自転車でツーっと、行ってみた。
雑居ビルの3階。ガラス張りの二重扉の向こうは、猫の世界だった。
入り口に近づいた時から、薄々察知していた。
「猫臭」半端ないって。
出勤組、休憩組合わせて、30匹くらいキャストがいるらしい。
その排泄物やら体から出る臭いが、顔面を殴りつける。
猫嫌いの人には、キツイだろうな。
猫嫌いの人は、猫カフェに来ないだろうが……。
10:30頃入店したので、キャストはほぼ全員お昼寝中。
店員さんに、店内作法の説明を受けて適当に席に着く。
広いリビングの一部に、安物のソファが散在しているという塩梅だが。
一応、店内をまわって、どんな猫がいるのか、寝顔を見て回る。さすがに人慣れしているので、いきなり逃げ出すキャストはいない。
様子を見てグルーミングしてやると、ぺろぺろ手をなめてくる奴もいる。
ちなみに、子供の頃から20年ほど実家で猫と付き合っていたので、「耐猫性」はある。
手をなめられて、デレデレ喜ぶほど、猫世間知らずでもない。
毛づくろいはおろか、お尻とかなめてるからね、こいつらは。
まあ、猫とはそういうモノなわけで。
適当になでてやると、なで方に合格
をもらえたらしく、体を起こして腕にまとわりついてきた。

あっという間もなく――
敵はこちらの利き腕を抱え込むと、手首にかみつき、跳び付き腕拉ぎ猫固めから猫キックを連発する。

「甘噛み」ではあるが、結構猫加減がない。
うん。牙が刺さったね。表皮を超えて。
耐猫性があるので、慌てもしないが、猫の牙だからね。

後で洗っとこう。
巡回後、ソファに収まり、傍らの猫ベッドに収まるキャスト
を撫でていたら、目を覚ました。

挨拶をしてやろうということで、こちらの膝を、猫マタギ。
二人掛けのソファの片側で、でろんと寝そべる。
お尻をこっちに向けて。
ちょこちょこ撫でてやっていると、「グルグル」と音が聞こえてきた。
喉を鳴らしているのかな?と思うと、どうもちがうらしい。
お腹のあたり、というかお尻に近い場所からエンジン音が聞こえてくる。
「あー、これ大丈夫かなあ?」
結構ご高齢のキャストらしいし。抜け毛も半端ない。
エンジン音が聞こえるたびに、「ジェット噴射
」を警戒しつつ、時を過ごす。

そのうち、「ご隠居」は飽きたと見えて、立ち去って行った。
その後、2、3匹のキャストが様子をうかがいに来たが、からんでくることはなく、昼になったので退店した。
まあこういうものね。なんとなくわかった。
家族連れ、若い女性同士、ベテランのおばさんなどが来店。
だいたい、猫じゃらしなどを手に、キャストと戯れるものらしい。
ベテランのおばさんなどは結構手荒で、キャストの腰をパンパン叩いて、猫スイッチ
を入れていた。

でもねえ。当方の猫流儀は、ちょっと違う。そんなアクティヴな交流を猫と持っても、楽しくない。
そういうのは、
犬とやるヤツという感じがして。

「表猫千家流」の方でしょうか。
こちらは、
「裏猫千家流」なので、あくまでもパッシヴなアプローチを以て善しとする。

「待つ」。「耐える」。そして「感謝」。
それが、裏猫千家流。
