Ari Hoenig『Lines Of Opression』


2010,1,19
2010,1,20
2010,1,21 (naive)

Ari Hoenig (ds,vo)
Tigran Hamasyan (pf,vo,beat box)
Gilad Hekselman (gt,vo)
Orlando Le Fleming (ba) #1,3,5,6,7,8
Chris Tordini (ba,vo) #2,9,10

1.Lines Of Oppression
2.Arrows And Loops
3.Wedding Song
4.Rhythm
5.Rhythm-A-Ning
6.Moanin'
7.Love's Feathered Nails
8.Ephemeral Eyes
9.How High The Moon
10.Higher To Hayastan


非常に個性的かつユニークで高い音楽性を誇るアルバム。
まず大前提としてアリ・ホーニグがド変態ドラマーで、複雑な変拍子とポリリズムに飽きたらず、タムの表面をベンドしてメロディーを奏でるなど、人並み外れた技を身につけていること。
と同時に優れたコンポーザーでもあり、今作の楽曲の半数以上は彼の手によるもの。
そうなるとド変態サウンドにならないわけがないのだが、あくまでもテクニック先行ではなく、"こんなコトしたら面白いよな"と言うようなある種、セロニアス・モンクっぽいアイデア先行なところに惹かれる。

他ミュージシャンに関しても技量はもちろんのこと、とにかく受け皿が広く、オーソドックスなジャズを消化したうえで多くの音楽の影響を受け、それぞれ独自のイズムを築いている。
ギラッド・ヘクセルマンのギターはカート・ローゼンウィンケル的ながらも、より浮遊感のあるタイム感覚とフレージング。
ティグラン・ハマシアンは一聴すると上原ひろみライクなプログレッシブ・ジャズを思わせるピアニストだが、アルメニア出身だけあって時折見せる中近東なメロディー感覚が異彩を放っている。

アルバム全体としても完成度が高く、コンテンポラリーな楽曲から魔改造されたスタンダード曲までしっかり一連の流れとして聴ける。
ハマシアンのボイスパーカッション(というよりインドのコナッコル?)とホーニグのドラムのバトルから幕を開ける#4「Rhythm」~#5「Rhythm-A-Ning」の組曲や、ドラムがテーマを取る#6「Moanin'」も決して曲芸ではなく、どんなに難解な楽曲でも熱いインタープレイが音楽の中心となっている。
これだけ難易度の高いことをしていながらも、常にどこかでスウィングを感じさせるホーニグのドラミングこそがこのアルバムをジャズたらしめている気がする。