか」
麻姑神「お前は、長い間、お前の恨みを抱き、増幅させてきた。何年もかかってお前に届いた愛で、その憎しみを手放してみてはどうだい?」
マンウォル「はっ、私は1000年以上も、あの男を恨み続けて来たんだ。それなのに、あんたは、私が愛した男として、私の前に姿を見せたというのか?」
麻姑神「私は、お前が、どの男のことを見ているのか、それが知りたいねぇ。お前は、彼を、コ・チョンミョンとみなして、消滅させるのか?もしくは、ク・チャンソンとみなして、彼を助けるのかい?これは、お前の選択だよ」
あまりにも残酷な仕打ちに、崩れ落ちそうなマンウォルを残し、去っていく麻姑神。
手の中の簪を見つめ、握りしめ、何かを決意したようなマンウォル。
~デルーナ 廊下~
前方から、チャンソンが歩いてくる。
明らかに様子のおかしいマンウォルに声をかけるチャンソン。
チャンソン「チャン・マノルさん・・・」
今までの、チャンソンの仕草が、チョンミョンと重なっていくマンウォル。
チョンミョン≪お前が、俺と一緒に見るすべての光景は、全然違って見えるだろう≫
チャンソン≪今、こうして一緒に見たほうが、景色はずっと綺麗に見えます≫
チョンミョン≪お前は俺の誇りだ、マノラ≫
目の前のチャンソンを睨みつけるマンウォル。
自分の持っている簪が、瞬時に、剣に代わる。
まっすぐに、チャンソンに駆け寄ると、その胸に剣を突き立てる。
ゆっくりと、突き立てられた剣と、マンウォルの両方を見て、「僕を信じろって言ったじゃないですか」と言いながら、倒れるチャンソン。
ようやく、我にかえるマンウォル。
マンウォル「ク・チャンソン・・・」
手から滑り落ちる短剣。。。
急に、意識がはっきりすると、誰もいない廊下。。。
自分の妄想だったことに気づき、息を荒くするマンウォル。
後ろから近づいてきたソフィ。
ソフィ「社長様・・・どうかされたんですか?顔色が悪いですよ」
震えを止めるかのように、自分の両腕を抱えるマンウォル。
マンウォル「さっき、妄想の中で、ク・チャンソンを殺したの」
ソフィ「・・・・・」
思わぬ告白に、戸惑うソフィ。
マンウォル「ク・チャンソンが、私が最も嫌悪する男の生まれ変わりだった・・・」
ソフィ「そうは思えません。ク支配人様もまた、そうではないとおっしゃってました」
必死に、マンウォルを力づけようとするソフィ。
マンウォル「そうよね。そんなはずないわよね。でも、わずかでもその可能性があるなら、たとえ、彼であっても、私は、チャンソンと会うことはできない」
ソフィ「では、どうされるおつもりですか?」
改めて、手に持った簪を見つめるマンウォル。
マンウォル「私には、絶対に、ク・チャンソンを殺したりできない。麻姑神は、私に、全て無にしなければならないと言った。どうすればいいのか、必死に考えないと・・・・。」
自分の執務室に戻ってきたマンウォル。
チャンソンが甘いものを用意していることに、ようやく気づく。
チャンソン「あなたの好きな店から取り寄せたんですよ。甘いものでも食べれば、少しは気分もよくなるはずです。さ、こっちに座って」
じっと、チャンソンを見つめているだけのマンウォル。
視線を落とし、マンウォルが手に持っているものに気づくチャンソン。
チャンソン「手になにを持ってるんですか?」
黙って、手を開き、血まみれの簪を見せる。
チャンソン「これ、僕が夢でみた飾りですね」
マンウォル「あんたの夢から来たのね・・。麻姑神が私に渡したの」
チャンソン「夢の中では、それには血などついてませんでした」
マンウォル「私の剣にかかって死んだって言ったでしょ。この血は、私への恨みが詰まってるに違いないわ」
チャンソン「それなら、なぜ、麻姑神はそんな不吉なものをあなたに渡したんですか?貸してください。僕があなたの代わりに持ってます」
今のマンウォルには、それはそれで、違う意味を持つことになるよね。
簪を引っ込めるマンウォル。
マンウォル「これは、自分で処分するわ。血で月が覆われてるものなんて、壊さなきゃ・・・。麻姑神はいつも、私にそう言ってるの、恨みで満ちた月を空っぽにしろって。」
チャンソン「あなたにできますか?」
マンウォル「やらなきゃ・・・。血で覆われた月を呼びだしたい。」
明らかに様子のおかしいマンウォル。
そこへ、「支配人!」と、ヒョンジュンが呼びにくる。
「ここにいらしたんですね。使者がク支配人様を探してます」
マンウォル「行きなさい」
一人で部屋に入っていくマンウォルが心配でたまらないチャンソン。
★『ホテルデルーナ』14話(1)の雑感★
見た目は愛する人なのに、その中身は確実に別人って怖いよね。
今までも、チャンソンとチョンミョンの類似を小出しにしてきて、ま、そういう私も見事に騙されてた部分もありましたが、このためだったかぁ。
一つ一つ、きゃぷってしまいました。
改めて見ると、ちょっと誘導しすぎかも、と思いつつ、騙され冥利につきます。
一言言わせてもらえるなら、麻姑神いけず!
でももう、(最終回用に)白旗は用意済みです。
言葉とは裏腹に、実は繊細(ぶれやすい)なマンウォル、 ここまでかっていうほど、(いけずな)麻姑神に試されるは、チャンソンには心配されるは、本当、愛されてます。