今日は誰にも気をつかわずに過ごそう。
そう決めてお気に入りのカフェに入り、
コーヒーを頼んで本を開く。
ここまでは完璧です。
ところが隣の席から聞こえてくる会話。
「あの人、また転職するらしいよ」
気づけば本の同じ行を3回読んでいて、
頭の中は隣の人の人間関係でいっぱい。
聞きたくて聞いているわけではないのに、
耳が勝手に拾ってしまう。
さらに厄介なのはその会話に感情まで引っぱられること。
険悪な雰囲気のカップルが隣に座ると、
なぜかこちらまで胃のあたりが重くなる。
せっかくの一人時間なのに、
帰る頃にはなんとなく疲れている。
HSS型HSPにはあるあるです。
人の脳には本来必要な情報だけを拾って、
それ以外を背景に押しやる機能があります。
『カクテルパーティー効果』と呼ばれるもので、
ざわついた場所でも目の前の相手の声だけを聞き取れるのは
この働きのおかげです。
HSPの特性である感覚処理感受性(SPS)が高い人は、
この「絞り込み」のフィルターがゆるやかだと考えられています。
音も、視線も、場の空気も、いったん全部入ってきてしまう。
そのうえで脳が一つひとつ意味を処理するので、
『認知負荷』——つまり頭の処理量
が、人より多くなります。
「集中力がない」のではありません。
入ってくる情報量そのものが違うのです。
しかも共感性の高さが加わることで、
隣の人の感情まで自分の中で再生されてしまいます。
疲れて当然の仕組みなのです。
それでも「家じゃダメ」なのがHSS型です。
ここでHSS型HSPらしさが出てくるのです。
「そんなに疲れるなら家で本を読めばいいのでは?」
——正論ですが、実際にやってみると物足りない。
HSS型の刺激希求性は、
適度な刺激やちょっとした非日常を求めます。
知らない街の匂い、店員さんの動き、窓の外を歩く人。
そういうゆるやかな刺激があるからこそ、
気分が上がって集中できる。
完全な無音の自室では、
逆に手持ち無沙汰になってしまうのです。
つまり私たちは刺激がほしいアクセルと、
刺激に消耗するブレーキを同時に踏んでいる状態。
カフェに行きたくなるのも、カフェで疲れるのも、
どちらも本当の自分です。
矛盾しているようで、実はまったく矛盾していません。
ここで「静かな店を探す」より効く工夫。
対策はシンプルで、フィルターを外付けすること。
まず席選び。
壁側やカウンターの端、柱の陰など、
視界に人の動きが入らない位置を選ぶだけで、
負荷はぐっと減ります。
次にイヤホン。
無音より、歌詞のないインストゥルメンタルを小さく流すほうが、
耳が言葉を拾わなくなります。
そして滞在時間。
「今日は60分」と先に決めてしまう。
疲れきる前に切り上げると、
「カフェ=心地よかった」という記憶で終われます。
隣の会話が気になるのは注意力が散漫だからではなく、
世界をこまやかに受け取れる感度の証拠です。
その感度は人の気持ちに気づける力とセットになっています。
上手に外付けフィルターを使いながら、
これからも安心して一人カフェを楽しんでいきましょう。。