もちろんキットPMは映画の批評家ではないので、的外れな内容かもしれませんが、異なる意見をお持ちの方はご容赦ください。それからネタバレ注意です。
観たのはハリウッド映画で、邦題は「メッセージ」原題は"Arrival(到着)"で原作の題名は「あなたの人生の物語」です。
原作はSF作家のテッド・チャンの短篇で、2000年ぐらいにSF界の3大賞であるネビュラ賞、ヒューゴ賞、ローカス賞、その他たくさんの賞を受賞した有名な作品です。
作品は映画にありがちな原作の世界観を覆すという事はなく、概ね原作に忠実に創ってあったと思います。キットPM的にはこれだけでもポイントは高いです。
とは言うもののそこはハリウッド映画ですから、観客サービスのための原作には無いエピソードが、クライマックスに向かって幾つか散りばめてあり、それはそれで楽しめました。
さて物語のテーマです。キットPMは3つあると感じました。
第一義的には、人類とは全く異なる世界の捉え方をする異星人とのファーストコンタクトものです。
第二義的には、「異なる世界の捉え方」によるシチュエーションと人間の生き方の問題となります。
「異なった捉え方」とは、物事の因果関係を逆転して理解するという事です。
チョットややこしいのですが、説明してみましょう。
我々人類は原因があって結果があると考えます。当たり前ですね。ですから全ての結果は原因の積み重ねで構成されているという事になります。
言い方を変えると、現在がこうであるのは、過去の行いに全ての原因があると考えます。これも当たり前ですね。
ところが、映画の中で地球に飛来した宇宙人の言語を分析し理解すると、彼らは全く別の因果律を持つ世界にいる事が分かります。
つまり物事がスタートする時点で、結果が決まっている世界です。これだけ見ると、単なる運命論ですが、なんとこの🐙型異星人はその結果を、スタート時点で理解してしまいます。
何かを始める時にその結果が分かっているという世界は、いったいどのようなものになるのでしょうか? 残念な事に映画でも、原作でもこの疑問に答える事はありません。
ただ、主人公の女性言語学者が異星人の言語を習得する過程で、因果律の逆転を経験することになり、彼女のまだ生まれていない娘の一生を知ってしまいます。
3つめのテーマは、自分や自分の愛する人の運命を知ったとき人はどのようにふるまうのか?ということです。これは突き詰めると「生きていく覚悟」とは何かを問いかけているように思います。
わかり易く言うと、例えば先の大戦での「特攻作戦」の参加者たちの「覚悟」と変わらないのではないかと感じます。さらに言うと、気も狂わんばかりの葛藤と気持ちの先に何があるのか。上でのべたように、映画も原作もそこまで踏み込んだ表現はしていませんが、一つの文学的な可能性としてこのような大きなテーマがあるような気がします。
いずれにしても色々な含蓄がある作品ですが、物語として完結していないため、逆に様々な想像を掻き立ててくれるSOW(センスオブワンダー)を感じる作品に仕上げっていると感じました。
なかなか考えさせられる上にちょっとしたはらはらドキドキとどんでん返しもあり楽しい佳作です。ぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか。
