市原ひかり『Move On』



2010,3,17 (After Beat)


市原ひかり (tp,fh)

浅井良将 (as)

堀秀彰 (pf)

中林薫平 (ba)

安藤正則 (ds)


1.やみくろ

2.A Story Of Rabbit

3.Everything Happens To Me

4.年度末

5.アウターリミッツ

6.梅雨あけ

7.新年度

8.Small, Good Thing

9.Inspiration



行間の使い方が巧い短編小説のようなアルバム。

ハードバップと現代ジャズがほどよく混ざったような音楽で、取っつきやすさはポップスにも通ずるものがある。

各メンバーのやりたいアプローチは試しつつ、どこか風通しが良く軽やかな仕上がり。


リーダーの市原ひかりのプレイがまさにそんな感じで、アート・ファーマー的なアタックの少ない柔らかな音色は芯こそ弱いが、オリジナルの楽曲にも良く合っていて決して力不足には感じない。

その相手を務める浅井良将のアルトサックスが独特な物憂げなトーンで、高音域中心のフレージングに個性を感じる。


このグループの音楽を決定づけているのは実は安藤正則のドラムでもあり、4beat・変拍子・複雑な縦ノリ、どれをとってもスクエアなビートが全体を支配している。

#1「やみくろ」で時折見せる32分フィールや、#9「Inspiration 」での空間を活かしたリズムの組み立てが面白い。