合鍵 | 妄想 C o C o o n

合鍵

僕は20代後半にさしかかったばかりの一人暮らしの独身女性の部屋の合鍵を持っている。

それは彼女が一人暮らしを始めて3年間、結果的にずっと持ったままだ。

その間、彼女の部屋に住みついた男性もいる。その男性は僕と同じように、彼女の部屋の合鍵を持ち、そして今ではそれは彼女に返却されている。


僕世代の、そして僕と同じ境遇の男性ならば、この状況を羨ましいと思うのだろうか。

少なくとも、無いよりはあった方がいい、くらいには思うのだろうか。



美奈の部屋の合鍵を、僕は未だにうまく使うことができない。

というかむしろ、彼女に断りなく合鍵を使って彼女の部屋に入ることは決してない。


今はともかく、付き合い始めの頃は、彼女がいない間に合鍵を使って部屋に入って、自分が知らないことや物を知ることになるのが嫌だった。

独身の彼女と対等でない関係ゆえ、そのぶん彼女から必要以上に自由を奪ってはいけない。

知らなければいいことは、知らなければいいのだ。



いつの間にか、合鍵は彼女の部屋を出入りするためではなく、部屋で彼女を抱いた後、眠りについた彼女を後にして戸締りをして家を後にするための道具となってしまっている。


彼女と別れることに自分の意志が傾いていながら、先日僕は彼女の部屋で、これまでのように彼女を抱いた。

いつのまにか一回の行為で何度か簡単に達してしまうようになった彼女は、いつものように行為の後、ピロートークの途中で眠ってしまった。

そして僕はいつものように鍵をかけ、帰路についた。



この合鍵を持ち続けていることは、自分の心にある何か、彼女を完全に断ち切れない何かを象っているように思える。

それがなんなのか、今はまだ突き詰めて考える気にはなれない。