「こんな夢のような物語が実話だなんて!」
 若い頃この本を読んだ直後に私の脳裏に浮かんだ言葉です。世界的指揮者の小澤征爾氏の自伝「ボクの音楽武者修行」は、青年の夢と希望が綴られた名著です。1台のスクーターと共に貨物船に乗り込みフランスに渡った無名の青年が、名門オーケストラを引き連れて羽田に凱旋するまでを描いたこの物語は、青春時代特有の躍動感と瑞々しい感性に満ちあふれています。
 自分の人生を切り開くのは自分なんだということを、語らずして語り聞かせてくれる本書は、若い方のみならず多くの方に読んでいただきたいと思います。

ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)/新潮社
¥464
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 ホノルルではワイキキ地区に宿泊するのが何かと便利なのですが、5~6泊以上滞在する場合は「ザ・カハラホテル・アンド・リゾート」に泊まる事にしています。ダウンタウンの喧騒から離れて、遠くの水平線を眺めながら、ゆっくりと朝食のビュッフェを味わう時間が大好きです。広々としたロビーも気に入っています。ホテル付近の高級住宅地は近年は地価が高騰してホノルルも物価高ですが、このカハラホテルの宿泊料金は内容を考えると十分リーズナブルだと思います。イルカと一緒に泳ぐアトラクションなども用意されていて、ワイキキでショッピングする以外の時間はここでのんびり過ごすのが、私にとって一番ホノルルらしい過ごし方に思えます。
 午後は読書の時間にします。パソコンにはできるだけ触れないようにして普段読めない本を手にします。東京の自宅にいるときと、時間の流れが微妙に違うのを感じます。何だか風に乗って時間が過ぎ去るような、不思議なひとときです。そして美しいサンセットを見ながら食前酒を味わう瞬間も至福のひとときです。空の色が刻一刻微妙に変化するのを眺めながら味わうハワイアンディナー。こうして今日もホノルルでのリラックスした1日が幕を閉じるのです。
 香港を訪れた際に、時間が許せば必ず立ち寄る場所があります。香港島の南に位置するレパルスベイです。南シナ海に面した静かな海岸は、市街地の喧騒から離れてのんびりと時を過ごすのに絶好の場所です。
 私がこの場所を知ったのは、1955年のアメリカ映画「慕情」の舞台に使われたことからです。この映画は原作者ハン・スーインの自伝を基に作られた、美しい恋愛をテーマにした名作です。
 勤務医のハン・スーインを演じる主演のジェニファー・ジョーンズと、特派員を演じる同じく主演のウイリアム・ホールデンは撮影当時の実年齢は30代後半ですが、まさに大人の成熟した愛を見事に演じています。この映画の途中でレパルス・ベイ付近の海岸のシーンが登場します。ふたりが浜辺で寝そべるシーン、そして知人宅に泳いで渡るシーンなど、サミー・フェインの手による名作主題歌と共に、観る者に忘れられない映像を残してくれました。
 この時代にはなかった超高層ビルが立ち並ぶ現代の香港ですが、レパルスベイは今でも当時の面影を残す貴重な場所だと思います。
まだ「慕情」を鑑賞されていないのであれば、次回香港を訪問する際に、ぜひご覧になるとよろしいかと思います。